自動車機器テクノロジー Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

さらなる環境保護と安全をめざして:
独創の技術を世界中の車に

フランツ・フェーレンバッハ
ボッシュ・グループ取締役会会長
フランクフルト国際モーターショー(IAA)記者会見:
2007年9月11日

あらゆる意味において、車は人を前進させるものです。世界中で、とりわけアジアと東ヨーロッパでは、モビリティ(移動体)に対する個別のニーズが急速に上昇しています。では、私たちボッシュを動かすものとは何でしょうか?限りある地球資源の節約、二酸化炭素(CO2)や有害物質の排出削減、交通における安全性をさらに高めること。このような要求事項にこたえ社会・環境とモビリティとの調和を図ること、そしてこれらのニーズをいかにビジネスチャンスに生かしていくか。これが、私たちボッシュが成し遂げようとしていることなのです。「Invented for life(独創を、みんなのものに)」をコーポレート・スローガンに掲げる私たちの革新技術プログラムは、世界中でそして新興国でも環境や資源を保護するためのシステムを生み出しています。言い換えれば、私たちは“持続可能なモビリティ”という要求を満たすテクノロジーを提供することによって、社会・環境に貢献し(ecologically)、同時に私たち自身の経済的な利益をも得ることができる(economically)ということです。

事業のグローバル展開がもたらすメリット:2007年は順調な基調

最初に、ボッシュの事業概況について、足元の数字をご説明いたします。本年度の業績は順調に進捗しているといえます。とはいえ対ドルと対円へのユーロ高がグローバル単位での伸長の足かせとなっています。本年度のボッシュ・グループの売上成長は前年比で5%強、売上高は約460億ユーロに達すると予測しています。為替調整後で成長率はさらに2%増の7%強となります。この数字は、オーストラリアのブレーキメーカー、パシフィカ(Pacifica)グループの買収など、いくつかの企業買収による成長を含んだものです。ボッシュのすべての事業分野において、とりわけ新興国における成長に目覚しいものがあります。このことは、事業の多角化とグローバル展開というボッシュの基本戦略が正しいことを証明しています。まだまだ大いに努力を続けなければならない点があるとはいうものの、少なくとも、2007年の目標値である税引前利益率7%を達成できる見込みです。

私たちは依然として、自動車機器分野における納入価格の値下げ圧力、それに伴うコストの引下げといった課題に直面しています。にもかかわらず、2007年における自動車機器テクノロジーセクターの業績は、売上高で280億ユーロ超、前年比で約4%の成長と私たちは予測しています。為替調整後の売上成長は約6%となります。
事業の発展状況は地域によって大きく異なります。たとえば、今年のヨーロッパにおける売上成長は4%を超えるでしょう。一方、アメリカにおいては、ユーロベースでは成長は停滞気味ですが、ドル換算すると6%以上の成長を見込んでいます。自動車機器テクノロジーセクターで最もダイナミックな成長を示しているのはアジア・太平洋地域です。名目成長率で5.5%、現地通貨に換算すると11%の成長が見込まれています。中国での成長率は30%にも達する勢いであり、インドでも25%の成長が見込まれています。
この数字は世界の自動車市場の劇的な構造変化を示していますが、私たちボッシュにとっての大きな強みはグローバル規模での事業展開であり、とりわけ自動車機器テクノロジーセクターで顕著です。私たちは、ドイツ国内における産業発展を軽んずることなく、しかし同時にグローバル規模での事業展開をさらに推進することによって、さらなる地位の強化をはかります。

成長を加速:多岐にわたる製品群

私たちは、自動車機器テクノロジーセクターの力強い成長が2007年以降も続くと予測しています。要因のひとつとして、世界的な気候変動問題があげられます。このことが、燃費を著しく低減する私たちの製品群の成長に有利に働くと見ているからです。気候変動問題は、実際に私たちが顧客と協力して進めている研究開発プロジェクトにも大きな影響を及ぼしています。
「車を走らせ、かつ燃料を節約する」-このことを実現できるのがボッシュの燃料噴射システムであり、燃費向上への要求が私たちの提供する製品・システムへの需要を押し上げてきました。今日、これまでは「大きなシステム」の影に隠れがちだった技術コンセプトが、重要性を増してきています。サーマルマネジメント、車両電気システムマネジメント、高効率オルタネータ、スタート/ストップ・システムなどがそれです。これ以外にも私たちが長年開発してきた数多くの技術コンセプトのほとんどが、すでに量産段階にあります。すなわち、これらのマネジメントシステムを一連の技術パッケージとして、次世代モデルのさまざまな車両に最適化して提供することが可能な段階にすでにあるということです。もちろん、私たちは引き続き自動車メーカーと協力して車両価格をユーザーが購入可能なものとするよう取り組んでいかなければなりませんが、そのことは可能であると私たちは確信しています。
現在、私たちにとって、気候変動問題への解決策を生み出すことは最大の課題であり、かつそれは私たちの事業の大きな成長につながることなのです。

自動車機器テクノロジーセクターの際立った成長:牽引役は3つ

• 成長要因の1つ目として、ボッシュがこれまでヨーロッパ市場での普及にまず重点を置いてきた革新技術で、今後はアメリカとアジアでの販売増加が見込まれる製品・システムがあげられます。
ESC (エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)がそのひとつです。2006年、ヨーロッパでは新規登録乗用車の43%に ESC が標準装備されていました。欧州委員会は、5年後の2012年までに新車への ESC 装備率が100%に達することを目標に掲げています。米国では、高速道路安全局(National Highway Traffic Safety Authority)がモデルイヤー2012 年以降は、すべての新規登録軽量車両に ESC を標準装備することを義務付けています。2010年までに北米における新規登録軽量車両への ESC 装備率は2007年の倍の86%に達すると予測されます。
もうひとつは、「クリーン・ディーゼル」テクノロジーです。ヨーロッパでは新車の2台に1台はディーゼル車であり、この数字はさらに増え続けています。一方、ヨーロッパ以外の地域でもディーゼルに追い風が吹いています。このことは開発プロジェクトの数からも明らかです。ボッシュでは、インドで35件、中国で100件以上、米国では60件近いプロジェクトを進行しており、顧客もヨーロッパの自動車メーカーだけではなく、3分の2以上がアジアとアメリカの自動車メーカーです。ディーゼルのグローバル化が目の前に迫っています。
このように、私たちの革新のテクノロジーがグローバル規模で拡大していくことが、私たちの成長の最大の牽引役となるのです。

• 2つ目は、長い助走期間の後、世界市場で急上昇の兆しの見えるガソリン直接燃料噴射システムです。ボッシュの第2世代のガソリン直噴システムは市場に広く受け入れられています。今年、ボッシュは90万ユニットを生産する予定で、2010年には年間生産高で200万ユニットを超えるでしょう。

• 3つ目は、特に新興国で平均以上の成長を示している低価格車両(LPV=Low Price Vehicles)セグメントが好調なことです。ボッシュは LPV (低価格車両)用の費用効率の高いソリューションを開発する際、そのグローバル規模での開発ネットワークの強みを活かし、Center of Competence (CoC)と呼ばれる開発・製造拠点と他の地域拠点間で緊密に連携して、顧客要求や地域ニーズに合わせて最適化したソリューションを見出します。この低価格コンポーネントの開発ノウハウの蓄積は、熾烈な競争を強いられている西ヨーロッパや北米の市場でも非常に有用です。LPV (低価格車両)用製品による売上高は、早ければ2010年には10億ユーロに達する見込みです。

これらの状況を総合した結論は、今後数年間、私たちはすべての事業分野において数多くの成長のチャンスが見込まれるということです。車両に搭載される電子技術のさらなる増加が、私たちの大きな強みとなります。とりわけ、ESC とクリーン・ディーゼル・テクノロジーにおけるサクセスストーリーが同時に結実しつつあることが、私たちの発展をさらなる次のステージへと導いていきます。

未来の道路交通:イノベーションの5つの分野

ボッシュの革新技術が世界中で広く受け入れられているのは、それが人々の求めているソリューション、すなわち自動車産業の世界の主要市場における需要にこたえるものだからです。交通事故を低減し、有害物質の排出を削減し、燃費を向上させる。これらの要求事項における世界中の厳しい規制値の数々をクリアすることが、私たちの使命です。そして、“持続可能なモビリティ”を実現するために調整・最適化しなければならない課題はますます高度なものとなっており、さらにユーザーにとって購入可能な価格を維持しなければなりません。また私たちは、低価格車両(Low Price Vehicles=LPV)のための技術開発を同時に進めていかなければなりません。
未来の道路交通を見据えて、私たちは以下の5つの分野に焦点を当てていきます。

• 1つ目は、既存の内燃機関を、どんな駆動システムよりもクリーンで経済的なものとすることです。そして、現在走っている車の新車への買い換えを促進することによって、最も速く、広範囲にわたり、CO2 排出を削減することができます。

• 2つ目は、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを、増加しつつあるバイオフューエルに適合させることです。

• 3つ目は、電気自動車が実用段階になったときのために、バッテリーの出力密度を格段に高めることです。

• 4つ目は、車両の安全性向上のための技術は ESC で終わったわけではない、ということです。ほとんど事故のないドライビングのための統合セーフティシステムの提供は可能であり、それはドライバーアシスタンス(DA)システムの新たな技術との組み合わせによって実現されます。

• 5つ目は、車両間通信分野で新たなオプションを開発することです。様々なメディアを用いて渋滞の長さや凍結路面の情報などのデータ通信をするものです。

これら5つの技術分野でコンピテンシー(高い能力)を発揮するための鍵となるのは、電子技術です。ボッシュ・グループでは約9,000名のエンジニアがソフトウェアとセンサ技術の開発に従事しています。ボッシュの子会社 Robert Bosch India Ltd. (インド/バンガロール)では3,000名以上のソフトウェア開発のエキスパートが働いています。このチームと協力して、世界中のボッシュ・グループ従業員270,000名(2007年度末;計画)のうち30,000名以上ものエンジニアが、世界中で研究開発を続けています。ボッシュ・グループはこの分野への高水準の投資を今後も続ける計画であり、今年度は約35億ユーロが研究開発に投じられます。

これらの研究開発の成果として、環境保護にも交通事故防止のソリューションとしても非常に期待できる革新の技術が、今回の IAA ボッシュ・ブースで紹介されています。それでは、私たちが開発したイノベーションの具体的な概略をご説明しましょう。

「ガーディアン・エンジェルス」ネットワーク:先進統合安全システム

私たちは何よりも第一に、“事故のないドライビング”という目標に向かって進んでいます。これはボッシュが他に先駆けて開発した ESC を超えるものです。アクティブ・セーフティ機能、パッシブ・セーフティ機能、センシング技術をベースに、これらを車載 LAN でネットワーク接続し、システムを統合制御します。この新しい安全システム追求のコンセプトを、私たちは「先進統合安全システム(=Combined Active and Passive Safety Systems)」と呼んでいます。私たちは一連の電子機器「ガーディアン・エンジェルス」を生み出しましたが、これらの個々のシステムが互いに協力して働くようになるのです。私たちの目標は「センシティブな(感知する)車」です。

• 具体的な製品として、たとえば、ESC とエアバッグのネットワーク化による新しい機能「ポール衝突早期検出システム(Early Pole Crash Detection)」があります。これは2008年後半に量産開始予定です。このシステムでは、車両が横滑りして側面衝突した場合、ESC からの信号がエアバッグとシートベルトプリテンショナーが迅速かつ正確に作動するよう働きかけます。さらに、この連動は一方通行ではありません。後方から追突された事故の場合、追突後にエアバッグコントロールユニットとそのセンサからの信号によって ESC を制御し、最初の衝突のあとに起こる二次衝突を回避するか、またはその衝撃を低減します。このシステムは「二次衝突緩和システム(Secondary Collision Mitigation)」と名づけられ、2009年に生産開始予定です。

• 同じ時期に、衝突予知緊急ブレーキ(Predictive Emergency Braking)のひとつである「自動緊急ブレーキシステム(Automatic Emergency Braking System)」も市場に導入されます。私たちは2009年までにこのシステムを納入する契約を受注しています。このシステムは、ボッシュの「衝突予知セーフティシステム(Predictive Safety System=PSS)」の新たな段階となるものです。このシステムがもしドイツのすべての車両に装備されれば、年間で約40万件の交通事故を防止することができるでしょう。

• ドライバーアシスタンス(DA)システムのひとつとして用いられるセンサ技術も、新しい道を切り開いています。夜間の運転を支援する「ナイトビジョン」システムの成功に続いて、2009年には新たな DA システムが生産開始される予定です。このシステムは、車線逸脱、道路標識、歩行者や障害物の検出など、運転中の安全上の問題を認識することができます。そしてドライバーに警告を与えたり、正しい走行レーンに戻るよう穏やかに誘導したり、速度を修正したりすることもできます。

クリーンなドライビングで節約する:多彩な駆動システム

これらの技術開発と同時に、ボッシュは効率的な車両走行と公害を発生しない車社会をめざして、集中的な取り組みを続けています。自動車機器テクノロジーセクターの研究開発費の半分近くは、環境と資源を保護する製品の開発に投じられています。ボッシュの提供する多様な駆動システムについて説明しましょう。

• コモンレールシステムの分野における研究開発では、たとえば、ボッシュ「CP4」高圧サプライポンプと高圧インジェクタから成るコモンレールシステムは、2000 bar およびそれ以上の高圧での燃料噴射に対応できるように段階的な設計が計画されています。これによって多くのディーゼルエンジン搭載車が将来のヨーロッパの窒素酸化物(NOx)規制値を排ガス後処理システムなしでクリアすることができます。

• ボッシュの尿素水溶液噴射システム「DENOXTRONIC」を用いれば、ディーゼルシステムは2008年に米国で導入される乗用車排ガス規制 US07 Bin5 もクリアすることができます。これこそが、私たちのプロジェクトが世界中のカーメーカーと共にめざしてきた目標でした。これらの先進技術によって、ディーゼル車の増加がすなわち燃費向上と二酸化炭素(CO2)排出の低減を意味することは明白です。

• これと平行して、私たちはガソリン直接燃料噴射システムにおける燃料節約にも取り組んでいます。第2世代のガソリン直噴システム「DIモトロニック」では、筒内噴射式のエンジンと比較して、二酸化炭素(CO2)排出が最大で15%低減されます。そしてガソリン直噴システムとターボチャージャーを組み合わせることで、より小型のエンジン開発が可能になります。このようなダウンサイジング(エンジンの小型化)によって、より少ないエンジン排気量で、小型エンジンでは実現できなかった出力を得ることができます。すでにいくつかのアプリケーションで実現されており、さらなるプロジェクトも進行中です。

• このような内燃機関のさらなる改善と最適化とともに、私たちは内燃機関と電気モーターの組み合わせ「ハイブリッド」の開発に取り組んでいます。ボッシュはこの分野において、30年以上にわたって蓄積した高いノウハウを持っています。私たちは現在、ガソリン・ハイブリッドだけでなくディーゼル・ハイブリッドも受注しています。

• 最後に、代替燃料での作動に適合する内燃機関の開発を紹介します。ブラジルにおけるボッシュのフレックスフューエル・エンジンマネジメントシステムの成功に続いて、私たちは米国のエタノール基準に適合させた燃料噴射システムを開発中であり、2009年の生産開始を予定しています。私たちはまた、サンフューエル(バイオマス液化燃料)や植物ベースの合成燃料などへの適合も計画中です。これによって、既存の基幹設備(インフラ)および技術の両方を用いての再生可能エネルギーによる車両走行が可能となるのです。言い換えれば、新たなソリューションを急速に普及させることが可能となるのです。

長期的な展望と今すぐできること

すべての事業活動において、私たちは長期的な目標に向かって動いています。私たちは、最終的には“化石燃料への依存度の少ない道路交通手段”に照準を合わせています。しかし、いかに水素・燃料電池車や電気自動車の研究開発に集中的に取り組もうとも、それと同時に、既存の内燃機関の効率を高めるための継続的な取り組みが必要とされるのです。長期的な目標を追求しつつ、目の前の短・中期での課題を重視する。これが私たちのミッションです。いま現在、“持続可能なモビリティ”の研究開発に関して、私たちはまだまだ非常に大きな潜在力を有しています。たくさんの小さな一歩の積み重ねは、大きな一歩と同じだけ重要なのです。環境や資源の保護、安全性に関する要求に車両走行を適合させるために私たちボッシュは努力を続けていますが、自動車産業全体として求められるニーズには終わりがありません。しかし、包括的なコスト・コントロールに成功し、より環境にやさしい車の駆動技術を実現できれば、その会社は大きなチャンスを得ることができるでしょう。これを実現できるのは、先進技術を持ちグローバルな事業展開が可能な国際企業です。私たちボッシュはこの双方を兼ね備えており、これらの強みをさらに強化していくことを、いま、そしてこれからの明確な企業目標としています。


このプレスリリースは2007年09月11日に Robert Bosch GmbH より発行されました。原文をご覧ください。>