《審査員総評》

短い募集期間の中で、質の高い応募を何件もいただき、大変感謝しております。

初回ながら、蓋を開けてみれば予想を上回る応募数をいただいたアワードとなりました。

部品メーカーの視点では中々出てこない発想や感性が見受けられ、提案として興味深いものが多数ありました。もちろん、発想を実現する上では、超えなければいけないハードルは多数存在しますが、今回の募集はあくまで「アイディアの募集」ですので、十分なレベルであったと評価しております。

ただ、全体的に提案時のリスク背反をどう埋めていくかという考察が不足しておりましたので、その点についてはご留意されるとよいかと存じます。

本アワードをきっかけに、少しでも多くの皆様に「ミライのクルマをソウゾウする」ことに興味をお持ちいただけたなら幸いです。

本アワードが今後も継続する際には、より一層革新的なアイディアをご提出いただけることを期待しております。

《大賞》

吉木 均さん

「日本を変える救世主~クリーンディーゼルの魅力と日本における市場戦略~」

東京工業大学 工学部 機械知能システム学科 4年生 吉木 均さん

《作品概要》

識者の間では、クリーンディーゼル技術の性能と将来性は誰もが認めるところとなっています。走行性能と環境性能を両立した、実に画期的な、普及させていくべき次世代の技術です。

しかし一般的な人にはどうでしょう。「低速トルクがね…」「排ガスがクリーンでね…」と言われて「素敵!」とは誰も思いません。

多くの人が抱く「エコ?ハイブリッドじゃダメなの?」という疑問にトルク云々抜きには反論できておらず、なかなかクリーンディーゼルの魅力は響いていません。

燃費30km/Lが珍しくない今、クリーンディーゼル車は魅力的なクルマたりうるでしょうか。

私は本作品で、日本市場におけるクルマの魅力を諸元値ベースの独自係数により定量的に評価し、それをもとに日本市場で魅力を発揮しうる3つのクリーンディーゼル・コンセプトモデルを諸元値ベースで提案し、最後に日本全体への波及効果について論じました。

《審査員講評:ディーゼルシステム事業部 ゼネラル・マネージャーのコメント》

市場ポテンシャル係数Cpという数値化された一つの指標で対象を分析するという手法は“機械知能システム学科”で学んだ成果かどうかはわかりませんが、非常に良い着眼であると思います。

これはマーケット分析に使うツールのみならず、説得力をもって世論に訴えるツールに使えるものだと感心しました。

さらに説得力ある指標とするためには“Cpと販売ランキング”の整理に見られますが強い相関が必要です。コストとパフォーマンスのパラメーターから構成されるCpに対しさらに視点を変えたパラメータもあるのではないでしょうか? そのような問題提起を読者に与える面でも意味のある内容だと思います。

参考ですが、ボッシュのディーゼル部門ではディーゼルの特徴を3つのキーワードで訴えています。エコノミー(燃費)、クリーン(CO2)、パワフル(トルク)です。

同クラスのガソリンエンジンに対しそれぞれ30%、25%、50%良く、今後さらに燃費33%、CO2 33%改善していくことができるということを自社の評価結果から引き出しています。

燃費とトルクは既にCpに含まれていますからCO2もパラメータに加えれば少なくともヨーロッパの分析は相関良く整理できるかもしれません。

おめでとうございました。

《編集補足》

※同作品内で、計算式の結果として一番高評価を得ていたマツダの「CX-5」が、作品発表後すぐに「2012年カーオブザイヤー」に選ばれましたので、計算式の信頼性も高いと考えております。

《特別優秀賞 2件》

倉持 匡佐さん

「コンピュータ・ビジョン技術を応用した路面追従型アクティブ・サスペンションの検討」

早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻 修士1年 倉持 匡佐さん

《作品概要》

コンピュータ・ビジョン技術によって、自動車の前方の三次元地形形状をリアルタイムに獲得することにより、懸架装置への入力を予期し、その入力を打ち消すように動作するアクチュエータを備えた懸架装置によって、自動車の乗り心地、運動性能を改善することを提案する。

また、獲得した路面の三次元形状をカーナビゲーション等の車載通信システムによって収集し、道路の品質管理を容易化、詳細化することも併せて提案する。このようなシステムを実現するために必要な、三次元構造を獲得するためのセンサや、獲得した地形情報から懸架装置への入力を予測する計算のリアルタイム性の必要、ならびに、懸架装置に内蔵するべきアクチュエータの要件や構造を検討する。

《審査員講評》

実現可能性についてはコスト面や技術面等でハードルがかなり高いように見受けられますが、発想として大変面白く、既存の技術を踏まえた上での論理的な整合性や、総合的な文章力も含め、考察がしっかりなされており、全体的に高得点でしたので、特別優秀賞とさせていただきました。

これまでのアクティブサスペンションのように、レースなどの最先端の現場でも活用が可能な提案でありながら、一般的な乗用車を運転する際には縁石すら軽々と乗り越えてしまいそうなくらいの能力を持った車を開発可能な提案でした。非常に大きな範囲で今後の車の可能性を広げる提案をしていただきました。

山田 嘉穂さん

「新しいカーシェアリングシステムの提案~クルマはファッションと同じ~」

東京工業大学大学院 総合理工学研究科 メカノマイクロ工学専攻 修士2年 山田 嘉穂さん

《作品概要》

「若者のクルマ離れ」という状況において、今後カーシェアリングは発展していくだろう。しかし、現状のカーシェアリングは、若者にとって魅力的なシステムではないと考える。調査を通して、20代の若者にとって、「クルマはファッションと同じ」であり、自己を主張し、生活に楽しみを与えるものであるという結論に至った。

現状のシステムの問題点は、「無個性な」カーラインナップと、「無機質な」システムである。そこで、新しいカーシェアリングを提案する。カーラインナップは、スポーツカーやSUV、デザインとして個性的なものを揃える。システムは、会員制のクラブとし、会員同士のコミュニケーションを促進し、クラブを交流の場としていく。「友達と一緒に、色々な服を選べて、遊びに行くことができる」クローゼットのような、若者にとって魅力的なカーシェアリングを実現することで、クルマ社会の更なる発展を期待したい。

《審査員講評》

提案内容が特段革新的もしくは新規性をもったアイディアというわけではありませんが、今後のカーシェアリングの方向性に関して、既存のデータを多用しつつ、説得力のある提案を行ったという点が一番審査員の評価を獲得したポイントでした。特に、若者の車離れが叫ばれている風潮に対し、データを基に反論を行った点に関しては高評価を得ました。

作品内で使用されたデータに関しては、少々扱いとしては雑然とした印象を受ける点がありますので、その点については留意が必要ですが、今回の提案内容を発展させ、若者を中心にカーシェアリングの需要を喚起する新しい誘発剤になることを期待して、特別優秀賞とさせていただきました。

《審査員特別賞》

竹本 亮さん

「自動車のナンバープレートを利用した新しい SNS の提案」

北海道大学大学院 情報科学研究科 情報エレクトロニクス専攻 修士1年 竹本 亮さん

《作品概要》

現在のIT社会においてもなお、[自動車 対 自動車]でのコミュニケーションツールは、未だに「クラクション」や、「ハザードランプ」といった古典的な手段しか存在しない。そこで、新たな車間通信の突破口として、『自動車のナンバープレートをアカウントとしたSNS』を提案する。このサービスと、今実現しつつある技術を融合し応用することで、様々な可能性を同定し、ITと自動車の融合を図ることができる。その一例として、ナンバープレートの自動認識技術、音声認識技術、フロントガラスへの映像表示技術を組み合わせることで、理想的な車間メッセージ機能の構築が可能となる。これにより、今までに無い車間コミュニケーションと新たな価値創造が生まれ、より一層豊かな社会実現に期待が持てる。その他にも、付加価値を利用したビジネスや、暮らしの観点から、このSNSの持つ、多様な可能性に着目し、ITと自動車との結び目について考察する。

《審査員講評》

ナンバープレートを利用したSNSという切り口は、イメージを想起しやすく、実行の可能性も高いと考えられ、大変興味深い提案でした。

セキュリティやプライバシーなどの問題や、悪用に対する懸念点への考察、先行事例の検討が欠けていたことは残念で、更なる応用事例などが深みを持って添えられていれば素晴らしい提案になったと評価されました。一方で、提案内容自体は大変面白く、実現すれば便利で実用性が大変高いのでは、という高評価を得ました。

上記の意味で考えますと、提案内容全体を俯瞰すれば大賞にも匹敵する内容ではありましたが、提案内容の一部が過去にサービスとして実用化されていたので、今回は審査員特別賞とさせていただきました。

本受賞を一助として、同サービスが社会に発展的に活用されることを期待いたします。

ボッシュアワード2012選考委員会

委員会構成員: ボッシュ株式会社テクニカルセンター、ディーゼルシステム事業部、人事部門およびアカリク役員

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