自動車機器テクノロジー Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

安全と効率の向上を実現する車両のネットワーク化

Bosch Engineering GmbH社長
ベルンハルト・ビア
および
ロバート・ボッシュGmbH
オートモーティブ・エレクトロニクス事業部
ボディ・エレクトロニクス製品部 シニア・ヴァイス・プレジデント
ハンス - ペーター・ヒュブナー

第61回オートモーティブ・プレス・ブリーフィング
2013年6月、ボックスベルグ

本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。


ご来場の皆さま

ボッシュはさらなるサービスと安全性の向上を目指し、車両のネットワーク化を図ります。車両の外部ネットワーク化とインフラを推進するための前提となるのは、車両システム全体の包括的なノウハウです。世界中のどのサプライヤーに遜色することがないほど、ボッシュにはこのノウハウがあります。私たちは、車載ネットワークコンポーネントとシステムのネットワーク化だけでなく、相互の情報や別の情報ソースとも結び付けることができます。この力があるからこそ、ボッシュは新機能の開発を進めることができ、それによって燃費や快適性の向上、開発期間の短縮、運転特性のカスタマイズを実現することができるのです。

この車両ネットワークが機能するためには、高性能な通信システムが欠かせません。そこでボッシュは、CAN FD(データ転送速度がフレキシブルな新しいCANバス)など、すでに未来の通信システム開発に取り組んでいます。

車両ダイナミクス制御の統合 – 車両ダイナミクスシステムのネットワーク化

自動車工学ではこれまで、駆動制御とシャシー制御の分野は互いに隔たりがあると考えられてきました。しかし、ボッシュはそうした枠を乗り越えています。システムのネットワーク化を通じて敏捷性と快適性をボッシュがどのように向上させているかを示す1例として、統合された車両ダイナミクス制御を挙げることができます。この機能には、ブレーキ、リアアクセルステアリング、アクティブスタビライザーや差動装置など、利用可能な車両ダイナミクスアクチュエーターが用いられています。ハイブリッド車や電気自動車の場合、特定のコンセプトに左右されることなく、ホイールに内蔵された電動モーターを活用しています。統合された車両ダイナミクス制御を通じて、アクチュエーターは革新的な方法で操作され、ドライバーは人為的なものをまったく感じることなく、自然なハンドリングを行うことができます。また、ハードウェアを変更しなくても、ドライバーは車両をより機敏で快適に扱えます。各種機能のさまざまなプログラム設定や手動設定モードにより、ドライバーは自分の好みに合わせた快適さと機敏さを融合できるからです。

統合された車両ダイナミクス制御は、車両に搭載されたアクチュエーターに応じて、各種のアクチュエーターと組み合わせて使用できますので、貴重な開発時間を短縮できるだけでなく、コストも抑えられます。

この機能を搭載した最初の量産車が、SLS AMG Electric Driveです。この機能は、ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)を使用して、ブレーキとリアアクセルのステアリングシステムをネットワーク化したコンセプトカーに搭載されています。なお、この車両を弊社の性能試験場で実際に体験していただくことができます。

モジュール式ハイブリッドプラットフォーム – パワートレインのネットワーク化

パワートレインに関しては、内燃機関と電動モーターのネットワーク化により、新しいアーキテクチャが誕生しました。ボッシュはすでに電動パワートレイン向けのあらゆるコンポーネントを提供していますし、ボッシュ子会社のボッシュエンジニアリングも、少量生産の車両、カスタム車両、試作車向けのハイブリッドシステムや電気駆動システムの開発に必要となる特殊なシステム専門知識を有しています。こうした専門の知識の中核を成しているのは、さまざまなアーキテクチャに関するシステム、機能、ソフトウェアエンジニアリングのノウハウとそのアーキテクチャを電気的・電子的に統合するノウハウです。お客さまのご要望に応じて、お客さま独自のパワートレインに合わせカスタマイズしたシステムをご提供することができます。これは特に、少量生産を行っているメーカー様には高い関心をお寄せいただけると思っております。

未来のハイブリッドシステムや電気駆動システムの開発をさらに効果的にサポートするために、ボッシュはモジュール式のハイブリッドソフトウェアプラットフォームを開発し、この新しいソフトウェアを使用しながら、さまざまなパワートレインアーキテクチャ向けの制御コンセプトの開発を進めています。このソフトウェアがあれば、パワートレインの電動モーターと多数の制御ユニット間のインターフェースをフレキシブルに統合できますので、開発時間を短縮し、コストも抑えることができます。

eモビリティのサービスパートナーとなるボッシュ

ハイブリッドシステムと電気駆動システムの進化のほかにも、「電動化」は新たな事業分野をもたらしました。ボッシュは2009年から、ハイブリッド車と電気自動車向けのサービスおよび修理ソリューションの面で自動車整備工場のサポートを行っています。たとえば、オートモーティブ・アフターマーケット事業部はボッシュ・カーサービスネットワークの熟練エレクトロニクスや診断スペシャリストに対して、高圧システムに関する全般的なトレーニングを用意し、新型のパワートレインを取り扱うために必要な専門知識が得られるよう支援しています。また、一般的なハイブリッド車と電気自動車でのサービスや修理の効率を向上させるために、ボッシュは自動車整備工場に最先端のテストおよび診断装置を提供しているほか、各種専門的なトレーニングやテクニカルホットラインサービスなども行っています。整備工場の包括的なネットワークのおかげで、ボッシュ・カーサービスはすでに電気自動車管理事業のパートナーとなっており、ボッシュはその専門知識を活かして、多くの地域で電動スクーターから電気自動車までさまざまなeモビリティ・プロジェクトを推進しています。

次のステップはクロスシステムのネットワーク化

ここでまた、自動車工学におけるネットワーク化の問題に戻ることにしましょう。eモビリティの登場により、これまで互いに隔たりがあると考えられてきた自動車技術の2つの分野、パワートレインとシャシーが1つにまとまることになりました。その背景にあるのは「電動化」で、ドライビングダイナミクスの世界に新たな可能性が拓かれました。そして、その可能性はパワートレインの枠を超えています。たとえばスポーツカーの場合だと、パワートレインに応じて横方向ダイナミクスが著しく改善されますし、非駆動アクセルの両端に2つの電気モーターが取り付けられている場合では、それが非対称のトルクを発生させるため、これまでリアホイール駆動だったスポーツカーをトルクベクトル化された全輪駆動車に切り替えられるようになります。また、ドライビングプレジャーの向上も、ハイブリッド車や電気自動車の魅力をよりいっそう高めることになります。

エレクトロニックホライズンとのネットワーク化を通じて周囲状況を検知

ボッシュは、車両の周囲状況を検知し、前方の道路の詳細なプレビューを提供するエレクトロニックホライズンのデータと自動車システムとのリンクも実現しました。曲げ半径、傾斜、制限速度などの情報を直接車両システムに統合するために、新たに標準化したインターフェースプロトコルを使用し、こうした情報をACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やパワートレインと論理的にリンクさせ、燃費と快適性の向上につなげています。

ここで例を挙げてご説明していきましょう。ボッシュは今の段階ですでに、ドライバーにこれから差しかかるカーブや制限速度を前もって伝える技術をもっています。燃費を最適化するために、カーブ付近での最適な速度や推奨ギアのほか、どこで正確にブレーキをかけ、加速するかをドライバーに伝えることができます。

その次のステップとなるのが、この情報をアダプティブ・クルーズ・コントロールとリンクさせることです。エレクトロニックホライズンのデータを使用して、車両の今後の速度曲線を計算することで、次のカーブに関する情報だけでなく、前方のルートに関する多くの追加情報を取り込めるようになります。ここから生まれたのが、「予測可能」なACC(アダプティブ・クルーズ・コントロールです。ACCは車両速度を独立制御し、カーブ、制限速度、市の境界の前や前方に障害物や速度の遅い車両を検知した場合に車両を減速させますので、この機能はドライバーにとって、安全性と快適性の向上に大きく寄与します。

これに続くステップでは、エレクトロニックホライズンのデータがパワートレインの制御戦略や、従来型のシステム、ハイブリッドシステム、または電気駆動システムを搭載した車両のエネルギーマネジメントに統合されます。ボッシュは詳細なルートプレビューを使用して、パワートレインに必要とされるエネルギーを計算し、これに応じて内燃機関および/または電気モーターを制御しています。たとえば、ハイブリッド車でより多くのエネルギーを回収できるルート区間をシステムが検知した場合には、前もって電気モーターをかみ合わせることができ、それによってバッテリーが放電されることになります。その結果、ルートや車両タイプに応じて、1kmあたり最大2gのCO2排出量を削減することができます。欧州連合がこれを「エコ・イノベーション」と認めたため、自動車メーカー各社は自社のCO2フリートエミッションに対してこのクレジットをオフセットできるようになりました。また、燃料効率を最適化する制御戦略をさらに調整することで、パワートレインのタイプに応じて、燃料消費量を最大10%削減できる可能性も見えてきました。本日は数台のコンセプトカーをご用意しましたので、そのうちの1台でこのネットワーク制御戦略をみなさまに実際に体験していただきたいと思っております。

未来のトレンドはドライビング機能の個別化

ボッシュが提供する機能は、すでにご説明したような形態のものだけではありません。私たちは、各種モードのドライビング機能が未来のトレンドになると確信しています。これは、個性をさらに強めたいというドライバーの希望を叶えると同時に、運転行動に関するブランド独自の違いを明確に印象づけたいというメーカーの要望に応えるために必要となるものでもあります。そのため、ボッシュは数多くの新機能を提供しているお客さまにそれぞれ合わせてカスタマイズしたソリューション開発をしています。そして私たちは、特に燃費の優れたドライビング戦略を設定するためにはエコモードを、特にダイナミックなドライビング戦略を設定するためにはスポーツモードを利用できるようにしました。先ほどお話した統合車両ダイナミクス制御向けには、ボッシュは計4つの異なるモードを開発しました。セーフティ、スポーツ、ドリフト、カスタムの各モードがあり、ドライバーは希望通りのセッティングを設定・保存し、それを活用することができます。

エンジニアリング能力:オンボードエレクトロニクスの設計

当然のことながら、車両内部や車両間のネットワークの構築やインターネットによって、電気・電子システム、コンポーネントや機能はさらに複雑化します。そして、こうした複雑さに対応していくためには、複雑なオンボード電気システムを最適に設定・制御できることが、自動車のエンジニアリング能力では特に重要となってきます。

車両のオンボード電気システムは、すべての車載電気・電子コンポーネントを結び付け、エネルギーと情報の分配を行います。パワートレイン、補助システム、セーフティ/アシスタンス/制御システムやその相互作用に関する長年の経験をベースに、ボッシュはオンボード電気システムや効率的なエネルギー管理の設定など、さまざまなサポートをお客さまに提供しています。また、最新のオンボード電気システムのシステムアーキテクチャの開発・最適化を進めながら、パワフルさとフェイルセーフ機能を兼ね備えたトータルシステムに適切なコンポーネントを組み込もうとしています。

未来の通信システムとなるCAN FD

車両ネットワーク化の主な前提となるのは、オンボードエレクトリカルシステムだけではなく、自動車の通信システムも同じように重要です。CANは長年にわたり、FlexRayや次世代のイーサネットなどの高性能バスソリューションと並び、安全で経済的な車両データ用通信規格であると考えられています。

ボッシュは1984年に自動車通信システムとしてCANの開発をスタートさせ、これが産業界にデビューするやいなや、ボッシュCANは1991年から量産が開始されました。1Mbit/sのデータ転送速度、メッセージあたりのデータワード長が8バイトという数値は、25年前では到底実現不可能と思われていました。しかし今では一般的に、この程度では十分とは言えないほどになってしまいました。つまり、多くのCANシステムがデータ転送能力の上限に到達してしまったのです。そのため、既存のCANシステムでデータスループットを高めるためのソリューションとして、ボッシュは2012年初めに、フレキシブルにデータ転送速度に対応できるCAN FDを導入しました。

CAN FDは既存のCANプロトコルを、以下の2つの方法で拡張しました。

  • まず、データフェーズの転送速度を1Mbit/s以上に引き上げました。
  • 次に、メッセージとして送信されるデータワードを最大64バイトとしました。

これによりデータペイロードが増大し、システムによっては、ソフトウェアのロード時間が短縮し、長いラインでも通信を大幅にスピードアップできるようになります。

ISO11898-1を補うために、CAN FDの標準化がすでに進められています。CAN FDは現行のボッシュCANプロトコルコントローラIPで完全にサポートされ、すでに多数のチップメーカーに供給されています。また、私たちはCAN FD対応の最初のマイクロコントローラを2013年末に市場に投入する予定です。

CAN FD対応のCANバス用テストおよび分析ツールは、すでにボッシュ子会社のイータス GmbHなどのツールメーカーから販売されていますので、CAN FDは最新の自動車や産業アプリケーションの要件を満たすことができます。

コネクティビティは私たちにとって、単なる相乗効果となるものではありません。ボッシュは自動車技術の分野に限らず、車両システムの限界を超えて、そのネットワーク化に取り組んでいます。私たちはコネクティビティの前提条件となる、将来も使い続けられる通信システムの開発に努め、お客さまのため、未来のモビリティのためにカスタマイズされたソリューションをご提供していくつもりです。

ご静聴ありがとうございました。

報道対応窓口:
Annett Fischer
Tel:+49 7062 911-79137

ボッシュ・グループは、グローバル規模で革新のテクノロジーとサービスを提供するリーディング・カンパニーです。2012年度の従業員数は約30万6,000人、売上高は525億ユーロを計上しています。また2013年初めからは、自動車機器テクノロジー、産業機器テクノロジー、消費財、エネルギー・建築関連テクノロジーの4事業セクター体制に移行しました。
ボッシュ・グループは、ロバート・ボッシュGmbHとその子会社約360社、世界約50カ国にあるドイツ国外の現地法人で構成されており、販売、サービス代理店のネットワークを加えると、世界の約150カ国で事業展開しています。この開発、製造、販売、サービスのグローバル・ネットワークが、ボッシュのさらなる成長の基盤です。
ボッシュでは2012年に約48億ユーロもの金額を研究開発に投じ、さらに全世界では4,800件以上の国際特許の基礎特許(第一国出願)を出願しています。私たちは革新的で有益なソリューションを提供し、そのすべての製品とサービスを通して、人々を魅了し、人々の生活の質を向上させることを目的にしています。この方針に基づき、ボッシュは全世界において人と社会に役立つ革新のテクノロジーを提供し続けていきます。それこそが「Invented for life」です。

ボッシュの起源は、1886年に創業者ロバート・ボッシュ(1861~1942)がシュトゥットガルトに設立した「精密機械と電気技術作業場」に遡ります。ロバート・ボッシュGmbHの独自の株主構造は、ボッシュ・グループの財務上の独立性と企業としての自立性を保証するものです。「株主(利益配当)」と「経営(議決権)」が完全に分離した企業形態によって、ボッシュは長期的な視野に立った経営を行い、将来の成長を確保する重要な先行投資を積極的に行うことができるのです。ロバート・ボッシュGmbHの株式の大半は非営利組織である公益法人「ロバート・ボッシュ財団」(持株比率92%、議決権なし)が保有しています。議決権の大部分は株主の事業機能実行機関である共同経営者会「ロバート・ボッシュ工業信託合資会社」が保有しています。残りの株式と議決権は創業家であるボッシュ家とロバート・ボッシュGmbHが保有しています。

さらに詳しい情報は
www.bosch.com ボッシュ・グローバル・ウェブサイト(英文)
www.bosch-press.com ボッシュ・メディア・サービス(英文)
を参照してください。