経営情報 Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

ドライバーアシスタンス/セーフティシステム

Dr. Werner Struth(ヴェルナー・シュトルト)
シャシーシステム・コントロール事業部長
ロバート・ボッシュGmbH

第60回オートモーティブ・プレス・ブリーフィング
2011年6月、ボクスベルク


ご来場の皆さま

理想の道路交通について尋ねると、全世界どこに行っても同じような答えが返ってきます。卓越した環境適合性のほか、無渋滞・無事故が希望項目リストの上位に必ず顔を出します。交通事故を一掃するには、インフラ面の対策に加え、高性能の運転支援やセーフティシステムが欠かせません。ボッシュはこの分野で長年にわたり活動してきました。とはいえ、事故のない自動車社会を実現させるためには、さらに何十年も開発を続けなくてはならないと私たちは理解しています。安全性、快適性、アシスタンスに関係する活動をひとつにまとめたボッシュの事業分野「ビークルモーション & セーフティ(VMS)」において、最初の目標に怪我のない運転を掲げているのもその理由からです。

交通事故の犠牲者は今後も増加

残念ながら、現状は理想から大きくかけはなれています。国連統計によると、毎年世界で130万人が交通事故のために命を落とし、約5,000万人が負傷しています。新興国におけるモータリゼーションの発展を背景に、10年後には交通事故による犠牲者数が現在の1.5倍に近い190万人に増加すると予想されています。そこで事態を憂慮した国連は今年5月、「交通安全のための行動の10年」計画の実施を呼びかけました。その目的は、2020年までに予想される交通事故による死傷者数を大幅に減らすことです。それを達成するためにアクションプランが立案され、具体的措置が策定されました。専用通行帯以外の一般道で走る二輪車ライダーへのヘルメット着用の義務付け、車両へのエレクトロニック・スタビリティ・コントロール(ESC)の装備、モーターサイクルへのアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の装備など、内容は多岐にわたります。これらの措置がすべて実施されれば、10年間で500万の人命を救い、5,000万人が重傷を負わずに済むと専門家は見ています。

「Invented for life」のスローガンを掲げるボッシュには、100年近くにわたり、自動車の安全性の向上に寄与する技術を生み出し続けた歴史があります。初期の頃に開発された光量の大きなヘッドライトや周囲の人に注意を促すためのホーンをはじめ、過去30年あまり、ボッシュは各種のアクティブ/パッシブセーフティシステムを開発し、そのほとんどを他社に先駆け、世界で初めて量産に移しました。その中には、1978年の世界初の電子制御式ABS、1981年の同じく世界初の電子式エアバッグコントロールユニット、1995年のESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)などがあります。このESCは今日、シートベルトに次ぐ最も効果的なセーフティシステムとして高い評価を獲得しています。交通事故の防止に寄与するボッシュの現行製品群には、さらにレーダーとビデオ機能をベースにした衝突予知緊急ブレーキシステム、サイドビューアシスト、車線逸脱警報システム、ナイトビジョンシステムなどがあります。

こうした新しい機能のベースとなるのは、車両の周囲を検知するセンサーからのデータとその他の情報ソースです。それを私たちは他の車両分野、たとえばドライブトレインやセーフティシステムとネットワーク化しようとしています。機能作動の連鎖と相互作用であるこの種のシステムは非常に複雑です。そのため、最初に安全性とドライバーアシスタンスのどの役割をどの機能に受け持たせるかを決め、次いで各機能のアルゴリズムを考え、それをもとにソフトウェアを開発していきます。それを車両に組み込み、適切な電子回路、メカニズム、アクチュエーターなどを協調的に制御するのです。それらを行うために求められるのは機能とシステムに関する膨大な知識ですが、幸いにしてボッシュには他の自動車部品サプライヤー以上に多くのノウハウを保持しています。

来る数年間、ボッシュは技術革新をバネに事業をさらに発展させていきます。この技術革新は、自動車の安全性・快適性をさらに向上させる新しい機能を生み出すだけでなく、ドライバーの負担を軽減します。その一方で技術革新は、既存システムのコストダウンにも寄与し、新興国で人気のある廉価な車両にも高度の自動車技術を装備できるようになります。なぜ私たちがそれにこだわるかといえば、安全技術は広く普及してこそ、交通事故による死傷者数の減少、あるいはその先にある事故のない社会の実現に貢献できると考えているからです。

事故分析に基づく製品企画

新しい安全機能を企画する際、私たちは国際的な事故分析調査データを利用します。事故調査データからは発生頻度の高い事故の種類の他、より重要となる死傷者発生の危険が特に高いのはどのような事故であるか、などの貴重な情報が得られます。こうしたフィールドワークから、個々の機能の安全性のさらなる向上につながる潜在的可能性を導き出すことができます。

詳細については多少異論もあるでしょうが、道路交通事故についてはおおよそ以下のような原則論が成り立ちます。

  • 最も多い負傷事故は交差点での衝突と追突事故、次が車両の車線逸脱とそれに伴う横滑り。
  • 死亡事故に限ると、最も頻度が高いのが横滑りで、以下、交差点での衝突、歩行者との衝突という順序。

これらの事故の種類ごとに、事故防止または被害を最小限にとどめるための機能を導き出します。その代表例が、車両の横滑りを抑制するエレクトロニック・スタビリティ・コントロール(ESC)です。ESC の量産が始まったのは1995年ですが、最近になってその装備を義務付ける国が次第に増えています。

セーフティシステムが交通事故を防ぐ

2010年、アウディA8にボッシュの衝突予知緊急ブレーキシステムが初めて採用されました。今ではA7とA6のほか、フォルクスワーゲン・トゥアレグにも装備されています。このシステムは切迫した追突の危険をドライバーに警告し、減速をサポートします。衝突が避けられない場合には、2 回のパーシャルブレーキをかけた後、システムは自動的にフルブレーキに移行します。当社の調査結果では、このシステムにより、死傷者を伴う追突事故の最大 72%を防止できると見込まれています。

車両が連なって走行する市街地では、低速走行中での追突を回避するために緊急ブレーキアシストを併用します。なお、この機能は今年中にもある中型車に採用される予定です。このシステムは走行速度が時速30 km以下の場合に働きます。車両周囲の状況はレーダーセンサーで把握し、緊急ブレーキの制御を担うのはESCです。システムが追突事故の切迫を検知し、そのときの先行車両との速度差が毎時20 km以下である場合には、機能によるフルブレーキで事故を回避することができます。追突を避けられない場合でもダメージを緩和でき、負傷する危険を減らします。低速走行時に緊急ブレーキを使うことの効果を、ドイツの保険会社、アリアンツの専門部門が2009年に分析調査しました。その結果は、この種のシステムが広範に導入されれば、ドイツ国内だけで年間50万件の些少な事故を防止できるというものでした。修理コストにすると、3億3,000万ユーロの節減につながるとのことです。

車線からの逸脱も、交通事故の原因として上位に位置します。そこで適切な車線内での走行をサポートするために威力を発揮するのが、ビデオカメラを用いて道路の車線を検出する機能と他のシステムと組み合わせたシステムです。当社が実施した調査では、そのシステムによりドイツでは死傷事故の20分の1について被害を軽減できることがわかりましたが、米国ではそれ以上の効果が期待されています。車線逸脱警報と呼ばれるこのシステムは、車両が車線に接近しすぎると作動します。警報は、ハプティック(触覚)、視覚または聴覚に訴える形でドライバーに伝えられます。その感覚のうち、どれを選ぶかは自動車メーカー各社の判断によります。他方の車線維持システムは英語でレーンキーピングサポートといいますが、こちらはもう一歩進んでいます。車両が車線から逸脱しそうになると、警報を出すのではなく、ステアリング操作や片側のホイールにわずかなブレーキをかけることによって車両の進行方向を修正します。ドライバーが方向指示器を操作し、進路変更の意図を明示したときは、当然これら2つの機能は働きません。ドイツの交通事故データベースGIDASを分析した結果では、車線維持支援システムにより車線逸脱が原因で起きる事故の4分の1を防止できる見通しです。ドイツ国内のすべての車両がこのシステムを装備すれば、年間250人を交通事故死から救うことができるのです。現在、ボッシュのセンサーをベースとしたシステムがすでにアウディの車両に標準装備されています。

では、車両が車線から逸脱するのはなぜなのでしょうか?その原因のほとんどは、ドライバーの一瞬の不注意です。特に疲れが出やすい夕方から夜間にかけて集中力が失われがちです。そうした場合に備え、ボッシュはシンプルで、なおかつ洗練されたソリューションを用意しました。それは、舵角センサーからの信号を継続的に確認する居眠り運転検知システムです。運転中のつかの間の眠り、いわゆる瞬眠では多くの場合、ステアリング操作に特徴的なパターンが起きることがわかっています。そこで、それを検知した場合にはシステムがドライバーに警告し、休憩を促すというわけです。この機能の魅力的な点は、純粋なソフトウェアベースの機能であるために低コストで車両に実装できることです。その効果は、2010年にアメリカの自動車クラブAAAが発表した調査報告からも大いに期待できます。米国内で発生する死亡交通事故の17%はドライバーの疲労が原因とされているからです。このボッシュのソリューションは2010年末からフォルクスワーゲン・パサートに装備され、他のモデルについても導入の準備が着々と進められています。

今後数年間、自動車メーカーとサプライヤーではこの種の機能の開発が一段と進められる見通しです。そのための前提となるのが、車両の周辺環境の情報を集めるより高性能なセンサーです。

高性能化するレーダー/ビデオセンサー

レーダーセンサーは、遠方まで見通せるだけでなく、距離と速度を正確に測定できます。2000年にボッシュがアダプティブクルーズコントロールの構成部品として採用したのが始まりですが、それと比べると、現在の第3世代の長距離レーダー(LRR3)はあらゆる点で長足の進歩を遂げています。サイズは3分の2になり、性能が大幅に向上しただけでなく、世界初のシリコンゲルマニウム技術の採用により、著しいコストダウンを実現したのです。検出距離範囲が最大250 m、視野角は最大30度のLRR3は、高性能なACCシステムと衝突予知緊急ブレーキシステムにとって最適なセンサーです。

2012年末には中距離レーダーセンサーがラインナップに加わります。性能的にLRR3に及びませんが、コストが抑えられ、中型車や小型車向けにも魅力的な価格でシステムを提供できるようになります。レーダーの検出距離範囲は最大160 m、視野角は最大45度です。ACCシステムや衝突予知緊急ブレーキシステム、車線変更またはパーキングから車を出すときの危険な状況の警告など、各種の用途に適しています。中距離レーダーセンサーは長距離タイプと同じく、77 GHzの周波数帯域を使用します。このセンサーはすでに実用化されている24 GHz帯域の製品とコスト的には同じながら、性能面ではあらゆる点で上回っています。

  • 中距離レーダーセンサーが使用するのは、世界的に自動車専用に割り当てられた周波数帯域
  • 標準的な24 GHzセンサーに比べ、サイズはわずか3分の1程度、
  • 物体識別能力は5倍に向上、
  • 速度と距離を3~5倍の高精度で測定可能。

当社では、この新しいセンサーがアシスタンスシステムの普及に弾みをつけるものと期待しています。2015年には、ヨーロッパでは新車の15%に衝突予知緊急ブレーキシステムとACCシステムが装備される見通しです。

ビデオセンサーは、レーダー技術を補完する格好の認識機能です。最大の特長は、入手できる情報が多いことです。異種センサーの情報を統合するにはセンサー技術と画像処理の面で膨大なノウハウが求められますが、ボッシュにはそのノウハウがあります。つまり、高性能ソフトウェアのアルゴリズムを開発し、それを使って詳しい「イメージ」、すなわち車両前方の状況の認識を生成できるということです。これは自動緊急ブレーキ機能を実現する上で欠かせない技術です。将来は車両だけでなく、歩行者も識別でき、その進行方向まで正確に検知します。特に十字路での事故防止には、これが効果的に働きます。ビデオデータはまた、ACC機能の向上にも役立ちます。ビデオデータは解像度が高いため、後方の車両が自車を追い越し、同じ車線に割り込んできたときにその状況をより素早く認識できます。

当社の多目的カメラと組み合わせて、画像分析をベースとする別の機能を並行的に実現することもできます。道路標識と車線を識別、現在適用されている制限速度や追い越し禁止などの情報をコクピットに表示、車線維持関係のアシスタンス機能に情報を送るなどです。ボッシュの標識認識システムは、2010年からアウディA8に装備されています。このモデルではビデオカメラ信号を車線逸脱警報とヘッドライトの自動制御に利用しています。2015年にはヨーロッパで登録される新車の15%にビデオセンサーが装備されると私たちは見ています。

交通事故に遭うのは乗用車だけではありません。二輪車が関わる事故も多発しています。ヨーロッパでは、交通事故犠牲者の7人に1人が二輪ライダーです。中国やインドなどの新興国ではこの比率がより高く、4人に1人の割合に達します。こうした二輪事故の防止に効果があるのが、二輪車用のアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)です。ボッシュは2011年にこの新世代ABSを市場に導入します。従来のシステムに比べて大幅に小型化されており、二輪車メーカーから多くの引き合いをいただいています。サイズがコンパクトなだけでなく、コストも抑えられており、小型の二輪車やスクーターにも適しています。なお、2010年に欧州委員会は、2017年以降、排気量125 cc以上の二輪車にABSの装備を義務付ける案を提出しています。

より安全、快適なドライブを目指して

さて、時間も残り少なくなりました。ボッシュは今後も新しいセンサーの創出とそのネットワーク化をベースに、安全性と快適性の向上に寄与する新しい機能の開発を続けていきます。それと同時に、コストダウンによってその普及を推進します。また、車庫入れや渋滞した車列中での走行など、特定の状況下における運転の全自動化を図るだけでなく、車両同士の通信、あるいは車両と定置情報発信源との通信により、局地的な路面凍結、事故、渋滞および最適な迂回路などを案内するシステムの実現を目指します。

皆さん、
国連は素晴らしい目標を打ち出しました。そこで重要となるのは、ビジョンをビジョンのまま終わらせるのでなく、いかに現実のものとするかです。ボッシュは将来も交通安全の向上に積極的に取り組みます。新しい機能を開発し、既存の機能については継続的に改良とコストダウンを推し進め、「誰にとっても安全な自動車社会」を一歩ずつ実現したいと考えています。

ご静聴ありがとうございました。

ボッシュ・グループ概要 The Bosch Group at a Glance

ボッシュ・グループは、グローバル規模で革新のテクノロジーとサービスを提供するリーディング・カンパニーです。自動車機器テクノロジー、産業機器テクノロジー、消費財そして建築関連テクノロジーのセクターにおいての従業員数は28万人以上で、2010年度の売上高は約473億ユーロです。ボッシュ・グループは、ロバート・ボッシュGmbHおよびその子会社 350社超と、世界の60カ国以上にあるドイツ国外の現地法人で構成されています。販売、サービス代理店のネットワークを加えると、ボッシュは世界の約 150カ国で事業展開しています。この開発、製造、販売、サービスのグローバル・ネットワークが、私たちのさらなる成長の基盤です。ボッシュは2010年、研究開発費として38億ユーロを投資し、全世界で3,800件以上もの国際特許の基礎特許(第一国出願)を出願しています。
ボッシュはすべての製品とサービスにおいて革新的で有益なソリューションを提供することによって、人々の生活の質(Quality of Life)を向上させ、循環型の持続的環境社会(Sustainable society)の創出に寄与していきます。

ボッシュは2011年に記念となる創立125周年を迎えます。ボッシュの起源は、1886年に創業者ロバート・ボッシュ(1861~1942)がシュトゥットガルトに設立した「精密機械と電気技術作業場」に遡ります。ロバート・ボッシュGmbHの独自の株主構造は、ボッシュ・グループの財務上の独立性と企業としての自立性を保証するものです。「株主(利益配当)」と「経営(議決権)」が完全に分離した、この企業形態によって、ボッシュは長期的な視野に立った経営を行い、将来の成長を確保する重要な先行投資を積極的に行うことができるのです。
ロバート・ボッシュGmbHの株式の大半は非営利組織である公益法人「ロバート・ボッシュ財団」(持株比率92%、議決権なし)が保有しています。議決権の大半は、株主の事業機能実行機関である共同経営者会「ロバート・ボッシュ工業信託合資会社」(議決権93%)が保有しています。残りの株式と議決権は創業家であるボッシュ家(持株比率7%、議決権7%)とロバート・ボッシュGmbH(持株比率1%、議決権なし)が保有しています。

さらに詳しい情報は
www.bosch.com ボッシュ・グローバル・ウェブサイト(英文)
www.bosch-press.com ボッシュ・メディア・サービス(英文)および
www.125.bosch.com ボッシュ創業125周年記念サイト
を参照してください。


このプレスリリースは2011年6月8日に Robert Bosch GmbH より発行されました。原文をご覧ください。>