第41回 東京モーターショー 2009

第41回 東京モーターショー 2009

ボッシュ自動車機器テクノロジー:
グローバル市場の変化に対応準備は万全

ロバート・ボッシュ GmbH
取締役会メンバー
自動車機器テクノロジー統括部門長
ベルント・ボア

第41回東京モーターショー2009
プレスブリーフィング

2009年10月22日

ご来場の皆さま

今年の東京モーターショーは過渡期に開催されています。 世界経済が回復に向かう中、経済不況に陥るずっと以前から自動車市場は変化を始めていますが、この変化で明らかになったことがあります。 長期的な成功を確実に手にするために、自動車業界は成熟市場と未来の成長地域の両方に重きを置いてバランスを取らなければならないということです。今日みられる兆候のすべてにおいて、未来の成長を牽引していくのはアジアの新興市場ということが示唆されています。 2035年には、世界の乗用車生産台数は現在の倍になると見込んでいるのですが、新車の大多数については、インドや中国に出回っていくのではないかと考えています。

このことは自動車産業にとって何を意味しているのでしょうか? 新興市場にシフトしていくことで、カーメーカーとサプライヤーは構造の転換を迫られ、戦略の再構築が必要になってきます。車の小型、低価格化ニーズがそのひとつです。 もうひとつは、世界各国の政府機関が排気ガス規制を強化し、燃料効率の重要性が高まっているということです。 さらに、石油埋蔵量の限界と燃料価格の高騰により、カーメーカーは自動車の電動化に向けての開発活動に力を入れていこうとしています。世界各国で車の走行台数が増加してきているため、今まで以上に乗員の安全性も重要になってきます。

これらの状況すべてに対応していくことは簡単ではありません。 けれどもボッシュは、成熟市場においても新興市場においても、対応する準備を十分整えています。 経済不況が自動車産業に大きな打撃を与えたこと、そして2009年がボッシュの歴史において最も困難な年のひとつであったということは間違いありません。 それにもかかわらず、私たちは未来を形作るという重要な課題に焦点を合わせ続けています。つまりボッシュは、スローガンである「Invented for life」のとおりに、変わることなく革新的な技術を開発し続けていく、そういう企業なのです。

困難な状況を乗り越え、自信を持って未来へ

このことについてさらに詳しくお話する前に、私たちの現状を簡単に説明させていただきます。 ボッシュ・グループの従業員数は2009年末には全世界で27万人と予測され、そのうち16万人は自動車機器テクノロジーセクターに従事しています。 日本の従業員数は7,500人で、そのうちの約6,300人は自動車機器テクノロジーセクターで働いています。

経済不況はボッシュの業績にも明確に表れています。 2009年、ボッシュ・グループの売上高は15%減少し、約380億ユーロになると予測しています。 その結果、営業利益はマイナスになると見ています。 自動車機器テクノロジーセクターでの売上高の減少は、ほぼ20%に達する見込みです。 この状況は日本でも同様で、自動車機器の売上高は大きく落ち込み、前年比でおよそ28%減となっています。

幸いにも、状況は安定しつつあるという兆候が見えています。私たちはボッシュ自動車機器テクノロジーセクターの2009年第4四半期売上高は、前年同期と比べて増加すると予測しています。2007年同期と比較した場合には、依然として20%も少ない状況ではありますが、このような数字の改善は来年度の成長の基盤となると見ています。ここ数カ月、希望を与えてくれる兆しも見えつつあります。受注が上向きに転じ、新規の大型プロジェクトも複数獲得できています。しかし全体として見ると、今回の経済不況以前の2007年の水準に戻るには2012年までかかると予測しています。

ボッシュの長期的な成功を確かなものにするため、私たちは利益と流動性を確保していくことが必要です。支出を減らすと同時に、未来を確実なものにしていく必要もあります。長期的な視野に立ち、企業としての独立性を保ち、財務を安定させること。この経営理念によって、ボッシュは今まで競合他社と比較して確固たるポジションを維持してきました。そしてこれからも、ボッシュは際立った存在となっていくのです。

今後の課題に対応する準備は万全

この経営理念によって、ボッシュは、運転をより安全で気軽なものに、そして環境に優しくて経済的なものにする革新的技術を開発していくことができるのです。この経済不況下でも、自動車機器テクノロジーの研究開発費は維持しています。2009年の投資額は約30億ユーロと高レベルで、燃費の向上、CO2 やその他の有害物質の排出量を低減するといったさまざまな先進的プロジェクトに投じています。

運転をより経済的で環境に優しく

ボッシュはさまざまな方法で、運転をより経済的で環境に優しいものにすると同時に、成熟市場と新興成長市場の両方の顧客のさまざまなニーズにも応えています。

まずボッシュは、従来型のパワートレインをさらに改善していきます。電気自動車に移行するまでの今後20年間は、内燃機関が最適な選択肢であり続けると考えているからです。改良型直接噴射システム、ダウンサイジング、ターボ過給、スタート/ストップ・システム、超高効率オルタネータを採用することで、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃費は30%低減することが可能です。 特に、ディーゼルエンジンは手に入れやすく手ごろな価格なので、アジアの新興市場に大幅に普及し、特にインドで大きな成果を上げると見込んでいます。

ボッシュはまた、燃費をより一層低減することが可能なハイブリッド技術の分野にも力を入れていきます。 ハイブリッド車は、短距離でストップアンドゴーの多い市街地走行が特徴である日本の交通事情に特に適しています。 ボッシュのハイブリッドシステムは2010年に量産を開始し、ポルシェ・カイエンとフォルクスワーゲン・トゥアレグのハイブリッド車に搭載される予定です。 また最近ボッシュは、プジョーシトロエン(PSA)と戦略的パートナーシップ契約を結び、ディーゼル・ハイブリッド車向けに電気モーターとパワーエレクトロニクスを開発、製造、供給することにもなりました。

さらにボッシュは、電気自動車の普及に向け、別の分野でも努力を重ねています。最近、電気駆動技術の開発を目的として設置した特別なビジネス・ユニットに、2009年末までには最大500人のエンジニアを配置する予定です。 さらに、ボッシュとサムソン SDI との合弁会社である SB リモーティブでは、リチウムイオン電池技術を自動車に応用するための開発も行っています。SB リモーティブでは、約400人の従業員がハイブリッド車と電気自動車用リチウムイオン電池の開発に従事しています。リチウムイオン電池は、いかなる道路状況下でもパーフェクトに機能し、電気自動車が十分な距離を走行するのに必要な電力を蓄積できなければなりませんし、そのコストも大幅に下げる必要があります。

主な課題としてはこういったことがあげられますが、SB リモーティブには課題を克服する力があると、カーメーカーからは信頼を寄せていただいています。 ボッシュのリチウムイオン電池は2011年には量産を開始され、BMW の「Megacity Vehicle」に搭載される予定です。ボッシュは現在、複数のカーメーカーとも非常に期待できる商談を行っています。 SB リモーティブは、リチウムイオン電池を大規模に製造していくことで、今後増大するニーズに応えることができるだけでなく、スケールメリットの恩恵を受けることもできます。2012年末には、ハイブリッド車と電気自動車用リチウムイオン電池の生産能力は60万キロワット時以上になると見込んでいます。

運転をより安全に

個人のモビリティが増してきているという観点から、より環境に優しい駆動技術は不可欠なのですが、運転をより安全にすることも必要になってきています。 世界中で小型車の需要が高まっている反面、これらの車には依然としてほとんど先進的なセーフティシステムが搭載されていないということから、安全性への取り組みは非常に重要なのです。

横滑り防止装置(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール:ESC)はセーフティシステムのひとつです。 数々の調査結果から、横滑り事故は ESC によって最大80%防げることがわかっています。 2009年には日本とドイツの調査によって、ESC が人命を救助するものであるということが、納得できる結果として新たに示されました。 この調査では、日本ですべての車に ESC が装備された場合、年間に発生する死亡事故100件中6件は防止できると結論づけています。

現在、日本における ESC の装備率は世界平均と同レベルの約34%にすぎません。ヨーロッパの57%、北米の68%と比較すると約半分です。しかし、日本の「高度道路交通システム(ITS)」と「先進安全自動車(ASV)」の活動の結果から導入されることになると考えられる対策や施策により、日本での ESC 装備率は2014年までに67%に上昇すると見込まれています。現在ボッシュは、日本の ESC とアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)市場ですでに確固たる地位を築いており、マーケットシェアは24%に達しています。

ボッシュはより一層前進していくために、安全性強化技術の幅を広げていきます。 2010年には、アウディと協力して衝突予知緊急ブレーキシステム(PEBS)の量産を開始します。 衝突予知ブレーキアシストと衝突予知警告システムを組み合わせた PEBS は、障害物を検知し、事故のリスクを評価し、ドライバーが警告に反応しない場合は自動緊急ブレーキを作動させます。 このシステムは追突事故を4分の3の割合で防止することができます。

同様に乗員安全の分野でも、私たちは引き続き日本を研究開発における重要なパートナーだと考えています。モーターサイクル用 ABS は、専門家がモーターサイクルに使用可能なセーフティシステムとして最も効果があるとみなしています。すでにボッシュは現在、モーターサイクル用 ABS のコンピテンスセンターを日本に設置しています。また、日本や世界の市場における ABS の大幅な需要増を見込んで、ボッシュは横浜の開発拠点と北海道の女満別にあるテストコースを拡張しています。総額78億円を投資するこれらの拡張プロジェクトにより、日本はドイツ国外では最大のブレーキシステムの開発拠点になります。

現地向けに現地で製品開発

この投資は、革新的技術を、それぞれの地域でそれぞれの地域市場のために開発することが最善であるというボッシュの信念を反映したものです。実際に私たちは、事業を展開しているすべての国にしっかりとした根をおろす労は惜しみません。世界中すべての地域で顧客と持続的なパートナーシップを結ぶだけでなく、ボッシュの研究開発と製造を地域で行うことに重点的に取り組んでいます。

その結果、ボッシュの自動車機器テクノロジーセクターでは、エンジニアの約30%がアジアに配置され、日本では約1,300人が働いています。この戦略は非常に成功しており、成熟市場の顧客からも新興市場の顧客からもパートナーとして信頼をいただいております。インド・タタ自動車の超低価格車両 Nano 向けにボッシュが供給したシステムやコンポーネント一式は、ボッシュの国際エンジニアチームが完成させた一例です。

市場の変化 – 日本のカーメーカーにチャンス

まさにボッシュは、世界の主要市場において、本日私が言及いたしました構造変化を脅威としてとらえるのではなく、将来のチャンスとしてとらえているのです。 ボッシュは、人と社会に役立つ先進技術をそれぞれの地域のお客さまに提供し、保有するノウハウと経験で貢献していくことにより、技術革新の新時代に絶好のポジションを確立していきます。

ご清聴ありがとうございました。