タニア・リュッカート(Tanja Rückert)
ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバー
マイク・マンスエッティ(Mike Mansuetti)
ボッシュ北米法人社長

2023年1月4日
CES®国際家電ショーにて


本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。

皆様、おはようございます。ボッシュのプレスカンファレンスへようこそ!パンデミックによる2年間のバーチャル参加の後、再びライブイベントを開催できるようになりました。テック業界の中心でボッシュを代表してこの場に立てることを、非常に嬉しく思います。

もちろん、パンデミックはまだ終わったわけではありません。実際のところ世界的な課題は増え続けており、欧州での戦争、インフレ率の上昇、エネルギー不足、壊滅的な洪水や火災など、毎年新たな課題が続々発生しています。それゆえ、コンシューマー技術協会が今年のCESのテーマに “Human Security for All(人間の安全保障をすべての人に)”を選んだことを特に嬉しく思います。このテーマは、人々の安全、安心、ウェルビーイング、そして地球環境を守り、向上するうえで、テクノロジーが果たすべき重要な役割を示しています。

今日は、これらのテクノロジーの中でも特に大きな役割を担うものについてお話ししたいと思います。それは、私たちが日常生活で頼りにしているソリューションの大部分を支えているにもかかわらず、どこにでもあるのに、ほとんど目立ちません。脚光を浴びることがあまりないため、直近の「LikeABosch」キャンペーンの主役にすることにしました。先ほどご覧になった動画からお察しのとおり、私が話しているのは「センサー」です。

センサーが私たちの生活に与える影響は、計り知れないものがあります。センサーは車両の安全性を高め、健康の改善に役立ち、温度、圧力から食品や水に含まれる有害物質の存在まで、普段は目にすることができないものを監視することができるのです。センサーは日々、人々の命を救っています。例えば、衝突や転倒などを自動的に識別し、エアバッグの展開や救助要請を起動します。

そして、迅速に救助が到着できるようにします。スマートフォンに搭載された圧力センサーが、持ち主の高度を数センチ単位で特定できることをご存知でしたか?これにより、その人が高層ビル内のどのフロアにいるのかを救急隊員が迅速に特定できるのです。FCC(米国連邦通信委員会)の推定によれば、米国だけで毎年1万人以上の命をこの技術で救うことができると言われています。センサーのおかげで、私たちの生活はより安全で、省資源ですむようになり、よりきれいな空気を吸うことさえできるようになりました。

センサーはネットワーク化された世界を支える基盤でもあります。スマートセンサーがなければ、モノのインターネット化は考えられなかったでしょう。そしてセンサーの性能が高まるにつれて、その重要性も高まります。2019年から2030年の間に、世界のセンサー市場は2倍以上の4,000億ドル超の規模になると予測されています。

ボッシュは、現在最も重要で広く使用されているセンサーのひとつである、小さいながらも強力なマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)センサーの開発において、先駆的な役割を果たしました。私たちはこのテクノロジーの世界的なリーディングサプライヤーです。1995年に生産を開始して以来、180億個以上のMEMSセンサーを生産してきました。しかも、私たちの事業はまだ急成長を続けています。過去5年間で、それ以前の全生産量と同じ量を生産しました。今日、自動車1台あたりに平均22個のボッシュのMEMSセンサーが搭載されています。おそらく皆さんもポケットの中にお持ちでしょう。地球上のスマートフォンの半分には、このボッシュのセンサーが少なくとも1個は含まれています。さらにフィットネストラッカーやスマートヘッドフォンもお使いならば、かなりの数のセンサーを使っていることになるでしょう。

私たちは何年にもわたり、MEMSにさらに高度な能力を搭載して改良を続けてきました。しかし、それは氷山の一角にすぎません。エッジコンピューティングのおかげでセンサーはよりいっそうスマートになり、今や情報を検知して中継するだけでなく、処理して分析することもできます。さらに、センサーに直接AIアルゴリズムを搭載することで、センサーは収集するデータから学習することも可能になっています。

特に有望な新領域は、量子センシングです。まだ初期段階ですが、量子センシングは現在のMEMSよりも1,000倍の測定精度で計測できるようになる可能性があります。これにより、例えばアルツハイマー病などの神経学的状態の診断をより迅速かつ正確に行えるようになり、義肢の使用に革命をもたらす可能性があります。ボッシュは昨年、量子センサーの商用化を推進するスタートアップ企業を設立し、今後数年間で最大70億ドルに達すると見込まれる市場に参入しました。

この最先端のテクノロジーに関する取り組みは、ハイテクイノベーターとしてのボッシュの戦略を明確にするものであり、デジタライゼーションへの取り組みとも合致しています。今後3年間で、事業のデジタルトランスフォーメーションに100億ドルを追加投資し、現在4万人のソフトウェアエンジニアをさらに拡大する予定です。デジタライゼーション推進における最終的な目標は、「Invented for life」という約束を果たすために新たな方法を見つけることです。これは私たちにとって、生活の質を向上させ、人々に真のメリットをもたらす製品やソリューションを提供することです。また、製品のフットプリントを継続的に改善し、そして製品の持続可能性を高めるアプリケーションを特定することで、開発作業の中心に持続可能性を据え続けることも意味します。

テクノロジーと持続可能性の交わりについては後ほど詳しく説明するとして、このテーマに対する消費者の視点を理解する手がかりとなる第2回Bosch Tech Compass調査の結果を見てみましょう。まずは、センサーに関する専門知識を有益なソリューションに活用するいくつかの方法についてお話ししたいと思います。実はこれこそ、ボッシュが他のセンサーサプライヤーと異なる点です。私たちはこの重要な構成要素を単に生産するだけでなく、私たちの移動と生活のあり方を変革するさまざまなハードウェア、ソフトウェア、そしてサービスの基盤として活用しています。

ボッシュのセンサーが広く使用された初めての分野は、車載アプリケーションでした。ボッシュは今でも自動車業界のリーディングサプライヤーのひとつです。とりわけボッシュのセンサーは車載ナビゲーションに活用され、エアバッグや横滑り防止装置(ESC)を制御し、走行安全性、快適性、効率性を高める多くの運転支援機能を可能にします。

特に自動運転にはセンサーが欠かせません。ボッシュはこのテクノロジーの先駆者の一社として、センサーの専門知識を駆使して、未来のドライバーレス車両にさらに近づけるためのソリューションを提供し、すでに最先端の運転支援システムを実現しています。私たちは、レーダー、ビデオ、超音波など、車両が周囲を独自に把握するためのさまざまなセンサーを生産しています。また、車載用の長距離Lidarセンサーの開発にも取り組んでいます。

例えば、メルセデス・ベンツと共同開発した自動バレーパーキングは、センサーを活用することで実現できる素晴らしい事例です。シュトゥットガルト空港の駐車場でこの高度に自動化された駐車システムを使用することが、昨年11月、ドイツの連邦自動車交通局(KBA)から承認されました。これによりSAEレベル4に対応する駐車機能として、世界で初めて商用利用向けに正式に認められました。

駐車場探しに時間をとられることのない世界を想像してみてください。それは、すぐそこまで来ています。しかし、私たちが運転中の生活を向上させているのは利便性の向上だけではありません。今回のCESでは、ライドシェアにおけるドライバーと同乗者の安全性を高めるために開発された、センサーを使った新しいイノベーションをご紹介します。

この新しいRideCare companionは、ハードウェアとソフトウェアのフルサービスを提供するソリューションです。カメラ、ワイヤレスSOSボタン、クラウドベースのデータサービスから構成され、単に映像を記録するだけでなく、必要に応じて遠隔地のオペレーターが車内を確認し、積極的に支援することができるのです。現在は、配車サービスでギグワーカーとして運転するドライバーのセーフティネットとしての活用を想定しています。

自動化および共有された未来のモビリティを見据えると、私たちはこのソリューションがすべての乗員の安全性を確保するのに不可欠なツールであると考えます。そしてCTAも同様の考えから、このたびRideCareが「ベスト・オブ・イノベーションアワード」を受賞しました!

もちろん、センサーのアプリケーションは従来の電動アシスト付き自転車にも応用できます。ボッシュのブースでは、“Safety via sensor tech (センサー技術による安全性)”というキャッチフレーズのもと、eBikeの最新かつ革新的な技術を展示しています。特に、今年後半に米国で発売される新しいeBike ABSには期待しています。自動車の場合と同じように、自転車用のABSはホイールスピードセンサーと連動し、急ブレーキをかけたときにブレーキ圧を調整することで前輪のロックを防ぎます。

自転車に乗っていると、素早い安定したブレーキが重要になる場面が頻繁にあります。例えば、猛スピードで坂を下っている時に車のドアが目の前で開いた時や、カーゴバイクに子どもを乗せている時に濡れた路面で急停止しなければならない場合などです。このような恐ろしい瞬間に、eBike ABSは安定性と操縦性の両方を維持するだけでなく、後輪が浮き上がる可能性も低減します。これは命を救うテクノロジーです。私たちの調査では、すべてのeBikeにこのシステムを搭載すればeBikeが関わる事故をほぼ3分の1に減らせる可能性が示されています。

事故について言えば、もちろんすべてを防ぐことはできません。しかし、事故が起きる時に、影響の軽減を図ることはできます。これが、オフセット衝突検知と呼ばれるボッシュの新しいソリューション開発の意図するところです。オフセット衝突とは、車線変更時や合流時によく起こる、車両の前方や後方への側面衝突のことで、従来の安全システムでは検知できなかった際、乗員を保護するために設計されています。このアイデアは、実際に米国の当社エンジニアが同様の事故に遭遇した際、乗員保護装置が作動しないと気づいたことから生まれました。エアバッグのセンサーを再利用し、新たなソフトウェアのアルゴリズムと組み合わせて、このような事故の衝撃を確実に検知する解決策を考えだしました。これは、ソフトウェアを使って既存のハードウェアの価値を高め、路上のドライバーに役立つ新機能を提供する素晴らしい例であり、CTAイノベーションアワードにも選ばれました。

モビリティ分野以外でも、MEMSセンサーは日常生活で使われる多くのハイテク機器を実現し、機能を向上させています。皆さんがよくご存知のVR技術も、センサーを利用してダイナミックかつインタラクティブな映像を作り出しています。しかし、VRにはエンターテインメントやゲーム以外にも多くの用途があることをご存知ですか?特に有望なのが、VRを使った治療分野です。現在、デンマークのコペンハーゲンではVR Bus Rideと呼ばれるボッシュの新しいソリューションを使ったプロジェクトが進行中です。このソリューションは、学習障害のある若者の自立を支援するためのもので、実際にバスに乗る前にVR環境でバスの乗車体験をすることで、バスに乗る自信を持たせることができます。この結果は、参加した若者たちにとって大きな励みになりました。現在、私たちはこの技術を応用できる他の治療用途を数多く検討しています。

昨年は、私たちが特に誇りに感じている新しいセンサー技術についてお伝えしました。Dryad Silvanetの心臓部にある新しいAIガスセンサーです。この森林火災早期検知システムは真のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。実際、昨年の夏にDryad社のシステムがドイツの現場で初めて森林火災を検知し、地元の消防隊が迅速かつ効果的に対応することができました。昨年から世界各地で実証試験を重ね、今年からDryad社のシステムが量産に入る予定です。

生活の質を向上させ、人々に真のメリットをもたらすことが開発活動の基礎のひとつであるならば、より高い持続可能性の実現に向けたコミットメントがもうひとつの基礎です。これは当社のすべての事業分野と同様に、センサー技術にも当てはまります。また、製品の製造方法とその性能の両方において、技術的な進歩も促しています。

センサーの話を続けると、そんなに小さな製品を作ったところで持続可能性に活かせる可能性はあまりないと思われるかもしれません。しかし、その考えは間違いです。ボッシュが1995年にMEMSセンサーの生産を始めたとき、加速度センサーの辺長はまだ13cmを超えていました。現在、私たちが製造する最もコンパクトなMEMSセンサーは、ピンの頭よりも小さく、辺長はたったの1.28mmです。これは、サイズが97分の1に縮小されたということです。それと同時に、機能を継続的に改善しながら、MEMSの消費電力量を100分の1へと大きく削減しています。

さらに私たちは今でも進歩を成し遂げています。たとえば、ここCESで展示する新しいMEMSセンサーは、業界をリードする堅牢性と精度を備えていることに加え、サイズと効率性の面で新たな基準を打ち立てています。その中に含まれるAI内蔵のプログラム可能な慣性計測センサーユニットは、世界初の自己学習型フィットネスセンサーであり、従来モデルよりも50%小型化し、消費電流は50%減少しています。また、極めて頑丈な大気圧センサーは、クラス最高の精度を提供しながら、消費電力量を以前よりも85%削減しています。そして、高性能な地磁気センサーは、独自の磁場衝撃回復機能を備えることで外部磁場に対して非常に耐性があり、必要な電力は前世代に比べて20分の1になりました。

私たちは、すべての製品クラスにおいて最も重要な環境課題に取り組むためのソリューションとサービスを開発しています。モビリティ分野では電動化と水素燃料電池という2つの領域で技術革新を推進し続けています。電動化に関しては、ここCESで新しいeAxle cityのデモンストレーションを行います。これは特に軽量でコンパクトなオールインワンのパワートレインソリューションで、小型車両クラスのメインのパワートレインとしても、さらなるブーストのためのサブパワートレインとしても使用できます。高効率のSiC(シリコンカーバイド)半導体テクノロジーに基づくパワーモジュールを搭載することで、航続距離の延長と充電時間の短縮を実現します。

私たちは小型から大型までの車両クラスに対応するモビリティ用途の水素燃料電池の開発を進めています。これら両方の領域における取り組みはここ米国でも反映されています。2022年後半には、サウスカロライナ州で2つの大きな展開を発表しました。チャールストンで電気モーターの生産を開始し、アンダーソンでは燃料電池スタックの生産を開始する予定です。

ただし、物理的な製品だけではありません。私たちはデジタライゼーションとソフトウェアの専門知識を活用して、持続可能性の向上も実現しています。例えば、最近立ち上げたAutotraceと呼ばれる新しいソリューションは、ブロックチェーン技術を用いて製造業と自動車産業での循環型経済の実現を支援するエンドツーエンドのデジタルソリューションです。Autotraceは部品の出所、二酸化炭素排出量、高懸念物質など、サプライチェーンの重要な側面を追跡そして監視することで、在庫管理を合理化し、責任ある廃棄や再利用を可能にします。これは、メーカーが循環型経済の手法を取り入れ、サプライチェーン全体で循環型の行動を推進するためのインセンティブとなることを意図しています。

デジタル活動のもうひとつの良い例は、最近発表した量子コンピューティング分野におけるIBMとのパートナーシップです。両社は未来の極めて強力なコンピューターを利用して、現在、カーボンニュートラルなパワートレインに使われているレアメタルとレアアースの代替物質を探します。ボッシュにとって、このような提携は技術面におけるリーダーシップを強化するための重要な要素であり、持続可能性の観点からも不可欠です。なぜなら、私たちの最大の課題に対する解決策を見つける鍵は、ともに協力することが重要だと確信しているからです。

私たちはグローバル企業として、自らの事業のカーボンフットプリントや私たちのソリューションが人々と地球に与える影響に関して、特別な責任を担っていることを忘れてはいません。そして何よりも、正しい道を歩めば収益性と持続可能性という2つの目標を両立できることを実証したいと考えています。

私たちは持続可能性への取り組みがお客様にとって重要であることを前々から認識しています。そして今、それがすべての人にとってどれほど重要であるかを示す確固たる証拠があります。1年前、私たちは世界中の人々のテクノロジーに対する考えを知るために第1回Bosch Tech Compassを実施し、その調査結果を発表しました。さらに追跡調査として、新たな質問集を用意し、回答者の枠を合計7カ国に広げることでよりいっそう深く掘り下げた調査を実施しました。

2回目の調査の結果では、持続可能なビジネスに対する消費者の支持をより明確に確認することができました。例えば、驚くことに85%の人が「持続可能なテクノロジーの使用はすべての企業に不可欠な要素だと思う」、と回答しました。同時に、82%もの人が「企業が持続可能なテクノロジーに力を入れるほど、将来的にさらなる成功を収められる」と考えています。

これはボッシュにとって、そして地球にとって素晴らしいニュースです。強い思いが購買行動につながると仮定すれば、世界中の5人に4人以上が持続可能なテクノロジーを開発または活用する企業を支援することを選んでいます。その結果、持続可能性を強化する技術革新をさらに加速させる原動力になります。これが一種の正のフィードバックループといえるでしょう。そして、それは誰にとっても好ましい状況なのです。

私たちは間違いなく、もっと万人にとって好ましい状況を必要としています。今のような不確実な時代だからこそ、楽観的になれることがひとつあれば心強いです。屋内での位置追跡、eBikeの事故防止、またはカーボンニュートラルなモビリティへの移行を加速する量子アルゴリズムなど、テクノロジーは私たちの生活をよりいっそう安全で、より便利で、より持続可能なものにしています。そして、私たちは技術革新の最先端にいる企業として、まだ開拓されていない潜在的な可能性があることを事実として知っています。そのひとつが、「センサー」と呼ばれる小型の驚異的な製品です。センサーは、私たちの日常生活を支えている、目に見えない重要な存在です。そして、超小型にもかかわらず、人々の生活の質を向上させ、環境への影響を軽減する上で非常に大きな役割を担い続けることでしょう。私たちがそれを確信しているのは、私たちがすでにそれに取り組んでいるからです。

突き詰めれば、私たちにとってそれがすべてなのです。私たちはすべての活動において、技術革新でより良い未来をもたらすよう努めています。ボッシュにとってこれが、「Invented for life」なのです。


このプレスリリースは2023年01月04日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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