第42回 東京モーターショー 2011

ボッシュ自動車機器テクノロジー:
既存市場と新興市場における革新の推進

ベルント・ボア
自動車機器テクノロジー統括部門長
於:東京モーターショー
2011年12月1日

ご来場の皆さま、

前回の東京モーターショーが2009年に開催されてから、これまでにさまざまな出来事がありました。世界経済、そして世界の自動車産業も深刻な経済危機からの立ち直りを見せながらも、2011年には世界各地で政治的・経済的な進展が新たな不確実性を生み出しています。このような情勢の中で日本は3月の大地震と津波、さらに原発事故からの再建という大きな課題に直面しているわけですが、日本とその国民の苦境への対応の見事さは際立っていると感じさせられます。

今春のことでは、ボッシュ・グループが国際的に事業を展開していることがボッシュにとって大きな財産であることを改めて感じさせられました。現地や各国の人材を登用し、最大限の対応も行うことができました。今後も複雑な状況に対処しなければならない場合には、この世界的な事業展開が当社最大の強みとなるでしょう。

世界の自動車産業は次のような問題やニーズに対応するため、今後数年のうちに重要な決定を下さなければならなくなります。

  • 燃費の節約と排気ガス規制の強化
  • e-モビリティへの移行
  • 事故のない運転という構想
  • インターネット世代にとっても魅力ある自動車を作り続けること

本日はこれらの課題に対するボッシュの取り組みをお話しさせていただこうと思います。その前に、まずは現在の状況をお話させていただきます。2011年第1四半期以降、世界経済は冷え込んでいます。大きな負債を抱える諸国は国家財政の整理統合を行っていますが、これが成長を鈍らせています。また、新興自動車市場も最近は減速傾向にあります。こうした状況にも関わらず、アジアの新興市場が先進諸国に追い付つくまでの過程はまだまだ続くと予想されます。2011年の自動車生産は世界全体として約4%成長し、そして2012年には3~5%の成長が期待されています。

こうした状況を踏まえ、2011年度のボッシュ・グループの売上高は2010年度の473億ユーロを上回り、初めて500億ユーロの大台に乗ると確信しています。自動車機器テクノロジー部門の取引額だけをとりますと、2010年の281億ユーロと比較して、300億ユーロ以上に達する見込みです。ボッシュは将来に向けて多額の投資を行う姿勢を変えず、自動車機器テクノロジー部門だけでも今年度は研究開発に約33億ユーロを投資していきます。

2011年の成長はグループ全体の従業員数にも反映されます。本年度、約1万5,000人が新たにボッシュ・グループに入社する見込みであり、従業員数は約30万人に達します。自動車機器テクノロジー部門では、従業員数は約1万人増え、およそ17万7000人となります。

春に大震災を経験したにもかかわらず、2011年の日本での売上高は2010年に匹敵するレベルで、約3,300億円に達する見込みです。日本のボッシュ従業員数も8,000人前後で落ち着いています。

ところで、2011年はボッシュの日本進出100周年にあたる節目の年です。通常の状況下であれば100周年を祝って記念の行事を開催するところでしたが、大震災が発生したため、日本のボッシュ・グループは祝典をキャンセルし、その費用を被災地の支援に充てることにしました。6月から11月までボッシュの従業員が被災地の清掃・復興ボランティア活動に参加したほか、ボッシュは義援金の寄付、コンテナハウスや電動工具の寄贈なども行っています。

未来に向かって前進しながら、日本における私たちの活動は、ボッシュ・グループの世界規模の開発と生産のネットワークの中で、重要な役割を果たし続けます。2011年末までに1,200人のボッシュのエンジニアがここ日本に配属される予定となっており、横浜事務所はドイツに次いでアクティブ・セーフティ・システムの研究開発拠点としては最大規模です。また、モーターサイクルの安全性を向上させるためのグローバル・コンピテンスセンターとなっており、横浜事務所のエンジニアたちが近年、世界最小・最軽量のモーターサイクル用ABSを開発しました。

この開発はモーターサイクルの安全性の向上に大きく寄与し、この技術力は業界でも高く認められています。世界規模の自動車市場で成功を収めただけではなく、安全に関する賞も授与されました。

日本でのボッシュの開発活動はグループ全体の戦略を反映したものとなっています。ボッシュは地域的な強みを活かし、互いのノウハウと市場戦略情報から恩恵を受けられるグローバルなスペシャリスト・ネットワークを構築しています。世界の主な経済地域に50カ所設けられた開発センターでは、ボッシュのエンジニアたちが多様性のあるグローバルな作業チームを構成し、新興国の市場と既存市場を視野に入れた専用ソリューションの開発に日々取り組んでいます。

こうしたことは、ボッシュが日本のOEMをサポートするために最適な位置にあることを示すものですが、それは日本国内にとどまらず、グローバルな市場に対しても力を発揮します。特に日本のカーメーカーがその生産を拡大しているアジアの成長地域で、ボッシュ自動車機器テクノロジーは市場での存在感を増しています。全世界に合計2万9,000人いるエンジニアのうち、今年末までに1万人がこの地域に配置されるほか、2011年から2013年までの間にボッシュはこの地域に約18億ユーロ以上を投資する予定です。

アジアの新興国が成長を続けるのと同じく、小型・低価格車両の需要も増加していくでしょう。この傾向に対応すべく、ボッシュは各地のニーズをカバーし、手頃な価格で提供を可能にする技術の開発に焦点を当てています。例えば、こうした努力により、3年間でドライバーアシスタンスシステム用レーダーセンサーのコストが半分に低減する見込みです。ボッシュの中国市場向けの低コスト・パークパイロット・コンセプトは大きな成功を収め、先日には現地のニーズに合わせたナビゲーションシステムを導入しました。

またボッシュはディーゼル・システムのコスト削減にも力を入れており、今後5年間でコストパフォーマンスの優れたソレノイドバルブインジェクター式噴射システムのシェアを現行の6割弱から8割近くまで引き上げる計画です。現在、ボッシュのディーゼル・システムの3分の1がアジアで販売されています。

ボッシュの大きな目標のひとつは、ボッシュの自動車機器テクノロジーを世界のどこでも手ごろな価格で提供できるようにすること、そしてもうひとつの目標は、クリーンで経済的な走行を実現すると同時に、安全で快適な製品を世に送り出すためにボッシュのテクノロジーの改良を継続的に続けることです。これは、私たちのコーポレート・スローガンである“Invented for life”に基づいています。

ボッシュが持つ広範囲の技術を駆使すれば、ディーゼル/ガソリン・エンジンの燃費をさらに30%削減することができます。小型化されたエンジンのターボチャージャーはその最たる例のひとつで、これはマーレ社との合弁企業であるボッシュ・マーレ・ターボシステムズの中心事業です。このシステムは年々厳しさを増す燃費や排気ガス規制への対応に寄与するだけでなく、ボッシュが提供する経済性の高い直噴システムやポート噴射システムのマーケット拡大に貢献します。そこで、ボッシュは2013年に、2010年の3倍に相当する700万ユニットのガソリン噴射システムを販売する計画を立てています。また、コモンレール・ディーゼル噴射システムの販売ユニット数も900万台から1,200万台に引き上げることも予定しています。

ただ、従来技術を発展させていくことはボッシュの課題の半分でしかありません。ドライバーアシスタンスから完全自律走行への移行や、e-モビリティへの移行など、新たな技術の需要にも対応しなければならないからです。

ボッシュは年間4億ユーロをe-モビリティに投資し、モーターやパワーエレクトロニクスから補助システムに至るまで製品の完全なポートフォリオを提供しています。私たちは、e-Bike市場へも参入し、成功を収めています。今年度は7万ユニットを生産しました。さらにボッシュは、リチウムイオンバッテリー開発を行う合弁会社、SB LiMotiveを設立し、パワートレインの電動化へ向けて多くの目標を達成しており、さらに重要な要素の適用範囲の拡大とコスト低減を目指しています。2013年までには13のカーメーカーと21のプロジェクトを進める予定になっています。なお、現時点でボッシュのハイブリッド・テクノロジーはすでにポルシェ、フォルクスワーゲン、プジョーの各車両に採用されています。こうしたことからもおわかりいただけるように、ボッシュは電気化の将来に向けた準備を着々と進めています。

今後5年以内に電気自動車の普及が急激に広がるとは思われませんが、本格的な普及の前に暫定的なソリューションとして受け入れられる可能性は十分にあります。例えば、特に大都市での通勤用として、小型電気自動車には大きな将来性があります。そのため、壁面のコンセントから簡単に充電できるバッテリーを利用したプラグインハイブリッドの需要の増加が予想されます。都市での通常の移動には電気を利用し、長距離の移動は補助のディーゼルやガソリン・エンジンで行うというわけです。

世界各地の道路を走行する車両の数が増えれば増えるほど、安全走行の重要性も大きくなります。新規登録車両に適用される規制に後押しされ、ボッシュが初めて市場に投入した安全システムの装備率は上昇しています。世界の新車へのアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の装備率は2010年には75%でしたが、2015年までには90%に上昇する見込みです。同時期に、横滑り防止装置(ESC)の装備率は40%から60%へ上昇すると見込まれています。日本では2012年より新型車へのESC装備が義務付けられますが、ここでも日本のOEM各社に対してその国内外事業をボッシュがサポートしています。現在日本のメーカーが生産している車両の30%以上には、ボッシュのESCシステムが搭載されています。

事故のない自律走行という構想を実現できる技術は今後10年以内に開発がさらに進みます。まず路上での停止・発進をサポートするレーダーとビデオセンサーに基づくアシスト機能にはじまり、徐々により複雑な状況のサポートを提供できるようになります。この分野にボッシュは600人以上の開発要員を投入しています。自律走行実現への道は、現在800人以上の開発者が従事している電気自動車への移行に匹敵するものと言え、ボッシュは自動車業界が直面する構造変化に自信を持って取り組んでいます。

経済的、そして技術的な課題に重点的に取り組む一方で、社会的な変化への注意も怠ってはなりません。車両のネットワーク化は、インターネット世代の人々が購入を決定する際の重要な要素であることに疑いの余地はありません。そこで、ボッシュ自動車機器テクノロジー部門はインターネットによるモビリティ・ソリューションの考案に全力を注いでいます。

私たちのインターネット活動は、ドライバーが情報を得るためのソーシャルメディア・プラットフォームを含む多方面に渡ることはもちろんのこと、車両相互の、または交通インフラとのネットワーク化にも重点的に取り組みます。ボッシュは、e-モビリティ・エコシステムも開発しています。実際に、私たちはすでにシンガポールにおいてモノとサービスのインターネット、Web 3.0をベースとした完成されたビジネスモデルのシステムを導入しています。この取り組みは今年6月に始まりました。シンガポール内の充電ステーションは今年末までに約40カ所に設置され、その後もさらに増設する計画です。このプロジェクトの中核となるのは、ドライバーが充電ステーションの場所を検索・予約できるサービス・プラットフォームです。これにより電力サプライヤー、駐車場運営者、OEM各社、貨物車両管理業者などすべてが参画できる環境が作られるだけでなく、ドライバーにとっては電気とサービスに一定の額を支払うだけという、非常にシンプルなシステムとなります。確かに、このプロジェクトはモビリティの未来の縮図を提供していると言えるでしょう。

経済状況の中で、次第に大きくなる不確実性に適応するために、ボッシュはあらゆる努力を惜しまず進んでいます。自動車産業は、不安定なビジネス環境の中でも大きなイノベーションに焦点を合わせた取り組みを行わなくてはなりません。イノベーションを生み出すためのメーカーとサプライヤー間のパートナーシップは常に信頼関係がベースとなりますが、特にこうした不確実性のある状況下においては、信頼関係はこれまで以上に重要となってきます。そしてボッシュは言うまでもなく、パートナー企業から信頼を置いていただける企業なのです。

ご清聴ありがとうございました。