経営情報 Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

内燃機関エンジンの最適化によるCO2の削減

Dr. Rolf Leonhard(ロルフ・レオンハルト)
ディーゼル燃料噴射システム開発部長
ロバート・ボッシュGmbH
第60回オートモーティブ・プレス・ブリーフィング
2011年6月、ボクスベルク

本稿は、実際の講演内容と異なる場合があります。


ご来場の皆さま

内燃機関はこれからもモビリティ社会を支える非常に重要なコンポーネントであり、地球全体の気候保全と化石燃料の保護に貢献していく役割を担わなくてはなりません。それが、ボッシュの市場研究者と外部の専門家が自動車の世界市場の発展について行った調査結果から引き出された結論です。

私たちの予測では、2020年に世界の市場規模は乗用車と小型商用車を合わせて1億400万台となります。そのうち純粋な電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド車はわずか300万台程度と考えられます。さらに600万台は内燃機関と電気モーターの両方が搭載されたハイブリッド車です。つまり2020年にはこれらを除いた1億台近い数の新車に内燃機関が単独に搭載され、市場に送り出されるということになります。

昨年の新車販売台数は7,100万台ですから、2020年にはそれより3,000万台も多く新車が市場に送り出される予測だということを意味しています。すなわち、内燃機関搭載車の市場は今後10年間で40%以上成長するのです。

このような状況で、私たちは環境と化石燃料資源の保護という社会的な目標を達成できるのでしょうか。その答えを引き出すのは簡単です。電気自動車とプラグイン・ハイブリッド車の予測される市場占有率は3%です。つまりはその分しかCO2削減に貢献できません。したがって、新車の97%に相当する残りの内燃機関搭載車で、いかに削減に貢献できるかが重要となってきます。そこで開発者に与えられる課題は、全世界で今後10年間にわたってCO2排出削減目標値を達成するにはどうすればよいか、ということになってくるのです。

これまでに地球上の多くの国において、CO2の削減値が法律で定められたり、削減目標として設定されたりしています。ヨーロッパでは、2009年の平均的な乗用車のCO2排出量は1 km当たり146 gでした。欧州委員会は加盟国に対し、2015年までに排出量を11%削減して130 gにする目標を定めています。さらに、2020年までにCO2排出量を95 gにし、合計で35%低減することを目指しています。欧州委員会が2025年までに求めている値は、平均的な新車で1 km当たりのCO2排出量を70 gにすることです。これを平均燃費に換算すると、ガソリンエンジンの3リッター/100kmもしくはディーゼルエンジンの2.6リッター/100kmとなり、現在の平均値を優に50%削減しなければならないことになります。これを別の方法で換算するとガソリン車で1ガロンあたり78マイル、ディーゼル車では1ガロン当たり90マイルとなります。また重量が3.5トン未満の小型商用車に対しても、欧州委員会は2020年の目標値として1 kmあたりのCO2排出量を147 gと定めており、約30%の低減を求めています。

各地域の状況より、CO2排出削減値を達成するために中心となる技術は市場ごとに異なっています。例えばブラジルではフレックス・フューエル技術が重要な役割を果たしています。広大な農地に植えられたサトウキビがエタノールに加工され、鉱物油ベース燃料の代替燃料として使用されています。この燃料は再生可能な原料から精製されるため、カーボンフットプリントを大きく改善することができます。米国では、エタノールを85%まで混合できるフレックス・フューエル車両の新車登録が増加しつつあります。このような環境保護効果は、他の国々や地域でもバイオ燃料と化石燃料との混合によって得られています。混合率は5~20%で、ガソリンにもディーゼル燃料にも混合されています。未来への貢献としては、その他に有機廃棄物を原料とする合成燃料があります。

ヨーロッパでは全自動車のうち50%が、燃料を節約しCO2排出をより低減できるディーゼルエンジンなので、ディーゼルエンジンが解決策になる、と考えられています。インドもまた大きなディーゼル市場です。米国では依然としてガソリンエンジンが主流ですが、ディーゼル市場は小さいながらも成長市場として購買層を増やしています。世界で最も高い成長を続けている自動車市場である中国では、現在新車登録乗用車の99%以上がガソリン車です。小型バスに占めるディーゼル車の割合は3%ですが、それとは対照的に新車登録される小型商用車の4分の3がディーゼルエンジンを搭載しており、私たちは将来中国では全体として、電気自動車と並んでディーゼル車の比率が高まると期待しています。というのは、中国政府もCO2排出量の少ないモビリティを目指しており、技術的に優先されるべき解決策を決定しようとしているからです。

このように、環境に最適な自動車燃料に対するイメージは世界の各地域で異なっていますが、それでも1つの共通した方向性があります。つまり、ハイブリッド駆動コンセプトの車両が増加しているといえども、2025年までにCO2の目標値を達成するためのカギとなるのは内燃機関搭載車だということです。

ボッシュがオートモーティブ・プレス・ブリーフィング2009の際に明確にしたのは、中期的には、ガソリンおよびディーゼルエンジンにおいて燃費とCO2排出量が30%低減されること、そしてハイブリッド駆動により燃費とCO2排出量がさらに10%低減される、ということです。転がり抵抗の低い低燃費タイヤの使用、軽量構造、空気抵抗の低減など、カーメーカーが車両へ直接施す対策と合わせると、燃費とCO2排出量は現在の平均値のおよそ半分にまで削減されるでしょう。

これはつまり、内燃機関搭載車であれば、ヨーロッパでの2020年のCO2削減目標である1 kmあたり95 gが実現可能である、ということを意味しています。その予測を、もう一度ここで強調したいと思います。ボッシュは大幅な燃費節減を達成できるディーゼルエンジン用とガソリンエンジン用の技術パッケージを自動車産業に提供しています。

ヨーロッパ市場の新車標準燃費を詳しく見てみると、ミドルクラスまでの車両モデルのいくつかは、ヨーロッパの2015年のCO2目標を今日すでに達成しています。コンパクトカークラスの車両として、例えば出力77kWのガソリンエンジンを搭載した、CO2排出量 121 g、燃費が5.2リッター/100 kmのVW Golf TSIが挙げられます。同じモデルのディーゼルエンジン搭載車では排出量は99 g、燃費は3.8リッターになります。またボルボC30Dは84 kW、99 gです。

しかしアッパーミドルクラスのBMW 5シリーズクラスになると、出力135 kW、燃費4.9リッター、排出量は129 gです。プジョー508やVW Passatのガソリンエンジン車では前者が144 g、後者が138 gとなっています。トヨタのガソリンハイブリッド車の標準燃費はコンパクトカークラスの基準となる値であり、CO2 排出量はモデルによって多少異なるものの約90gです。アッパークラスでも、ディーゼルハイブリッド車として2020年の目標に設定されたCO2排出値をクリアできると予告している車両もあります。例えばプジョー3008は、ボッシュのハイブリッド技術を搭載したディーゼルハイブリッド乗用車です。

このように数値を詳細に見て行くと、ガソリンハイブリッドは標準燃費でディーゼル車両にほぼ匹敵すると言えるでしょう。これら2つの技術は共に、今日すでに2020年の目標値を達成できる能力を持っています。

自動車産業製品に関するこういった興味深い事例は、私たちの予測が実現可能であることを示しています。最終的に目指されているフリート値の達成を可能にするために、現在量産されているエンジンの設計のほとんどには、燃費低減技術を付加できる十分な余地が備えられています。ただし、このような特に燃費に優れた車両ですら、2009年のブリーフィングでご説明したような技術的改善余地がすべて引き出されたわけではありません。

内燃機関の効率を最も高めることができる対策はダウンサイジングです。総排気量を小さくし、気筒数を減らすことで摩擦損失と移動質量が低減されます。このような内燃機関では熱損失も小さくなります。開発者の課題は、排気量だけでなく必要に応じて気筒数も減らしながら同等かそれより高い性能を達成することです。

排気量と気筒数を減らしても、内燃機関が自然吸気する量よりも燃焼サイクルにおいてより多くの空気を送り込むことによって性能を維持することができます。このことは、十分な空気を送り込み、よりクリーンな燃焼をもたらすターボチャージャーを使用することで可能になります。

ボッシュの合弁会社Bosch Mahle Turbo Systemsは、2011年末からこのようなエンジンコンセプトに基づいてガソリン/ディーゼルを搭載した乗用車と商用車のために適合された最新のターボチャージャーシステムの製造を開始します。2015年にはこの合弁会社で製造するターボチャージャーが100万ユニットに達すると見込んでいます。

排気量の観点からも気筒数の観点からも、ダウンサイジングにはまだまだ可能性があります。開発者の最終的な課題は効率を高めることであり、その際に燃費低減とコスト、走行性能と快適性の間で受け入れ可能な妥協点を見つけることです。

排気量当たりの出力を高めること、すなわちダウンサイジングによりこれが実現できます。しかし、その際にガソリンエンジンでは燃料の自然着火が生じ、エンジン損傷を招く、いわゆるノッキング限界が障害となります。ガソリン燃料直接噴射システムにより、筒内に噴射された燃料による燃焼室の適切な冷却、それと同時に燃料を損失することのない気筒掃気が実現されます。これにより、ノッキング限界は高負荷かつ、高加給運転領域まで押し上げられます。
その結果これまでディーゼルエンジンの専売特許であった非常に高いトルク値を低回転数域から得ることができます。

またディーゼルエンジンでもダウンサイジングはまだまだ可能です。ターボチャージャーによって過給圧が高められるため、これに対応してボッシュの開発担当者はコモンレールシステムの噴射圧を高めなければなりません。噴射圧を高めることには複数の利点があります。つまり、同じ噴射期間でより多くのディーゼル燃料を噴射して出力を増大させ、ディーゼルエンジンの比出力を高めることができるのです。その他にも、エンジン性能を維持しながらインジェクターのノズル孔直径を縮小しています。多段パイロット噴射と多段ポスト噴射を組み合わせることで、燃焼室内での混合気形成を改善し、燃料を節約して排気ガスをよりクリーンにし、特に窒素酸化物の排出を低減することが可能です。

高加給化に伴い筒内圧力と排気ガス温度が上昇しますが、これらがエンジン構造へ過大な負荷を生じることを防ぐためにも、高められた噴射圧が活用されています。

年内にはボッシュで初めて噴射圧が2,200 barに達する乗用車用コモンレールシステムを量産開始します。そしてボッシュの開発者はすでに2,500 barのコモンレールシステムも開発中です。取付けスペースや重量を増やすことなく、また油圧効率を失うことなくこのような技術進歩を達成するためには、より洗練された技術を探求し続ける必要があります。しかしながら私たちはこの高い噴射圧をさらに高めることは可能であると考えています。

コモンレールシステムの噴射圧がさらに高められたとしても、この有害物質低減対策がすべてのエンジンに適用される必要があるわけではありません。
ディーゼル微粒子フィルターに加えて排ガス中の窒素酸化物を低減するためのシステムがすでに商品化されています。乗用車用として最初のシステムは2008年から米国で、2009年からはヨーロッパでも量産供給しています。このディーゼル車両は現在でもすでに2015年から発効するEU6規制をクリアしています。

このDenoxシステムにより、将来さらに厳しさを増す排出規制を1,600 barの噴射圧によって満たすことができます。堅牢で低価格のソリューションという要求が特に高いアジアの成長地域でコモンレールシステムの導入が増加することで、将来私たちは中国とインドで噴射圧1,400 barと1,800 barのシステムを供給する予定です。

乗用車用ディーゼルでは、NOx排出ガス後処理システムの導入により、最大5%燃費を低減することができます。

私たちは、ガソリン/ディーゼルエンジンに直接施すすべての技術的対策を補うものとしてエンジン補器類の効率性を高めています。CO2排出量をさらに減らすためには、需要対応型の制御も高い効果を発揮します。この制御によって実際に必要な場合にのみエンジン補器類が作動します。電動ウォーターポンプ、電動パワーステアリング、あるいは特に惰性走行時にバッテリーに充電を行うオルタネータは、車両全体の効率性を高めます。特に高い効率性を示す例として、ボッシュのスタート・ストップ・システムが挙げられるでしょう。赤信号で停車する場合に、システムがエンジンを停止させ、信号が緑に変わるとすぐに発進できるように再始動します。ヨーロッパで有効な新ヨーロッパ走行サイクルでは、このシステムによって約4%、特に市街地サイクルでは最大8%まで燃費が低減できます。

まとめと展望

ボッシュは現在すでに、経済的な走行を実現し、CO2排出量を低減するために大きく貢献できる、あらゆる種類のコンポーネントとシステムを自動車産業に提供しています。その結果、政府の目標設定を達成するほどの最新のエンジンを搭載した車両がすでに存在しているのです。2020年のフリート燃費の目標値は最新の技術で達成可能です。

自動車ドライバーが2010年の平均的な車と2020年の車を比較したとすると、ドライバーが3年間走行するとしてヨーロッパの典型的な年間走行距離と現在の燃料価格に基づいて計算した場合、1,000~1,500ユーロの燃料費を節約することができるでしょう。2020年の車両にはより多くの燃費低減技術が搭載されていると考えられるため、実際の走行ではさらに節約が可能であると予測されます。これを一般的な車両寿命である約12年に換算すると、4,000~6,000ユーロの燃料費を節約できると同時に環境へのCO2排出が6~11トン削減できます。

現在すでに供給している、燃費とCO2排出量を低減する技術パッケージに加えてさらに、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方で同じように燃料消費量の低減を高めることに取り組んでいます。これには、燃焼室圧力センサーを使用したディーゼルエンジンとガソリンエンジン用の燃焼制御など、個別の対策が多数含まれています。またディーゼルエンジン用可変バルブ制御のように、今日すでにガソリンエンジンに導入されている技術もあります。さらには車両システムの効率を高めるトランスミッションや排気熱からのエネルギー回収、冷却能力の低減などがあります。

私たちは、これからもその創造的思考によってさまざまなアイデアを生み出すことでしょう。それに加えて、ドライブトレインの先進技術開発で積み重ねた私たちの経験に基づき、2025年のCO2目標として議論されている1 kmあたり70 gという数字も確実に達成することができるでしょう。私たちはこれからもコーポレート・スローガンである「Invented for life」に従って未来の技術に取り組んでいきます。

ご清聴ありがとうございました。

ボッシュ・グループ概要 The Bosch Group at a Glance

ボッシュ・グループは、グローバル規模で革新のテクノロジーとサービスを提供するリーディング・カンパニーです。自動車機器テクノロジー、産業機器テクノロジー、消費財そして建築関連テクノロジーのセクターにおいての従業員数は28万人以上で、2010年度の売上高は約473億ユーロです。ボッシュ・グループは、ロバート・ボッシュGmbHおよびその子会社 350社超と、世界の60カ国以上にあるドイツ国外の現地法人で構成されています。販売、サービス代理店のネットワークを加えると、ボッシュは世界の約 150カ国で事業展開しています。この開発、製造、販売、サービスのグローバル・ネットワークが、私たちのさらなる成長の基盤です。ボッシュは2010年、研究開発費として38億ユーロを投資し、全世界で3,800件以上もの国際特許の基礎特許(第一国出願)を出願しています。
ボッシュはすべての製品とサービスにおいて革新的で有益なソリューションを提供することによって、人々の生活の質(Quality of Life)を向上させ、循環型の持続的環境社会(Sustainable society)の創出に寄与していきます。

ボッシュは2011年に記念となる創立125周年を迎えます。ボッシュの起源は、1886年に創業者ロバート・ボッシュ(1861~1942)がシュトゥットガルトに設立した「精密機械と電気技術作業場」に遡ります。ロバート・ボッシュGmbHの独自の株主構造は、ボッシュ・グループの財務上の独立性と企業としての自立性を保証するものです。「株主(利益配当)」と「経営(議決権)」が完全に分離した、この企業形態によって、ボッシュは長期的な視野に立った経営を行い、将来の成長を確保する重要な先行投資を積極的に行うことができるのです。
ロバート・ボッシュGmbHの株式の大半は非営利組織である公益法人「ロバート・ボッシュ財団」(持株比率92%、議決権なし)が保有しています。議決権の大半は、株主の事業機能実行機関である共同経営者会「ロバート・ボッシュ工業信託合資会社」(議決権93%)が保有しています。残りの株式と議決権は創業家であるボッシュ家(持株比率7%、議決権7%)とロバート・ボッシュGmbH(持株比率1%、議決権なし)が保有しています。

さらに詳しい情報は
www.bosch.com ボッシュ・グローバル・ウェブサイト(英文)
www.bosch-press.com ボッシュ・メディア・サービス(英文)および
www.125.bosch.com ボッシュ創業125周年記念サイト
を参照してください。


このプレスリリースは2011年6月8日に Robert Bosch GmbH より発行されました。原文をご覧ください。>