自動車機器テクノロジー Robert Bosch GmbH のプレスリリース(日本語訳)

ドライビングの未来:
電動化、自動化、ネットワーク化

フォルクマル・デナー
ボッシュ取締役会会長
フランクフルト国際モーターショー(IAA)の記者会見での講演
フランクフルトアムマイン、 2013年9月10日

本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。


ご来場の皆さま

フランクフルト国際モーターショーは、自動車メーカーはもちろん、ボッシュのようなサプライヤーにとっても数々の革新力を披露するまたとない機会です。それと同時に、このようなイベントでは、少なくとも2つの根本的な問いが自動車業界に投げかけられます。

  • 最初の問いは、未来の車はどのようにして走るのかということです。可能性として、電動化、自動化とネットワーク化が挙げられます。そして、ボッシュはこの問いに対する技術的な回答を示します。お互いに補完し合う多面的な回答もあれば、新たな市場の開拓や、少なくともマーケットシェアの向上をもたらす革新的な回答もあります。
  • 2番目の問いは、自動車業界はどこに向かうのかということです。アジア市場はこれからどうなるのか、欧州市場と米国市場をどうやって維持していくのかなど、こうした問題に対してボッシュは経済的な回答を用意しています。それも、先見的で多様な、社会的責任を果たす回答です。新興成長市場における存在感を高めることは、必ずしも既存の市場における存在感を低下させることにはなりません。中国のような国々のダイナミックな成長を生かすことは、話の半分にすぎません。残る半分は、欧州における近年の低成長をハイテクソリューションによって刺激することです。これを成し遂げるには途方もない創造性が必要ですが、それが私たちの欧州拠点の長期的な成功を確保するための、唯一の方法です。

自動車機器テクノロジーのさらなる発展についても、あるいは自動車業界全体のさらなる発展についても、ボッシュは革新的な道を歩みます。

ボッシュの成長:自動車機器テクノロジーが躍進

まず、私たちの業績をご覧ください。予想では、ボッシュ・グループは今年、2~4%の成長を記録すると見込んでいます。徐々に利益を改善していますが、まだまだ多大な努力が求められますし、ソーラー・エネルギー事業が依然として大きな負担となっています。ただ、年初の業績は低調だったものの、自動車機器テクノロジーセクターは躍進しています。同部門の2013年の売上高は、世界の自動車生産の伸びを上回る5%の成長が見込まれています。利益の改善につながる力が、まさに自動車機器テクノロジーセクターにあるのです。なお、今年の税引前利益率(売上高比)は約6%になると予想しています。

長期的な動向: グローバルサプライヤーの強み

次に、今年以降の見通しについてです。自動車市場の長期的な動向は、ボッシュのようなサプライヤーにも影響を及ぼします。この点に関して、いくつかの要点に絞ってお話したいと思います。

  • 私たちの予想では、世界の自動車生産は今後数年間で平均3%増加していくと考えています。これは経済危機以前の数年間と比べて1~2ポイント低い数字で、特に欧州では経済危機の影響が依然として残っています。それでも欧州における低迷は、北米をはじめ、なによりも中国での成長によって埋め合わせることができるでしょう。
  • 欧州の自動車市場は、少なくとも緩やかな回復の兆しを見せ始めていくはずです。その根拠の1つが、すでに9年という記録的な高さに達した乗用車の平均車齢です。 北米における平均車齢は11年で、それでも現地で需要が伸びているのは、経済的な追い上げの過程と見ることができます。一方、中国のような国は、はるかに大きな規模で経済的に追い上げています。中国の車両密度は、最近になってようやく西欧の10分の1に達しました。これを背景にして、中国はダイナミックな成長を続けていくでしょう。
  • 自動車の生産量は、新興成長市場においても増加していくと考えられます。 たとえば、ドイツと日本の企業はほぼ同じペースで現地生産比率を高めています。その割合は、2005年では生産全体の半分程度でしたが、2015年には3分の2に達する見込みです。このことが、グローバルサプライヤーにとって有利に働くことは、疑いの余地がありません。
  • 世界中で環境保護と事故防止に関する目標と基準がますます厳しくなっています。このことがパワートレインの電動化と運転の自動化を後押ししており、いずれも段階的に実現しつつあります。私たちは、電動化されたパワートレインを搭載した車両の新車登録台数が、2020年には1,200万台に達すると予想しています。その後、数字は急激に伸び、2025年には世界中で販売されるほぼすべての新車が、モバイルデータネットワークに接続されるようになっているでしょう。また、データの転送率が高まることで、危険な状況をcar-to-x通信経由でリアルタイムに警告できるようになるはずです。そしてこれは、自動運転のための重要な前提条件となります。

ボッシュの強み:ダイナミックな成長分野

これまで簡単にご説明したとおり、自動車業界は数多くの経済的・技術的な課題に直面していますが、ボッシュはこうした課題に対処するために必要な専門知識をすでに持っています。

  • 私たちは、95カ所の生産拠点と50カ所の研究開発センターからなるネットワークを構成し、 世界中のどこであろうと自動車業界のお客様のすぐ近くで、サポートしています。また、ボッシュで自動車機器テクノロジーに携わる3万6,000人のエンジニアのうち、今年の年末までに1万9,000人が欧州に、2,000人が北中南米に、そして約1万5,000人がアジア太平洋に配置される予定です。
  • 私たちの強力な技術的存在感は、数多くの成果をもたらしています。私たちはこれまでの10年間で、アジアの新興成長市場において平均を上回る成長を記録してきました。たとえば、世界の自動車生産に占める中国とインドの割合は、2003年に比べて3倍になっていますが、これらの国におけるボッシュの売上高は7倍に増えました。
  • そして、私たちがマーケットリーダーとなり、特に技術革新力でリードしているのが、技術的に最もダイナミックに成長するパワートレインとセーフティシステムの分野です。燃料噴射システム、ブレーキコントロールシステムとセンサー技術の各分野で、ボッシュはトップの地位を築いており、これを支えているのが、極めて正確で、なにより独創的な最先端の生産プロセスです。たとえば私たちは、ガソリン直接噴射システムの微細なノズルホールを開口するために、超短パルスレーザーを用いています。また、天然ガス(CNG)パワートレイン用コンポーネントについても、私たちは世界最小のインジェクターを生産するなど、積極的な事業展開を続けています。2012年に私たちは100万個のユニットを生産し、2013年には130万個を超える見込みです。さらに、ドライバー アシスタンス システムも極めて力強く成長しています。この分野の市場規模は、2013年から2017年にかけて毎年3割増のペースで大きくなるとみられていますが、ボッシュの成長はさらにそれを大幅に上回ると考えています。

未来において重要なこと:革新力のグローバルネットワーク

ボッシュは未来を確かなものとするために、自動車業界における決定的な成功要因に重点を置いています。その重点とは、品質、国際性、革新力の3つです。

  • 私たちは東欧やアジアに新たな拠点を設置するなど、世界規模の開発と製造のネットワークを拡大しています。アジア大洋州地域だけでも、私たちは2011年から2013年にかけて、およそ28億ユーロを投資することになるでしょう。この地域で最も重視しているのは中国で、2013年だけでも南京、東海、成都の3カ所に計3億ユーロを投じ、新たな自動車機器テクノロジー拠点を開設しました。さらに、「現地で必要なものは現地で開発する」という私たちの戦略は、中国において極めて重要な役割を演じています。その1例が、ドイツと現地のメーカーとが協働し、中国市場向けに特別に設計したナビゲーション システムを開発したことです。
  • 私たちは新興成長市場向けの低価格ソリューションだけでなく、技術的進歩の面でもリーダーとしての地位を維持することに力を入れています。既存の市場でも私たちの拠点が成功し続けていくためには、これは欠かすことのできない努力です。そのために、私たちは約3億ユーロを投じて、シュトゥットガルト近郊のレニンゲンに新たな研究センターを建設しています。こうしたことを通じて、私たちは車両の電動化、自動化、ネットワーク化の分野において、自らのエレクトロニクスとセンサー技術を駆使しながら、自動車の未来を形作るために大きく貢献していきたいと考えています。

電気駆動装置:革新的なビジネスモデルの開発

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンにおいて私たちが成し遂げた技術的な進歩は、eモビリティへの道筋においても大変意義があります。現在、内燃機関の燃費は2012年と比べても約20%改善されています。そして、よりいっそうの低燃費走行を可能にするさらなる潜在力を活用しようとしています。たとえば、私たちはスタート/ストップシステムを拡張し、コースティングアシスタントを作り上げました。この目的の先にあるのは、前方のコーナーや市街地での制限速度について事前にドライバーに警告するセンサーです。高速道路を走行する場合は、このシステムをネットワーク化することで、実際の走行条件下で燃費を最大15%向上させることができるため、燃料にかかる費用だけでなく、CO2 排出量も抑えられます。さて、ここでeモビリティに話を戻しましょう。効率改善に寄与する各種技術をもってすれば、EUが2020年に導入を予定している厳しいCO2排出規制を十分にクリアできるでしょう。ただ、これを実現するためには、車両クラスに応じてさまざまなレベルで車両の電動化を進める必要があります。また、ハイブリッド駆動に関する私たちの製品群も、この目標達成の大きな力となるはずです。私たちはすでに中型車両向けのハイブリッド駆動システムを実現しています。その1例がブースト回生システム(BRS)です。このシステムは、48 Vジェネレーターとコンパクトなリチウムイオンバッテリーによって、ブレーキング時に大量のエネルギーを回生するため、7%の燃費向上という大きな効果を低コストで達成することができます。

また、油圧式ハイブリッド、ストロングハイブリッドやプラグインハイブリッドに加え、市販車のフィアット500eに提供したような純粋な電気駆動装置を用いて、主要なソリューションを具体的に展開しており、ボッシュは2014年末までに電動パワートレイン関連の30件の量産プロジェクトに携わる予定です。これらのプロジェクトの成果はただちにマスマーケットに結びつくことはないにしても、エモーショナルな意味を含めて、新しい時代の到来に向けた道ならしになると考えています。パワートレインの電動化は、静粛性や特に低速での力強い加速など、これまでになかったドライビングを体験できるようになるでしょう。今年のフランクフルトモーターショーに出展されているポルシェ・パナメーラも、ボッシュのプラグインハイブリッドテクノロジーを搭載した1例です。 こうした車両はユーザーにとって新たな体験となり、ハイブリッド市場をさらに発展させる活性剤となるでしょう。

私たちは進歩を成し遂げたとはいえ、事業と技術の両方に関して取り組むべきことが依然としてかなり残っています。リチウムイオンバッテリー分野における私たちの目標は、コストを少なくとも半減し、エネルギー密度を少なくとも2倍に引き上げることです。そのために、私たちは日本側のパートナーである株式会社GSユアサ、三菱商事株式会社の2社と合弁事業の立ち上げについて合意しました。なお、合弁会社の設立には独占禁止法に関する関係官庁の認可取得が前提となります。合弁会社の本社はシュトゥットガルトに置かれる予定です。この事業を通じて、エレクトロニクスとセンサー技術に関するボッシュの専門知識と、電池セルの化学組成に関するパートナー企業の深い知識を結び付けることができるだけでなく、ボッシュの日本市場へのアクセスもいっそう強まると考えています。

eモビリティはボッシュにとって、未来の自動車用駆動システムという存在だけにとどまることはありません。私たちはeBikeとeスクーター向けのシステムをもとに、他の方法でもeモビリティを体験できるようにし、大都市圏におけるマルチモーダル交通コンセプトをサポートしようとしています。また私たちは、一貫性のある社会基盤の提供にも関わっています。たとえば、ボッシュの子会社のBosch Software Innovationsは、さまざまなプロバイダーの充電スポットを電気自動車ユーザーが利用できるようにするeローミングを実現可能にしました。同社はすでに、自動車メーカーと電力グループがベルリンに設立したコンソーシアムのBerliner Hubject GmbH向けに、そのためのソフトウェアプラットフォームを開発しました。また、Bosch Software Innovationsは充電スポット運営事業者向けに、対応するスターターパッケージの提供を始めています。ボッシュは特にeモビリティの分野で革新的なビジネスモデルの開発に重点的に取り組んでおり、これは今までの製品事業の範囲を超えるものとなっています。

エネルギーを節約し、命を守る:ボッシュのiBooster

その一方で、ボッシュの豊富な取扱製品からも、この新しい種類のドライビングに対応できる新製品が数多く登場しています。iBoosterのような電子制御で作動するブレーキ ブースターもその1つです。iBoosterは内燃機関からの負圧に依存することがないため、モーター走行時でもブレーキブースト力を得ることができます。車両仕様にもよりますが、iBoosterを使用することにより、電気自動車の航続距離を最大20%延ばすことができます。また従来のバキューム・ブースターと比較して、約3倍の早さでのブレーキ加圧が可能となり、例えば車速30 km/hから減速する場合、制動距離を最大1.5 m短縮することができます。横滑り防止装置ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)の自動緊急ブレーキでは、歩行者との車両前方での衝突の3分の1を未然に回避できますが、iBoosterとの組み合わせにより、こうした衝突を最大で半減させることも可能です。これは命を守る技術、つまり「Invented for life」な技術なのです。

自動運転: 新しいセンサー、新しいシステム

このような革新技術から明らかなように、私たちは安全で持続可能なモビリティの実現を目指しています。ただ、事故のないドライビングへといたるには、さらなる自動化が必要となってきます。なぜなら、交通事故全体の90%以上は人為的なミスに起因しているからです。この事実だけでも、ドライバーの負担軽減に取り組むための十分な根拠になります。ボッシュは、この分野において他のどのサプライヤーよりも先駆的なソリューションを開発してきました。その2つの例が、ABSとESCです。現在、私たちはドイツの公道で自動運転のテストを行っている唯一の自動車機器サプライヤーです。ボッシュ・グループでは5,000人を超えるエンジニアが、世界各地でセーフティ/ドライバー アシスタント システムの将来に向けて取り組んでいます。私たちは、来年市販車に搭載されるステレオビデオカメラなど、センサー技術の分野で進歩を果たしましたが、それだけでなく、さまざまな新しいアシスタンスシステムの開発も行っています。以下に述べるシステムが示すように、私たちはまず、3つの交通状況において自動運転を実現したいと考えています。

  • まずは駐車時です。2015年に、ボッシュは拡張機能付きパークアシスタントを市場に投入します。このシステムは窮屈なガレージへの車庫入れをリモコンで制御し、将来的には、360°全方位ビデオセンサーを備えた車両が駐車場内の空きスペースを自動で探すようになります。
  • 2つ目は渋滞時です。ボッシュは早ければ2014年に渋滞アシスタントを導入する予定です。このシステムは、渋滞時にステアリング操作に介入し、車両が車線からはみ出すのを防ぐ役割を担います。将来はこのシステムをさらに発展させ、自動車線変更機能を付加した渋滞パイロットの実現を目指します。
  • 3つ目は、高速道路での自動運転走行の方向性がすでにはっきりしているこということです。その実現に不可欠なのは、ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)と車線維持支援機能を組み合わせることです。この2つの機能を組み合わせたハイウェイパイロットは、2010年代末までに商品化されていく予定です。

ドライバーが高速道路以外でもステアリングホイールを操作しなくてもすむ完全自動運転のビジョンを実現するためには、さらなる多大な努力が必要となります。私たちは、完全自動運転を可能にするには車両のネットワーク化が不可欠だと考えています。将来のセーフティ機能が大がかりなものになればなるほど、車車間通信の必要性がますます高まってくるからです。そうしたセーフティ機能を作動させるには、通行車両の少なくとも半数がお互いリアルタイムにデータを共有できなくてはなりません。私たちは現時点で捉えている市場動向をかんがみて、これが今後10年以内に実現可能になると予測しています。

車両のネットワーク化:より安全に、より多くのサービスを

車両のネットワーク化を図る目的は、事故のない運転だけにあるわけではありません。運転をより快適にし、提供されるサービスの範囲をさらに広げることも目指しており、この分野に関してもボッシュは多彩なソリューションを開発してきました。

  • その1つが「コネクティビティコントロールユニット(CCU)」です。ボッシュがCCUと車両の状態モニターを組み合わせて実現したのが、フリート運用者向けの適時のエラー分析サービスと、無駄のない計画的メンテナンスサービスです。このCCUを2014年に大手リース会社が初めて導入することになっています。
  • 2つ目は、オンラインポータルのドライブログです。このプラットフォームは、車両関連のコストと提供されるサービスの概要をドライバーがオンラインで把握できるようにするためのものです。すでにオンラインポータルがオープンし、月間25万人近いビジターが訪れており、この数はさらに増える見込みです。ドイツ自動車連盟(ADAC)の会員は誰でも今すぐ、厳選されたドライブログ機能を利用することができます。
  • 3つ目はmySpinです。これはスマートフォンを車両に統合するためにボッシュが提案する新しいソリューションで、別の言い方をするなら、車両にインターネットを安全に持ち込む技術です。このmySpin経由で、スマートフォンのアプリがセンターコンソールのディスプレイに表示されます。

こうしたソリューションは、モバイルインターネット接続を極めて重視する購入者に対して、車を若々しく魅力的に見せるのに大きく寄与しています。また、mySpinはボッシュのユニバーサルなアプローチを示しています。車両により多くの機能が搭載されるほど、操作はより簡単であるべきだからです。自由にプログラミング可能なインストルメントパネル分野のマーケットリーダーとして、ボッシュはゼネラル・モータース(GM)向けに、自然な音声入力で操作できるドライバーインフォメーションシステムを開発しました。これはドライバーが同乗者と会話するような調子で話しかければ応えるシステムで、まずキャデラックに採用されました。それに続いてオペルも、今回のショーで披露される新しいインシグニアに別のバリエーションを搭載しています。

ドライビングの未来:開発の道筋の収束

それでは話をまとめましょう。私たちのエンジニアはドライビングをより快適に、より安全に、より経済的にするためにさまざまな事柄に取り組んでおり、それが何であれ、彼らの努力が人々の生活の質の向上に寄与しています。自動車開発の主な道筋は、電動化、自動化、ネットワーク化の結び付きにつながっています。ボッシュはこれら3つの道筋を速いペースで前に推し進めています。そしてこのことが、特に欧州において新たな成長の機会を生み出すことになると考えています。


このプレスリリースは2013年9月10日に Robert Bosch GmbH より発行されました。原文をご覧ください。>