皆さんの中には、自動車学校で教習を受けていた時に、こんな場面に遭遇したことを覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。駐車している2台の車の間からボールが通りに転がり出てきます。次に最も起こりそうなことは何でしょうか?私たちは皆、数秒後に子どもが車の間から走り出てくることを予測し、用心のために速度を落とすでしょう。これまで、自動車はこうした状況で同じように反応する人々によって運転されてきました。しかし、運転しているのがコンピューターだったらどうでしょう?自動運転車は、人間のドライバーがやることをすべて出来なくてはなりません。自動運転車は人間より素早く反応することができます。これは間違いありません。しかし、起こることをどのくらい的確に予測できるでしょうか?

自動運転車は、歩行者、自転車、スクーター、道路標識、そしてもちろん他の車も識別できなければなりません。技術的には、これは現在生産されているモデルでもかなりの程度可能になっています。しかし、車両が交通状況を解釈し、他の道路利用者の行動を予測できるようにするには、人工知能(AI)の搭載が不可欠です。人工知能を装備した車は、人間よりも反応が速いだけでなく、より防御的に運転する可能性が高くなります。これにより、歩行者、自転車、そして特に自動車の乗員にとって市街地の道路がより安全になり、私たちすべてが恩恵を受けます。ですから、私たちの開発目標は明確です。ボッシュは自動車を賢くしたいと考えています。

ボッシュのエンジニアたちは、これまで長年にわたって自動運転に懸命に取り組んできました。皆さんの多くがご存知のように、現在およそ3,000人が自動運転の実現を目指して努力しています。さらに、自動運転車を市街地で走行させるため、ダイムラーとの提携をつい先日開始しました。自動運転の基盤であるドライバー アシスタンス システムは、ボッシュのビジネスにおいて、急速な成長を遂げている事業分野です。2016年には、この分野の売上高が初めて10億ユーロを突破しました。今年、レーダーセンサーは60%、ビデオセンサーに至っては80%の販売増が見込まれています。

しかし私たちは今やセンサー技術を超えて、人工知能の分野に専門知識を広げようとしています。このため、今後5年間にAIセンター(BCAI: Bosch Center for Artificial Intelligence)へ3億ユーロを投資します。このセンターはインド、米国、ドイツに拠点を置き、約100人のエキスパートがAIの研究開発に従事する予定です。

ブーランダーがすでに申し上げたように、私たちは事故をゼロにすることを目標にしています。自動運転は道路交通の安全性を高め、人命を救うのに役立ちますが、そこでカギを握るのが人工知能です。しかし、運転を担うコンピューターが、少なくとも人間のドライバーと同じ程度に起こることを予測できるようになるまでには、対処すべき問題がたくさんあります。基本的に、私たちは3つの重要なステップをクリアする必要があります。

第1のステップは理解力です。車はセンサーが何を検出しているのかを理解できなければなりません。人間と同じく、人工知能を備えたコンピューターはまず学習する必要があります。これに関連して、エキスパートはディープラーニングを話題にします。しかし、小さな子供がトラックを数台見ればそれと認識できるようになる一方で、コンピューターは何百台ものトラックを見なければ認識できるようになりません。人工知能が道路交通で実用に耐えるようになるためには、何百万もの画像を選別し、乗用車、トラック、歩行者、自転車、樹木や、先述のボールを含むその他の物体を確実に識別しなければなりません。

第2のステップは、自動車が意思決定できるようにすることです。先ほどと同様、人間の学習にたとえると分かりやすいと思いますが、車が見て理解するだけでは十分ではありません。今後数秒のうちに最も起こりそうなことを予測することを学ぶ必要があります。人工知能はさまざまなデータに基づいて判断を下します。レーダーとカメラのデータを統合すると、車両周辺の画像がより詳細になり、歩行者とその移動方向を見極めることができます。これにより、AIシステムは誰かが前方に現れる確率を計算し、適切なタイミングでブレーキをかけます。

自動運転車の実現に向けた第3のステップは、高精度マップです。市街地を走行するために、車両は常に正確な現在位置を知る必要があります。私たちはTomTom、中国のAutoNavi、百度(Baidu)、NavInfoとともに、高精度マップの作成に取り組んでいます。私たちの目標は、車両がセンサーデータを利用して、クラウドベースのデジタルマップを絶えずアップデートする手助けをすることです。私たちはさらに、TomTomと協力してレーダーセンサーのデータを活用した「Radar Road Signature 」(レーダー ロード シグニチャー)を発表しました。自動運転車両はこのシグニチャーを使って、車線内での位置を数cm単位の精度で正確に把握できるようになります。車両は、数十億におよぶレーダーのリフレクション(反射)ポイントの情報に基づいて道筋を再現し、夜間や視界が悪い時でも、自車の位置を正確に特定することができます。

センサーやカメラについて色々とお話しましたが、その中で、「データ」という言葉が繰り返し現れました。自動運転車は1秒に1ギガバイトという、膨大な量のデータを生成します。従来のコントロールユニットでは、これほど大量のデータの処理に対応しきれません。人工知能を備えた車にも頭脳が必要なのは極めて当然のことと言えます。そして将来、この自動運転車の頭脳をボッシュが提供することになります。私たちのAIオンボードコンピューターは、遅くとも2020年代初頭までに量産化できる見通しです。

この革新的なAIコンピューターは、複雑な交通状況でも、また車両が初めて経験する状況でも、自動運転車を誘導するでしょう。そのためには、コンピューターは最大で毎秒300億回の浮動小数点演算能力が必要となります。人工知能は道路上でのあらゆる瞬間に、そして新しい状況に遭遇するたびに学習します。コンピューターは走行中に学習したすべてのことを人工ニューラルネットワークに蓄積していきます。研究所では、このようにエキスパートが蓄積された知識を解析し、コンピューターが学んだことが正確かどうかをチェックします。さらに路上テストを行った後には、人工的に生成された知識構造を、別のいくつものAIオンボードコンピューターにコピーし、アップデートすることが可能になります。動物界に見られる群知能は、 AIオンボードコンピューターにおいて全く新しい様相を帯びるでしょう。

ボッシュは、コアオンボードコンピューターの構築にあたって、米国のテクノロジー企業Nvidiaと協業します。Nvidiaは、機械学習の手法で生成された車両の動きを制御するアルゴリズムを格納するチップを供給します。

これまでお話してきたことをまとめますと、私たちは乗用車の事故をゼロにすることを目指しています。そのためには自動運転が不可欠です。今でも自動車は人間より速く反応することができますが、さらに、私たちよりも優れた予測ができるようになる必要があります。これを実現するためのカギを握るのが、私たちのAIオンボードコンピューターです。このコンピューターは、都市の道路の安全性を大きく向上させるでしょう。

2020年代初頭に、自動運転車が市街地の道路をどのように走行するのか詳しく知りたい方は、私たちの 「自動化」ステーションにお立ち寄りください。



このプレスリリースは2017年07月04日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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