経営情報 Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

「Invented for life」~独創の技術をさらに追求:
ボッシュ・グループにとって収益を伴う成長の機会

フランツ・フェーレンバッハ
ボッシュ・グループ取締役会会長
2007年4月25日、年次記者会見にて

ご来場の皆さま、

当社の2007年度年次記者会見にようこそおいでくださいました。2006事業年度の結果とさらなる拡張路線、また世界経済と地球環境に関わる諸問題が増大する中で私たちが解決策を提供し続けているという事実は、私たちが長期戦略に基づいて正しい道を着実に歩んでいることを示しています。このことは同時に、私たちのグローバルな事業展開および事業の多角化という方向が正しいものであることを示しています。これらの事業戦略は、私たちの時代における挑戦ともいうべき多岐にわたる課題に呼応したものでもあります。

・ 新興市場の急成長に伴い、経済のグローバル化のテンポは速まり、その影響が深層にまで及びつつあります。

・ 地球規模での環境問題の解決に向け、世界的な省資源のためのさらなる取り組みが求められています。このような試練に対処するため、私たちは技術革新力を駆使しなければなりません。私たちにとって環境問題を考えるということは、それに対応する技術的ソリューションを生み出すことにほかなりません。

革新の技術とサービスを提供する私たちの前途には、かつてなく大きなチャンスが、すべての事業セクターにおいて待ち受けています。このようなチャンスを生かすには、私たちの事業戦略においてめざすべき方向を、将来を見越して継続的に修正していくことが非常に重要となってきます。それはすなわち、国際ネットワークのさらなる強化であり、ターゲットを絞った多角化による事業構造のバランス改善であり、「Invented for life」という私たちの企業理念を追求することです。私たちは長期的視点に立って物事を熟慮する一方で、各事業における当面の課題に確実に取り組んでいく必要があります。中でも重要なのは、世界の自動車産業の急激な構造変化への対応です。

2006年を振り返って: 成長率、収益ともに目標を達成

まず、昨年度の事業活動の結果を示す数字を申し上げましょう。全体として、私たちを取り巻く経済環境は良好でした。とはいえ、一連のコアビジネスにおいて、とくに北米と西ヨーロッパ地域では低調な結果に終りました。

・ ボッシュ・グループの2006年度の総売上高は前年比で5.4%増加して、437億ユーロとなり、成長目標を達成することができました。

・ その第一の要因としてあげられるのは、私たちの事業基盤の広さです。自動車機器テクノロジー事業は平凡な伸びにとどまりましたが、他のセグメントは力強い発展を遂げました。自動車機器テクノロジー・セクターの売上高は272億ユーロと、伸び率は前年比3.4%にとどまりました。産業機器テクノロジーでは顕著な伸びを見せ、売上高は前年比5.1%増の55億ユーロでした。最高の伸びを記録したのは消費財・建築関連テクノロジー・セクターで、売上高は前年比で約11%増の110億ユーロに達しました。

・ 事業のグローバル化ということも業績改善に貢献しています。たとえば、アジア・太平洋地域で私たちは再び2桁成長を達成することができました。成長率は地域全体で12%ですが、インドでは24%、中国では実に30%の伸びを記録しました。南米と東ヨーロッパ市場も力強い成長を示しています。西ヨーロッパでも業績は改善しましたが、ドイツ国内は全体としてわずかな成長にとどまりました。対照的に、北米地域での事業はかなりスローダウンしました。

・ そうした状況を反映して、2006年度に新規雇用が最も増加したのも新興成長市場においてでした。全世界合わせてボッシュ・グループの従業員数は1年間で10,300人増加し、2007年の年初時点で261,300人となりました。うち150,800人がドイツ国外、110,500人がドイツ国内です。増加のほとんどはドイツ国外の雇用でした。すべての高コスト国では、競争力を確保するために、自分たちにできることはしようという気持ちが、従業員の間で強くなってきています。その結果、多くの拠点で人件費削減を盛り込んだ労使協定を交わすことができました。

・ 2006年度の税引き前利益率(売上高比)は7.1%と、収益率の目標値ゾーン(7~8%)を達成できました。税引き前利益は約31億ユーロで、前年の32億ユーロにわずかですが届きませんでした。産業機器テクノロジーと消費財・建築関連テクノロジーの両セクターは追い風に恵まれましたが、自動車機器テクノロジー・セクターの収益減を完全に穴埋めするには至りませんでした。

目標はこれまでと同じ:収益を伴う成長

長期的に収益を伴う成長を維持するために、ボッシュ・グループは自動車機器セクターを中心に、大きな試練を乗り越える必要があります。この分野における重要な構造変化は大きく2つあります。

・ ひとつは自動車産業の「パワーバランス」に変化が生じ、アジアのウェイトが高まってきたことです。アジアの新興工業国は低価格車を武器に、先発の自動車工業国との差を詰めつつあります。私たちの見るところ、向こう10年間の世界における自動車生産台数の伸びの半分は、アジア地域によるものと予想されます。ヨーロッパは全体の伸びの20%を占めるにとどまり、北中南米地域が残る30%を占めるでしょう。2006年を見ても、これまで私たちが軸足を置いてきた主力市場の一部で相対的な地盤低下が起き、それが私たちの業績に影を落とす結果となりました。それにどのように対処すべきかは、はっきりしています。技術革新をテコに、既存の市場で成長の機会を獲得する努力をするとともに、世界の新興成長市場への進出をさらに強化することです。そのためには、これらの諸国における生産力と開発能力を高めることが欠かせない条件となります。

・ 他方、自動車業界における競争圧力はあらゆる地域で高まってしています。カーメーカー間だけではなく、サプライヤーの間でも同様のことが起きています。2006年度に私たちは、3%超という、かつてない値下げを受け容れざるを得ませんでした。その一方で、原材料価格が高騰し、これらの両面から昨年度の私どもの業績は大きく圧迫されることとなりました。ここでも、私たちが何をなすべきかは、はっきりしています。コスト構造のさらなる改善です。そのために、製造現場だけでなく、付加価値チェーンの全体でプロセス効率化による生産性アップに取り組んでいます。私たちが Bosch Business System の導入に組織を挙げて取り組んでいるのも、そのためです。

私たちはまた、事業構造のバランス改善努力を続けています。昨年、この方面でさらなる前進が得られました。産業機器テクノロジーと消費財・建築関連テクノロジーの両セクターによる売上構成比が38%に上昇しました。私たちは今後も両セクターのさらなる拡大に努めたいと考えています。

・ 消費財・建築関連テクノロジーでは2006年度に、電動工具、住宅機器、セキュリティ・システムおよびサーモ・テクノロジーのすべての事業セグメントが同セクターの素晴らしい成長に寄与しました。これはひとつには好景気に恵まれたためですが、セキュリティ・システムのサービスステーションを増設するなど、私たちがサービス事業の拡大を積極的に推し進めた結果でもあります。ソーラー・テクノロジーなど、新しい事業分野の開拓にも積極的に取り組んでいます。これについては、あとで詳しく説明します。私たちが特に力を注いでいるのは、顧客にとってのメリットが明白な技術革新です。その代表的商品が電動工具です。この分野では売上高の35%以上を、発売から2年以内の新製品が占めています。電動工具部門では、新製品のアイデアが生まれてから生産開始にこぎつけるまでのリードタイムが5年前の半分、わずか12ヵ月に短縮されました。このことが、熾烈な競争が展開される市場で成功を維持するのに役立っています。

・ 産業機器テクノロジー・セクターも順調です。パッケージング・テクノロジー事業の再編が一段落したほか、ボッシュ・レックスロスも世界的な機械工業製品のブームに恵まれて好調です。特に中国では33%もの増収を達成できました。主力製品分野でボッシュ・レックスロスは目下、設備能力の限界に達しています。そこでボッシュ・レックスロスは設備増強に取り組んでいます。さらに新設備の導入と並行して、既存設備の改善によって需要の周期的変動によりよく対応するための努力も続けられています。

第2のバランスシート:環境対策に14億ユーロを支出

従来からの財務データとは別に、第2のバランスシートを私たちは用意しました。このバランスシートをご覧いただければ、環境に対する企業責任を私たちがいかに重視しているかをお分かりいただけることと思います。

・ グループの研究開発費は2006年度に再びわずかながら増加し、総額で33億ユーロ、売上高の7.7%相当にのぼりました。このうち40%以上に当たる14億ユーロが環境保護と資源保護に寄与する製品に振り向けられました。

・ 昨年、私たちは全世界で3,000件を超える国際特許を出願しました。前年比で約200件増と、史上最高の出願件数となりました。このうち40%近くは環境保護と資源保護に直接関係する特許です。

これはどうしてかといえば、私たちの事業の重点がそこに置かれているからです。ここで財務諸表に含まれる2つの統計を引用させていただきます。

・ そのひとつは自動車用駆動システムです。私たちはガソリンエンジンとディーゼルエンジン用に低燃費、排出ガスを低減する駆動システムを提供していますが、その売上高は2006年度に114億ユーロにのぼりました。これは自動車機器テクノロジー・セクターの売上高全体の42%に相当します。

・ 他方、私たちは子会社ボッシュ・レックスロスとサーモ・テクノロジーの事業を通じて、再生可能エネルギー利用システム事業の強化に積極的に取り組んでいます。2006年度の売上高は5億ユーロにあと少しというレベルに達しました。遅くとも2010年までに、この数字を2倍に伸ばし、10億ユーロ台乗せを果たすのが目標です。

私たちが環境と気候変動の問題に関するコミットメント(達成目標)をいかに重視しているかが、これらの数字によく現れています。言い換えると、ボッシュのような企業にとって技術革新とは、その時々の全世界的、社会的な試練に対する解答を示すことなのです。今の時代に即していえば、それは環境問題の解決に寄与する技術的ソリューションを提供することです。

自動車機器テクノロジー事業においては、きわめて初期の段階から、私たちは環境保護と資源保護に貢献することを目指し続けています。そのことを示す例として、私たちは、1970年代前半の第一次石油ショックの当時から、自動車の安全(Sicher)、クリーン(Sauber)、省エネ(Sparsam)を掲げた「3S」プログラムを実践してきています。そして今日も、将来的な視点に立った事業戦略を推し進めており、とりわけ、省エネ社会の実現に向けて歩調を速める努力をしています。二酸化炭素の排出源は自動車だけではありません。例をあげれば、個人住宅もそうです。私たちは自動車産業以外の分野でも二酸化炭素排出削減に向け努力しています。広範な事業領域という強みを生かして、私たちは多角的な分野で迅速かつ効率的に行動できることを容易に実証できます。

自動車技術分野で私たちに何ができるのか?

1. 技術革新の成果の全世界への普及

まず、自動車産業を取り上げることにします。その場合、自動車産業においては現在、複数の戦線で戦いを強いられていることを忘れるわけに行きません。自動車メーカーと部品・システムサプライヤーは世界中いたるところで、競争、コストおよび合理化の圧力にさらされており、しかもその風圧は次第に強まっています。それだけではありません。道路交通に対する要求が国際的に強まっており、自動車メーカーとサプライヤーはそれも考慮しなければなりません。その中には燃料消費と二酸化炭素排出レベルのいっそうの引き下げや汚染物質の排出低減、交通事故防止などが含まれます。そうした中、私たちは自身の技術革新力を武器に、省エネと環境保護の面でリーダー役を果たしたいと考えています。基本的に、そのために2つの方法が考えられます。

・ ひとつは、まずヨーロッパで成功を収めた私たちの技術革新を全世界に広めるというアプローチです。

・ もうひとつは、ガソリン/ディーゼルエンジンはもちろん、代替駆動方式の開発やパワートレインからさらに先の分野においても技術開発力を用いて新たな経済的潜在性を切り拓いていくことです。

まず、先駆的成果を全世界に広めるというアイデアについてお話ししましょう。交通事故防止の分野に格好の例があります。それは横滑り防止装置「エレクトロニック・スタビリティ・コントロール(ESC)」です。米国では ESC の年間販売台数が2010年までに3倍に増加し、300万個に達する見通しです。米国市場では「クリーンディーゼル」の展望にも明るさが増してきました。2008年半ばまでに私たちは、尿素水溶液噴射システム「DENOXTRONIC」によって、非常に厳しい US07 Bin5 排出ガス規制を達成できると見ています。これに成功すれば、私たちの事業展開に大きなはずみがつくことでしょう。ディーゼルには経済性が非常に高いという強みがあるからです。ディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車に比べ、30%以上も燃費が良いのです。二酸化炭素(CO2)の排出もほぼ25%少なくなります。端的にいえば、ディーゼル車が増えれば CO2 排出が低減されるわけです。少し前の私たちの予測では、米国では小型商用車(バン/ピックアップトラック)に占めるディーゼル車の割合が現在の6%から2015年までに15%に上昇すると見られています。そうなれば、地球環境にも非常に良いことです。

「クリーンディーゼル」は、アジアの新興成長市場ではもっと早く定着する見通しです。そうした動きを促しているのは、高圧燃料噴射システムなくしては達成不可能な排出ガス基準の導入です。今年、私たちは中国で100,000個のコモンレールシステムを販売する計画です。インドでもこれと同レベルの需要が見込まれています。2010年までに、両国のコモンレールシステム需要がともに130万個前後に達すると私たちは予測しています。ヨーロッパでも、二酸化炭素排出規制値の強化に伴い、新規登録乗用車におけるディーゼル車の比率が上昇すると予想されますが、私たちにとっての成長の中心が世界の他の経済地域へと移るのは避けられないところです。私たちは現在、高圧燃料噴射システムの20%をアジアとアメリカで販売しているにすぎませんが、2015年にはこの割合が50%に迫る見通しです。

もちろん、ヨーロッパで導入したハイテクをそのまま新興成長市場に持ち込むことはできません。というのも、これら市場で平均以上の伸びを見せているのが低価格車だからです。とはいえ、そうした車両にも低燃費でクリーンな駆動技術が必要なことに変わりありません。ちなみに私たちは、車両価格帯が約2,000ユーロの乗用車を生産するインドのある自動車メーカーにガソリン燃料噴射システムを納入しています。このシステムはインド、中国およびドイツのエンジニアの共同作業によって開発されました。アニュアル・レポートの中で「国際コラボレーション」として紹介されているこの種のプロジェクトで、私たちボッシュにはすでにたくさんの実績があります。

自動車技術分野で私たちに何ができるのか?

2. 燃費改善に向けての新しい可能性

既存の開発成果をグローバルに拡張することと並行して、私たちは革新的テクノロジーの開発に邁進しています。気候変動防止が誰の目にも急務とされる中、私たちは自動車メーカーと協力して、さらなる燃費改善とそれに伴う二酸化炭素排出削減の可能性を探っています。私たちにはそれに必要な、あらゆる駆動技術分野にまたがる広範なノウハウがあります。

・ 私たちは目下、ただでさえ燃費に優れるディーゼルエンジンの二酸化炭素排出を最高でさらに10%減らすディーゼルエンジンマネジメントシステムの開発を進めています。

・ ガソリンエンジン分野では、第2世代ガソリン燃料直接噴射システムをベースに、ダウンサイジングの実現に精力的に取り組んでいます。目標は、エンジン本体を小型化し、気筒数を減らす一方で、ターボチャージャーを使ってこれまでどおりのパワーを生み出すエンジンの実現です。それにより、従来の噴射方式に比べ、二酸化炭素の排出を15%削減できる見通しです。

・ さらに、内燃エンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド駆動システムの研究も行っています。古典的なポート噴射ガソリンエンジンと比べると、ガソリンハイブリッドでは二酸化炭素排出が25%少なくなります。ただし、このメリットがフルに発揮されるのは長距離走行時ではなく、市街地走行時です。ボッシュはすでに、この方式のハイブリッド駆動システムの、最初の大口契約を獲得しました。ディーゼルハイブリッドの方もすでにプロトタイプが完成しています。ガソリンハイブリッドに比べ技術的に複雑度が増しますが、省エネ効果はこちらの方が上です。

ボッシュが追い求めている選択肢にはこのほか、CNG (圧縮天然ガス)エンジン用コンポーネントやフレックスフューエル・エンジンマネジメントシステムも含まれます。後者は自動車へのエタノール燃料の使用を可能にするもので、南米市場で特に重要な意味を持っています。それ以外にも、私たちは燃費と CO2 排出の低減に向けて一連の技術ソリューションを追い求めています。車両電気回路マネジメント、エネルギーマネジメント、可変バルブコントロール、超高効率のオルタネータなどです。これらの技術はいずれも CO2 排出を2~4%削減することができます。そしてスタートストップシステムがあります。BMW 向けの量産立ち上げ段階にあるこのシステムは、市街地走行で燃費を最大で8%向上させることができます。

ただし、個々のソリューションの潜在力を単純に積み重ねればいいというわけではありません。私たちが目指しているのは、自動車メーカーと協力して総合的ソリューションを、個々の車両クラスに適した技術パッケージとして開発することです。それによって、2012年以降、新車フリートの二酸化炭素排出量を 1 km 走行あたり 130 g に制限するというヨーロッパの野心的目標の達成に私たちが重要な役目を果たせるようになります。この目標を達成するには、すべての車両、特に数量的に大きなウェイトを占めるミドルクラスとコンパクトクラスの車両の燃費をもっと改善することが不可欠です。さらに、新車向けの新しい技術の開発はさておいて、既存の車両のことも忘れてはなりません。ドイツでは、既存の車両の車齢(新車新規登録を受けてからの経過年数)がかつてないレベルに上昇、平均8年を超えています。車齢8年の車両を新車に買い替えれば、燃費は1.2リッター/100 km改善し、CO2 排出は 20 g/km 減少します。エネルギー効率の高い車両への買い替えを促すために CO2 ベースの自動車税を導入してはどうかという議論が浮上したのもそのためです。このような政治的枠組条件の整備は、新しい自動車技術の開発を促す効果という面で、単なる排ガス規制よりはるかに大きな持続性があると考えられます。

住宅分野で私たちに何ができるのか?

ソーラーと地熱エネルギーの利用拡大

住宅分野でも、地球温暖化防止に向けて私たちにできることがたくさんあります。現に私たちはこの分野でさまざまな可能性を追求しています。その一例が当社の住宅機器です。米環境局(EPA)の「エネルギースター」認定をすべての製品セグメントで取得したブランドは世界で1つだけ、それが私たちです。当社の冷蔵庫の消費電力は1990年比で78%も減少しました。コンデンシングボイラーも従来型システムに比べガスまたは燃料油の消費を30%節約できます。エネルギー効率と CO2 の排出の観点に立つかぎり、古い技術に固執するのは間違いです。エネルギー効率改善に向けての住宅の近代化の余地は、自動車とは比較になりません。ドイツでは全世帯の半分以上で製造から10年を超えたボイラーが使用されています。標準的な戸建て住宅の場合、従来型のボイラーを最新鋭のコンデンシングボイラーに変更すると、CO2 の年間排出量を5トン以上減らせる計算になります。この数字は、2012年から実施される EU の二酸化炭素排出制限の適用後に、年間 20,000 km を走行する乗用車8台分のCO2排出削減効果をなおも上回っています。このように、最新ボイラーへの買い替えは環境に大きなメリットをもたらします。と同時にボッシュのサーモ・テクノロジー事業にも大きなチャンスがもたらされます。

暖房システムの近代化の面で、私たちにはコンデンシング技術のほかに、ソーラーおよび地熱エネルギーという有力商品があります。今年、サーモ・テクノロジー事業部は再生可能エネルギー利用システムで、昨年度を1億ユーロ上回る4億ユーロの売上高を目指します。さらに来年以降の見通しもきわめて明るいといえます。たとえばスペインでは1年前から、住宅の新築または大規模改築にソーラーシステムの設置が義務付けられています。2015年までに再生可能エネルギー利用システムが、ヨーロッパのサーモ・テクノロジー市場の半分以上を占めると予想されています。ドイツでは2009年にも、再生可能エネルギー利用システムが市場の半分を占める見通しです。では、そうしたブームの到来に備えて、私たちは何をしているでしょうか?

・ ボッシュはソーラーコレクター生産設備の増強を進めています。たとえば、ヴェットリンゲン(ドイツ)のコンピテンス・センターで拡張工事が行われています。アベイロ工場(ポルトガル)では新しい生産ラインが稼働を迎えました。私たちは今年、150,000ユニットのコレクターを販売する計画です。さらに2009年までに倍増を目指します。

・ スウェーデンと米国での企業買収により、私たちは電動ヒートポンプの世界の市場リーダーとなりました。とりわけ、成長著しい米国の地熱システム市場に参入できたことは大きな収穫です。現在、私たちは米国でも設備拡張を進めているところです。

私たちが強く感じているのは、再生可能エネルギーシステムがニッチ市場の域を脱したということです。市場が力強い拡大に転じ、設備の増強と国際流通チャネルの整備に追われています。ドイツ国外でもともと好位置に付けていたボッシュのサーモ・テクノロジー事業は、いまやかつてなく強力な態勢が整いました。と同時に、住宅用の各種エネルギーシステムの技術を習熟し、統合する作業の難度が上がってきました。その点、私たちの強みは、「計測/制御」の統合エンジニアリングシステムの提供にあります。私たちのエンジニアはこのほか、暖房/電力複合システムなどの未来コンセプトの研究にも取り組んでいます。私たちが目指しているのは、エネルギー自給型住宅の実現です。

発電分野で私たちに何ができるのか?

風力設備開発に投資

エネルギー効率の改善に力を注ぐ一方で、私たちは CO2 排出を伴わない発電技術の開発にも心血を注いでいます。その方面で重要な役割を担っているのは子会社のボッシュ・レックスロスです。ボッシュ・レックスロスの技術は工場で使用されているだけではありません。ノルウェーとイギリスの沖合に海洋エネルギーを利用する発電設備のプロトタイプが設置されました。ただし、その開発段階は、風力発電の20年前のレベルです。では、風力発電技術はこの20年間にどのような発展を遂げたのでしょうか。今日、風力発電設備の年間需要は、原発7基分の出力に匹敵するレベルに達しています。そして向こう10年間にこの数字は3倍に増加すると予想されています。ボッシュ・レックスロスは風力タービンの中心的コンポーネント、トランスミッションとローターブレードの制御システムを供給しています。その売上高は昨年の1億2,000万ユーロから、今年は1億6,000万ユーロに増加する見通しです。そのため、私たちはトランスミッション装置の生産能力を大幅に増強する計画です。向こう数年間の投資はざっと3億ユーロ、これは顧客の目に明確なシグナルとして映ることでしょう。

これと並行して私たちは、出力数メガワットクラスの風力タービン用にディファレンシャルギアを開発しています。要求される技術水準が高くなるにつれ、メーカーは競合他社の系列に直接属さないスペシャリストを提携相手に選ぶ傾向を強めています。その点、私たちは業界最大の独立系サプライヤーです。自動車機器の場合と同様、このことは私たちにとって大きな強みです。

展望: ボッシュ・グループの引き続き力強い発展

当社の強みが、バランスの取れた事業構成が生み出す付加価値にあることは明らかです。このことは事業全般についてのみならず、地球温暖化防止のテーマに限ってもいえることです。こうした見解の根拠となっているのは2つの重要な洞察で、これらは以下のように要約できます。

・ 第一に、当社の事業は各セクターとも、世界の各地域で、非常に幅広く事業展開しています。そのため、ヨーロッパ地域あるいは自動車産業分野という枠に限定されることなく、地球環境変動問題に対する技術的ソリューションを提供することができます。

・ 第二に、私たちはこれまでの枠を越えて、活動領域のさらなる多様化を目指しています。再生可能エネルギーがもたらす可能性を余すところなく活用するためです。私たちは何も、やみくもに事業を多角化しているわけではありません。自分たちの強みを生かせる分野にターゲットを絞っています。私たちはこれを、「フォーカスした多角化」と呼んでいます。

皆さんもご存知のように、私たちはこれまで数多くの企業を買収してきました。その中には、Pacifica (オーストラリア)、Beissbarth (ドイツとイタリア)、Florida Heat Pump Holding (米国)などが含まれます。そのほか自動車機器テクノロジーの分野でも何社かを買収しました。私たちは今後もこのような戦略を通じて、ボッシュ・グループの力強い発展を目指します。その際、指標となるのは、私たちのコア・コンピテンス、強みとは何かということです。

さて、今年度の展望ですが、事業の成長は穏やかなレベルにとどまると予想されます。2007年の経営環境は総じて順風に恵まれる見通しですが、特に自動車産業の景気については楽観できません。たとえばドイツでは、労使交渉で手厚い賃上げが通りそうな気配です。景気が好調なとき、人はコストを気にするに及ばないと考えがちですが、えてして次の局面で状況の悪化が待ち構えているものです。今年、世界経済の成長率は、すべての地域で多少スローダウンすると予想されます。最も力強い発展が期待されるのは、これまで同様、アジアの新興成長市場です。グローバリゼーションを背景に、世界的に投資傾向は高水準を保ち、それによってドイツ産業は広い意味で大きなメリットを享受できるでしょう。その一方で私たちは原材料価格の高騰とユーロ高を乗り切るための努力を続ける必要があるでしょう。

このような環境の中、1~3月における私たちの売上高の名目伸び率は総じて低水準にとどまりました。北米の自動車市場が引き続き低迷していることと、為替変動の影響がその主な要因です。しかし、第2四半期以降、世界経済の成長から来るインパクトによって徐々に不振を脱し、自動車産業にも好影響が及ぶと期待されます。ドイツでは付加価値税が引き上げられましたが、景気見通しにはここ数年以上の明るさが見られます。数年にわたって続いた輸出需要の盛り上がりを背景に投資環境が改善し、その結果、雇用も増加すると予想されます。

ただし、ユーロ高のあおりで、ボッシュ・グループの2007年度の売上高の伸びは前年水準には届かず、為替調整後で5%強にとどまる見通しです。この数字をベースに、私たちは今年も7%の税引き前利益率(売上高比)を目指します。ただし、これまで説明してきたような状況ですから、この目標を達成するには、特に自動車機器テクノロジー・セクターにおいて、相当の頑張りを要求されるものと覚悟しておく必要があります。

最後に、あらためて強調しておきたいことがあります。それは私たちが企業活動を展開する上で、経済、社会、環境に対する企業としての責任を、単なる言葉だけではなく、重要なテーマとして真摯に受け止め、実践していることです。このことは私たちにとって、事業全体に対する関心に勝るとも劣らない、重要な関心事です。革新的で有益な製品・サービスの提供により人々の生活の質(Quality of Life)の向上に寄与することをめざす、という私たちのコーポレート・スローガン「Invented for life」の理念に近づくことは、市場における私たちのチャンスが増大するということです。そして長期的に、世界と地球環境の根本が揺らぐのを回避するための革新技術を提供することによって、ボッシュは安定成長を持続できるのです。


このプレスリリースは2007年04月25日に Robert Bosch GmbH より発行されました。原文をご覧ください。>