ご来場の皆さま、

ボッシュは今、まれに見るエキサイティングな時期を迎えています。私たちはビジネス環境と社内の両方で進む変革の中で、競争心をかき立てられています。このエキサイティングな時期に、ボッシュの年次記者会見にようこそお越しくださいました。変革は、特にモビリティの分野で速く、深く進行していますが、技術開発全般にわたって変遷が続いています。自動車業界とボッシュにおいてこうした変革を促しているのは、ネットワーク化です。ネットワーク化はビジネスモデルを、製品を、そしてとりわけ世界のビジネス環境そのものを変えつつあります。既存の事業分野でマーケットリーダーの地位を守りさえすれば良いという考え方はもはや通用しません。変革プロセスは実に奥が深く、私たち自身が変革を押し進める原動力となって、可能な限り最前線に立たなくてはなりません。つまり、新たなチャンスを捉えなくてはならないのです。その意味で、ボッシュは単なる移行期ではなく、大きな変革の只中にあると言えます。

そしてこれこそが、私たちが本日、さまざまな例を挙げながら皆さまにお伝えしたいと考えていることです。ですが、まずは本日の記者会見の本題に戻りましょう。

  • 2016年は経済的な追い風に恵まれず、為替の面でかなりの逆風が吹き荒れた中、私たちは成長軌道を維持することができました。売上高は前年の約706億ユーロから約736億ユーロに拡大し、支払金利前税引前利益(EBIT)は約43億ユーロでした。

  • 2017年もボッシュは関係市場を上回るペースで成長を達成したいと考えています。第1四半期の売上高は前年同期比12 %増で、通年では3~5%の売上増を目指しています。将来に向けた投資を積極的に継続しながらも、利益率の改善を目指します。

  • 私たちは今年以降も持続的な成功に向けた道筋を描いています。既存の事業分野においては、強みを活かして市場と技術でリードを広げることを目指します。ネットワーク化やAI(人工知能)といった新しい分野では、米国などの大手企業と互角に戦えるよう競争力を高めていく考えです。
私たちは長期的に、ボッシュにおけるこうした変革のダイナミズムの証人となることを目指しています。私たちを取り巻く事業環境は、技術面やビジネス面だけでなく、政治面においてもポピュリズムが台頭するなど、これまでにもまして大きな変化が到来しています。ボッシュは真に国際的な企業です。私たちは世界がひとつであること、そしてなによりも欧州がナショナリズムに支配されずひとつであることを願っています。私たちの事業はグローバリゼーションの恩恵を受けており、国境が復活すればダメージを受けることになります。そして最も重要なのは、私たちの従業員は150カ国もの国々から集まっているということです。ボッシュのような企業はいわば国連の縮小版であり、私たちはポピュリズムの脅威にさらされようとも、多様性を重視する存在であり続けたいと願っています。

私たちは、環境保護と資源保護にも力を注いでいます。ですから、ある気候変動に関する会議でメキシコシティ、パリ、アテネ、マドリッドの各市長がディーゼル車の乗り入れ禁止を発表したことは奇異に感じています。ディーゼル車に対するこの種の規制は、気候変動防止目標を達成できない可能性が高いドイツなどの国々でも議論されています。ただ、ディーゼル車の比率が高まると道路交通全体から排出されるCO2は減少するという事実は取り上げられていません。また、パティキュレートフィルターの導入以降、ディーゼルエンジンは粒子状物質 (PM)をほとんど排出しなくなったという事実についても言及がありませんし、ディーゼルエンジンからの窒素酸化物( NOx )の排出量も大幅に削減されています。当然のことながら、今後はNOxの排出量に関する新しい法的基準も遵守されなくてはなりませんが、いろいろな課題が残されていると言えるでしょう。世界の大都市、そしてここシュトゥットガルトでは、大気汚染の防止が産業、政治、社会にとっての中心課題となる必要があります。しかし、ディーゼル車をめぐる議論においてすべての当事者に求められているのは建設的な関与であり、事実から目をそらすことではありません。ディーゼル車の乗り入れ禁止は、環境データや経済データを無視した安直な対応であり、雇用や産業にダメージを与えるだけでなく、気候変動問題そのものにも悪影響を与えかねません。もちろん、政治家が排出基準の厳格化を義務付けるのは当然のことですが、そうした基準は技術中立的であるべきです。つまり、ディーゼルエンジンのようなソリューションを奨励も悪者扱いもすべきではないということです。ボッシュを含めた自動車業界は、大気汚染防止に向けて応分の努力をしようとしています。その対策として、内燃機関を環境にやさしいものにする、電動パワートレインのコストを可能な限り下げることなどが挙げられます。私たちは、研究開発費の約半分を資源保護と環境保護のために振り向けています。今ほどボッシュの創意あふれるアイデアが求められている時はないかもしれません。しかし、ボッシュのエンジニアの創造性が政治によって制約を受けることがあってはならないと思っています。ディーゼル車を禁止するという考え方をテクノロジーの観点から不要なものにするのは、まさにこうした創造性だからです。後ほどご説明いたしますが、私たちはこの目標に向かって一歩一歩進んでいます。

まず初めに、ボッシュの業績を見ていきましょう。昨年と今年の事業推移についてはアーセンケルシュバウマーから報告させていただきます。その後、私たちの戦略的課題について詳しくご説明いたします。それではアーセンケルシュバウマーさん、よろしくお願いします。

事業に関する各種データ:これからの変革を見据えて

ご来場の皆さま、

取締役会会長のデナーがボッシュの戦略的重要課題についてご説明申し上げる前に、私の方から2016年の事業報告と2017年の展望について説明させていただきます。事業に関する各種データは多くの点で、今後の変革を見据えた先行投資を反映したものになっています。結論から言わせていただきますと、ボッシュ・グループは2016年にさらなる前進を遂げました。世界経済が低成長にとどまるなか、ボッシュは順調に成長を遂げ、数々の成功を収めることができました。私たちは今後、変革に不可欠な先行投資と、必要とされる高いレベルの収益力のバランスを取るという大きな課題に直面します。こうした先行投資の一部は、実を結ぶまでにかなりの時間を要するためです。

このテーマについて話を進める前に、世界の経済環境について振り返ってみたいと思います。2016年の世界経済は前年に続いて低成長にとどまり、世界のGDPの伸びはわずか2.5%でした。下半期はアジアが成長をけん引し、特に自動車生産の中核市場は4.5%という当初の予想を大きく上回る伸びを記録しました。一方、その他の中核市場では、機械製造分野の世界生産、個人消費、世界の建設市場に関する指標が示すように、成長はかなり緩やかなものになりました。

それでは、決算を見ていきましょう。ボッシュ・グループの2016年の売上高は、前年比3.6%増の約731億ユーロとなりました。前年と異なり、事業基盤構成の変化に伴う大きな影響はありません。ただし、売上高は為替変動の余波で約13億ユーロ押し下げられました。これらの影響を除いた売上成長率は5.5%で、私たちは2016年に順調な成長を遂げたと言えます。年頭に立てた3~5%という売上成長目標を達成し、さらに為替調整後でその目標をやや上回ったからです。

モビリティ ソリューションズ セクターは2016年に最も力強い成長を見せ、売上高は前年比5.5%増、為替調整後では6.9%の増加となりました。追い風となったのは、ガソリン直噴システム、ドライバー アシスタンス システム、ディスプレイシステムに対する旺盛な需要です。エレクトリカル ドライブ事業部は、抜本的な再編を経て新製品を打ち出し、成長軌道に乗っています。電動アシスト自転車の「eBike」も引き続き力強い伸びを示しました。これは成功したスタートアップビジネスの1例と言えます。

産業機器テクノロジー セクター、なかでもドライブ&コントロール テクノロジー事業部は依然として厳しい市場環境にさらされています。事業セクター全体の売上高は前年比5.2%減の約63億ユーロ、為替調整後でも4.2%減と、前年に続いて減収に終わりました。ただし、ベース効果の影響を軽視することはできません。私たちは、2015年末に大型ギヤボックス事業を売却しました。また、包装機械市場は私たちが予想したような成長を見せなかったという現実もあります。

消費財セクターは好調を維持し、2016年の売上高は約176億ユーロに達しました。名目ベースでは前年比2.6%、為替調整後では5.7%の増加となります。BSH Hausgeräte GmbHが100%出資子会社となって最初の年となりましたが、滑り出しとしては好調だったと言えるでしょう。 BSHはネットワーク化と国際事業の強化に力を入れており、特に中国やインドをはじめとする成長市場を重視しています。また、電動工具事業部も引き続き順調な成長を見せました。この事業部に成功をもたらしているのがユーザー重視の姿勢で、ユーザーには新製品やサービスの開発に早い段階からご参加いただいています。

エネルギー・建築関連テクノロジー セクターは、個人顧客向けの製品やソリューション、商業顧客向けの製品ソリューションやサービスを提供し、事業プロセス管理において顧客重視の姿勢を重視しています。2016年に、この分野を専門とする事業部「グローバルサービスソリューション」を新設しました。この新事業部は、セキュリティー システム事業部の既存のサービスネットワークを基盤としており、2桁成長という順調な滑り出しを見せました。製品面では、2016年はネットワーク対応型のボイラーが大きな成功を収めました。全体的に、このセクターは為替変動の影響を大きく受けました。ユーロベースの売上高は約52億ユーロと、前年比1.7%の伸びにとどまりましたが、為替調整後では4.5%増となりました。

次に、地域別の動向を振り返ります。依然として総売上高の半分以上を占める欧州での売上高は、前年比3.4%増の約386億ユーロ、為替調整後では4.8%の伸びとなり、ポンドの下落など、為替の影響を非常に大きく受けました。北米では著しい減速となり、売上高は名目で2.2%、為替調整後で1.8%、それぞれ前年から減少しました。一方で、南米では為替調整後で2.4%増と、ようやくプラス成長を達成することができたという喜ばしいニュースもあります。名目売上高は前年比5%の減少でしたが、これは主にブラジルの通貨レアルの低迷が続いたことが影響しています。アジア太平洋地域での売上高は、前年比8.3%増の約208億ユーロと、昨年に続いて最も高い成長率を記録しました。この地域はボッシュの売上高全体の28%を生み出しており、為替調整後の売上高の伸び率は12%でした。

次に損益の動向に移ります。グループ全体の支払金利前税引利益(EBIT) は約43億ユーロで、売上高利益率は5.8%でした。年頭に暫定決算を発表した際にお伝えしました通り、EBITは前年を下回りました。この数字が公表されたEBIT(33億ユーロ)と異なる主な理由として、2016年度に初めて完全連結対象となった旧合弁会社のBSH Hausgeräte GmbHとオートモーティブ ステアリング事業部の完全子会社化に関連する減価償却が挙げられます。なお、昨年はM&Aによるプラスの特別要因によって減価償却費が相殺されました。このほか、投資の評価減や競争法と排出ガスをめぐる法的手続きに関する費用が影響を及ぼしました。

最初に申し上げた通り、私たちはこれからの変革に備えて多額の先行投資を行う一方で、高いレベルの収益力を維持するという課題に直面しています。この先行投資には、増加を続ける研究開発投資や減価償却に影響を与える多額の投資などがあります。また、デジタル化関連の活動やサービス提供の効率向上を目的としたプロジェクトにも多額の資金を投じています。

さらに、私たちは要求や市場の変化に対応するために、ボッシュが長く手がけている事業分野の再編を進めています。Bosch Rexroth AGは、市場規模の縮小に伴って抜本的な再編を実施しているほか、私たちは昨年と2017年初頭に適切な調整を行うと発表しました。同時に、インダストリー4.0など将来有望な分野を推し進めるためにも大きな力を注いでいます。さらなる調整が必要になるのは、オートモーティブ ステアリング事業部の電動ステアリングシステムなどに関してで、スターターモーター&ジェネレーター事業部のスピンオフに関連するコストもかかってきます。

続いて、事業セクター別の動向を見ていきます。モビリティ ソリューションズ セクターの営業利益は約26億ユーロとなり、前年を下回りました。私たちが直面する重圧についてはすでにお話しした通りです。心強いのは、産業機器テクノロジー セクターが約4,400万ユーロのEBITを計上し、営業黒字化を果たしたことです。また、消費財セクターも非常に好調に推移しました。先ほど申し上げた戦略的調整にも関わらず、エネルギー・建築関連テクノロジー セクターは前年並みの業績を維持できました。

続いて、資本支出と研究開発費を詳細に見ていきましょう。私たちは、前年より6億ユーロ多い約70億ユーロを研究開発に投じました。研究開発費の対売上高比率は9.5%と、前年の9%から上昇しました。ボッシュの研究開発への先行投資は際立っており、ドライバー アシスタンス システム、カーマルチメディア、センサー技術の強化に重点が置かれています。

私たちはまた、固定資産に対する資本支出をさらに増額しました。2016年の投資額は約43億ユーロに達し、売上高設備投資額比率は5.8%に上昇しました。私たちは、多くの地域で生産能力を強化しました。ここでも突出しているのがモビリティ ソリューションズ セクターで、投資額は約33億ユーロと、前年の31億ユーロから増加しました。また消費財セクターも、前年の約6億5,000万ユーロから約7億2,000万ユーロに投資額を大きく引き上げました。

それでは、貸借対照表の数字についてこれから簡単にご説明いたします。全体的に大きな変化はなく、自己資本比率は44%と、健全な状態を維持しています。また、貸借対照表にありますように、流動資産は約167億ユーロと、前年の144億ユーロを上回る水準を確保しています。

では、今後の展望はどうでしょうか?

私たちは、今年の世界の経済成長率が2.8%と、2016年の2.5%をやや上回ると予想しています。ただ、政治動向や保護主義的な傾向の強まりを見るに、リスクはなかなか大きいと考えられます。もちろん、この保護主義的な傾向は今に始まったことではありませんが、世界貿易機関(WTO)の統計が示すように、こうした傾向は世界金融危機が収束して以来、勢いを増し続けています。保護主義は関税の問題ではなく、むしろ現地調達規制やライセンス、製品基準などの問題です。これらは長期間にわたり世界貿易を鈍化させる要因となってきました。

2017年第1四半期の売上成長率は12%となり、順調なスタートを切りましたが、事業環境が不透明であることに鑑み、ボッシュ・グループに関しては保守的な予想を維持することになりそうです。とはいえ、私たちは今年も変革を見据えた大規模な先行投資を実施する予定です。また、2016年に落ち込んだ利益率を2015年の水準に回復させたいと考えています。私たちの目標は収益力の強化です。これから先の変革は、短距離のスプリント走というよりは長距離を走るマラソンだからです。

これをもちまして私の説明を終わり、マイクをデナーさんに返すことにします。

戦略:ボッシュは可能性のある破壊的イノベーションの常に先を行く

アーセンケルシュバウマーさん、ありがとうございました。それではお約束しました通り、ボッシュの変革に関して戦略的な問題をより深く掘り下げていきたいと思います。これはボッシュにとって、50年以上前にエレクトロニクス時代が幕を開けて以来、かつてないほど徹底的な変革となります。この変革は、私たちを取り巻く事業環境の変化によって大きく促されました。中でも、とりわけ重要な破壊的イノベーション分野が2つあると考えています。

  • 第一に、先ほど触れた道路交通面の課題は、ボッシュの中核的なモビリティ事業の変化を引き起こします。もはや、単により優れたクルマを作るという枠にとどまらず、私たちはモビリティの新しい概念を必要とするようになりました。
  • 第二に、IoT(モノのインターネット化)における技術変革は、AI(人工知能)と組み合わされ、私たち一人ひとりの暮らしを変えていくとされ、私たちはそれがより良い暮らしを実現する変化であると確信しています。その1例となるのが、パーソナルアシスタントです。
こうした変化は、十分に理解されていれば、市場とテクノロジーのリーダーである企業に起こりうる最良の出来事です。変化は私たちの起業家本能を刺激し、競争心をかき立てます。とはいうものの、ボッシュのような企業にとって、こうした変化は二重の難題をつきつけます。

  • 私たちは大きな成功を収めている既存の事業をさらに発展させる一方で、
  • 起こりうる破壊的イノベーションに先んじ続けるために、新たな事業を速やかに開拓する必要があるのです。
変わる道路交通: 新しいモビリティの概念 – ゼロエミッション、ゼロアクシデント、ゼロストレス

私たちは、とりわけ最大の事業セクターであるモビリティ ソリューションズにおいて、この二重の難題に取り組む必要があります。ご存知の通り、道路交通は根本的な変化を遂げようとしています。何よりもまず、先ほど申し上げたように自動車に対する環境保護要件は厳しくなってきています。私たちは、モビリティの進化と大気環境のバランスを取らなければなりません。2050年には世界の人口の約70%が暮らすことになるとされる大都市圏では、このことは特に重要になります。短期的には、ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物(NOx)は一段の削減が義務付けられており、実走行条件下でさらに3分の2減らすことが求められます。自動車メーカーがEURO6の基準に適合するには、こうした条件を満たさなければなりません。このEURO6は、リアルドライビングエミッション(RDE)の規制値も設定しています。自動車メーカーがこの基準をクリアできるようサポートするために、私たちは燃料噴射テクノロジーから排出ガス後処理システムまでさまざまな取り組みを進めてきました。ですが、これから重要になるのは、こうした技術をどのように各タイプの車両に適用させるかということです。ボッシュでは現在、約300件のRDE関連プロジェクトが進行しています。このことからも、私たちがいかに熱心に開発に取り組んでいるかがよくお分かりいただけると思います。こうして私たちは、空気をきれいに保ち、環境を守るためにできる限り努力しています。自動車以外の排出源に関しても、同様に熱心な取り組みが行われることを願うばかりです。

粒子状物質(PM)についても同じことが言えます。道路交通がPMの排出に占める割合は12%に過ぎません。実際、パティキュレートフィルターの導入以降、ディーゼルエンジンはPMをほとんど排出していません。この種のフィルターはガソリンエンジンでも導入が進んでおり、噴射圧を350 barに引き上げることにより、PMの排出量は低減します。言うまでもないことですが、PMをめぐる議論において見過ごされがちな事実があります。それは、自動車からのエミッションの大部分は排気ではなく、ブレーキの摩耗などから発生するということです。このためボッシュは、タングステンカーバイドコーティングにより、耐摩耗性が非常に優れ、ブレーキ粉じんの発生を抑えるブレーキディスク「iDisc」の開発を進めています。

大気を清浄に保つためのボッシュの取り組みはハードウェアだけにとどまらず、道路交通の効率化にも同様に関心を向けています。まさにこうした理由から、ボッシュは単なる自動車機器テクノロジーを超えたモビリティソリューションを提供しています。私たちは、シュトゥットガルト都市圏向けにモビリティアシスタントを開発しました。これはユーザーがさまざまな交通手段を使った旅行のプランを立て、予約から支払いまでできるアプリです。また、私たちは駐車スペース探しに起因する都市部での日常的な交通渋滞を20%改善することを目指しており、この目標を達成するために数々のコネクテッド パーキング ソリューションを開発しました。そのうちの1つが、自動車が走行中に駐車スペースを検知し、その情報をインターネット経由でリアルタイムで駐車スペースマップに送信するというもので、私たちはこのソリューションをコミュニティ ベース パーキングと呼んでいます。2年前に発表されたこのソリューションについては、第1生産プロジェクトが来年始動する予定です。私たちがお約束した通り、時間のかかる煩わしい駐車スペース探しの負担を軽減することによって大気環境の保全に貢献するなど、道路交通における環境保護に多面的に取り組んでいます。

同時にこれらの例は、IoTの一部としての自動車はもちろん、交通状況に応じて自動車から二輪車、電車、バスなどに合理的に乗り換える道路利用者といった新しいタイプのモビリティにも光を当てることになります。こうした未来のモビリティにおいて、ボッシュはどのような役割を果たせるのでしょうか?ドライビングをより安全、クリーン、経済的にすることを目指した3Sプログラムは、数十年にわたり役立ってきました。このプログラムに沿って開発されたシステムは長きに渡って成功を収めています。今年のガソリン直接噴射システムの売上高は前年比で15%、ESC(横滑り防止システム)も同じく10%それぞれ増加しています。将来、自動車は電動化、自動化、そしてネットワーク化が進み、他の輸送手段ともつながるようになります。ボッシュの使命は、ハードウェアだけにとどまらず、もはや相対的ではなく、絶対的なものになっています。私たちはドライビングの危険を減らすのではなく、ゼロにすることを目指しています。ゼロエミッション、ゼロアクシデント、ゼロストレス。これが、私たちが描いている未来のゆとりあるモビリティのビジョンなのです。

私たちは、eモビリティへの移行を後押しすることにかなりの力を注いでいます。パワートレイン ソリューションズは、ガソリンシステムとディーゼルシステム、ならびに電気駆動システムに関するボッシュの強みを集約した新事業部の名称で、私たちはこの事業部で2つの目標を同時に追求しています。これは、変革期において雇用を確保するためでもあります。ボッシュは内燃機関向けシステムのマーケットリーダーであり、その地位にとどまり続けたいと願っていますが、eモビリティのサプライヤーとしてもナンバーワンの座を確保したいと考えています。私たちはあらゆる面で進歩を遂げており、ボッシュの技術を搭載した30件を超えるeモビリティ関連の生産プロジェクトがすでに進行中です。2016年には、世界最大の電気自動車市場である中国だけで10件以上の受注を獲得しました。このように、ボッシュはマスマーケットに適した電気駆動システムの開発にも力を入れています。私たちは、2つの道筋でこの目標を追求しています。その1つが、トランスミッション、パワーエレクトロニクス、モーターをひとつの電動アクスルに統合し、パワートレインシステムの効率を高めること、2つめが、2015年から2020年の間にバッテリーのエネルギー密度を2倍に引き上げる研究を進めることです。

私たちは、自動運転の分野でも同様に飛躍的な進歩を遂げています。ここ数週間で、 2020年代初めを見据えた、戦略的に重要な進展が2つありました。
  • まず、都市部での、すなわち非常に複雑な運転状況下でも自動運転を可能にするために、ダイムラーと開発業務提携を結びました。この決定的な最初のステップが成功すれば、私たちはパーソナルモビリティの革命に近づくことができるでしょう。
  • 第二に、私たちはまさに自動運転車の頭脳とも言える「AIオンボードコンピューター」を開発しています。私たちはAIを活用し、車両が他の道路利用者の振る舞いを解釈し、予測できるようにしたいと考えています。
さらに、2020年までに自動運転に不可欠となる、レーダーセンサーから提供される測定データを含んだ高精度マップを実現しようとしています。自動運転車は、このレーダーシグネチャーを通じて正確な位置を割り出すことができるからです。ボッシュで現在自動運転に取り組んでいるエンジニアの総数は約3,000人に上り、昨年に比べて約500人増加しました。ドライバー アシスタンス システムは、すでにボッシュの主要な成長事業となっています。その売上高が初めて10億ユーロを突破したのは2016年のことですが、昨年の受注額は約35億ユーロに達しました。ドライバー アシスタンス システム市場は2017年に30%成長すると予想されていますが、ボッシュはその市場を上回る成長率を達成する見込みです。

最後に、私たちは、ドライビングのネットワーク化がキーコンピテンシーとなると考えています。これは、ドライビングの電動化と自動化をサポートするだけでなく、ある場所からある場所に移動するすべての人にインターネットベースのサービスを提供できるようになります。コネクテッドモビリティ市場は2020年までに毎年25%成長すると予測されており、2020年には約2億5,000万台の車両がIoTの一部となるとされています。このため、私たちは来年、「Bosch Automotive Cloud Suite」を投入する予定です。これはコネクテッドモビリティの中核となるソフトウェアプラットフォームとなるもので、この「Bosch Automotive Cloud Suite」を通じて、私たちだけでなく、お客様も予測診断やオンラインパーキングといった新しいモビリティサービスを速やかに構築できるようになります。会場の外に用意した車両では、スマートホームへのアクセスなど、こうしたアプリケーションをいくつかご紹介し、後ほどデモをご覧いただきます。「Bosch Automotive Cloud Suite」の提供が始まりましたら、私たちはこれらの機能を順次導入していく予定です。クルマと住宅をつなぐことは、両方の分野に精通するボッシュのような企業の宿命であると言えるかもしれません。

クルマは、運転するだけのものではなく、パーソナルアシスタントのようにドライバーをサポートする存在となります。そのために必要となる基礎技術は、会場の外に用意されている展示車両にも搭載されています。それではこれから、この技術に関するショートフィルムを今から皆さまにご覧いただきます。

ドライバーは人間の同乗者と同じように、バーチャルアシスタントと会話することができます。ただし、この同乗者はドライバーの指示に反応し、それを実行してくれます。その過程で、バーチャルアシスタントは必要に応じてクラウド、スマートフォンやスマートホームから情報を取得し、ドライバーの習慣や好みをさらに理解できるよう学習し続けます。基本的にこの種のアシスタントは、クルマを運転する時だけでなく、台所仕事や庭仕事、DIY作業の時にもユーザーに寄り添い、暮らしのあらゆる面をより良いものにするテクノロジーとなります。

変化を続けるテクノロジー:ボッシュはAIを活用し、ネットワーク化を感情に訴える技術へ
ちょうどここで、私たちの変革の第二の重要な原動力が明らかになりました。それは技術開発の急速な進歩で、ボッシュの変化をも促しています。IoTやAIの進歩は、ボッシュが展開するほぼすべての事業に関わってくる重要な要素で、私たちはこの進歩に全力を注いでいます。2016年には、インターネット対応型の製品を約2,700万個販売しました。また、新しいエレクトロニクス製品はすべてインターネット対応のものにし、関連サービスを開発することを目標に掲げています。10年後には、ボッシュの新製品はすべて開発または生産過程でAIに関わるか、もしくはAIを内蔵することになると予測しています。製品は他の製品とつながり、AIはネットワーク化を、パーソナルな感動を呼び起こす経験へと高めます。また、人々の日常生活をサポートし、データから学び、日々の雑用の負担を軽減してくれるため、より有意義な生活が送れるようになるでしょう。

こういった新しい技術の可能性は、経済予測にもよく表れています。IoT関連の世界市場は2020年まで毎年35%成長し、約2,500億米ドルの規模に達する見通しで、半導体の世界市場にもこのIoTの勢いが反映されています。IoT向けの半導体は最も力強い伸びを示しており、携帯電話通信や車載アプリケーションをも上回っています。特にデジタルアシスタントの数は2020年までに3倍に増え、15億を超えると見られています。

こうした背景のもと、ボッシュは自身が持つネットワーク化とAIの相互作用の強みを伸ばしつつあります。

  • 今年初めに、ボッシュはAIセンターを開設しました。その拠点はレニンゲン、パロアルトとバンガロールに置かれています。同センターでは現在、セキュリティシステムのビデオ監視システムなどに使用される画像解析の専門知識をベースに開発が進められています。ラスベガスで開催されたCES国際家電ショーでは、AIの要素を備えたホームロボット「Kuri」を公開しました。ボッシュAIセンターは当面、主に自動運転とコネクテッドインダストリーの開発支援に重点を置く予定です。

  • 私たちはネットワーク化に必要な「3S」、すなわちセンサー、ソフトウェア、サービスを強化しようとしています。センサーについては、ボッシュはすでにマイクロメカニカルセンサーの世界最大手メーカーとなっています。ソフトウェアについては、私たちは2万人を超えるソフトウェアエンジニアを擁しています。このうちの約4,000人がIoTに専門に携わっており、その数は1年で約1,000人増加しました。サービスについては、私たちは新しい技術だけでなく、総合的なビジネスモデルの開発も進めています。現在は約100件のプロジェクトの評価を行っており、このうち3件に1件は導入フェーズまたは拡大フェーズに入っています。eスクーターサービスの「Coup」はその1例となります。これらのプロジェクトの重要性を低く見積もることはできません。数年後には、サービスとアプリケーションがIoT市場の半分以上を占めるようになる見通しだからです。
とはいえ、ボッシュが単独でコネクテッドワールドを開拓しても意味はありません。オープンであることを私たちはモットーに掲げています。私たちは協力を望んでおり、さまざまな提携を結んでいます。例えばソフトウェア プラットフォーム「Bosch IoT Suite」のマイクロサービスは、独自のクラウドだけでなく、Amazon Web ServicesやIBM Bluemixからも提供されています。コネクテッドワールドのロジックが指し示すのは、私たちがGEやSAPと結んだようなパートナーシップです。モノだけでなく、企業も次の3つの段階を経てネットワーク化が進みます。第1段階はオープンソースコミュニティでの共同開発、第2段階は技術コンポーネントの相互利用、そして第3段階は、私たちがインダストリー4.0に向けて取り組んでいるような共同プロジェクトです。

特にコネクテッドインダストリーは協力なしには生まれません。ボッシュは明確なビジョンを追求し、インダストリー4.0がサプライヤーから最終顧客まで、バリューストリーム全体をより効率的なものにできるようにしたいと考えています。この分野では今後、ビジネスチャンスがますます増えていくことになるでしょう。

  • 私たちはリーディングユーザーとして、節減の可能性による恩恵を受けることができます。例えば、2016年にドイツのフォイヤバッハ工場でメンテナンスサポートシステムのテストを行ったところ、製造のダウンタイムが20%短縮し、機械設備の稼働率が5%改善したことが明らかになりました。

  • 私たちはリーディングプロバイダーとしても、社内アプリケーションから得た専門知識を外部への販売に活かしています。この2つの役割を分かりやすく説明すると、自分で調理したものを食べ、最高のレシピをお客様と共有する、というイメージになります。この点で、先ごろハノーバーメッセで発表した革新技術は大きな意味を持ちます。その技術こそが、今ご紹介したメンテナンスサポートシステムです。インダストリー4.0のソリューションについてお客様からの問い合わせが増えつつあり、2020年までには、コネクテッドインダストリー向けの新しい製品とサービスにより、売上を10億ユーロ以上上乗せできると考えています。
今後、インダストリー4.0は工場に定着していきますが、そこで忘れてはならないのは、常に人間を中心に据える必要があるということです。経済的なメリットがなんであれ、従業員がコネクテッドインダストリーのキープレーヤーであると考えることが大切なのです。従業員が行っているルーチンワークの負担を軽減し、創造的な作業により多くの時間を割けるようにすることは、ボッシュが考えるインダストリー4.0にとって極めて重要な成功要因となります。私たちは、人間と機械がインテリジェントなチームを組み、協力して働けるようにしたいと考えています。私たちはこの考えを、世界30カ国で提供している実習制度の組織理念にも取り入れました。たとえばブライヒャッハ工場では、すべての技術実習生にロボット訓練を行ってもらっているほか、ホンブルク工場は、センサーとソフトウェアをベースとしたメンテナンス関連のラーニングアイランドを取り入れました。このように、インダストリー4.0はボッシュにとって、単なる技術のレベルを超え、「Work 4.0」(「第4次労働革命」)と密接に結びついています。

ボッシュにおける変化:
大企業が持つパワーをスタートアップ企業の機動力と融合


私のスピーチも最終盤に来ました。話題に取り上げているのが業界、テクノロジー、職場環境のいずれの変化であるかに関わらず、こうした変化のプロセスは人々を感化し、その意欲をかき立てます。ボッシュは、大企業のパワーを持つと同時に、多くの分野でスタートアップ企業の機動力を発揮しているということがわかってきました。私たちが事業を展開する分野がデジタル化、自動化やAIによって一変する前に、その力をもとに私たち自身を変えようとしています。ボッシュはさまざまな強みを持つ企業です。私たちは強くあり続けるために、この変革を積極的に推し進めています。


このプレスリリースは2017年05月04日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
原文をご覧ください。