シュトゥットガルト(ドイツ)発 –グリーン水素は、輸送、建設、製造など、ほぼ全ての分野で重要な役割を果たし、クライメートニュートラルな世界の実現に必要不可欠です。ボッシュは、燃料電池技術開発などで早くから水素事業に取り組んできました。水素バリューチェーン全体において、ボッシュは水素の生産、圧縮、貯蔵、使用に関する技術開発をしており、Bosch Tech Day 2023において、製品とサービスのポートフォリオを発表します。

Bosch Tech Day 2023の展示概要

PEMスタック – 水素によるクライメートニュートラルな輸送
PEM燃料電池スタックはモビリティ用途の燃料電池システムの中核部品であり、「PEM」とは「Proton Exchange Membrane」(プロトン交換膜)の頭文字をとったものです。モビリティ用途のスタックは多数のセルで構成されます。要求される出力に応じて、その数は数百枚に達します。これらセル内部では水素と酸素が反応し、電気と水を生成します。セル内部のPEMは、アノードとカソードの間で電気が短絡するのを防ぐのと同時に、水素分子が酸素側に透過するのを防ぎます。一方でPEMにはプロトン伝導性があり、水素イオンは透過します。バイポーラプレートの製造で使用される高速レーザー溶接は、ボッシュのみが有する技術工程で、1,200メートルにわたる各スタックの溶接部に水素密封性を持たせるために使用されます。ボッシュは、これらのスタックをドイツのバンベルクと中国の無錫にある工場で製造しています。スタックの量産準備は2022年末に整い、米国など他の製造拠点も計画されています。

PEM燃料電池の耐用年数 – 劣化防止ソリューション
燃料電池は、耐用年数の経過とともに劣化が進行します。具体的には、白金粒子と炭素担体が酸化して劣化し、また一方で白金粒径が増大し、触媒層が薄くなります。この問題を解決するために、ボッシュの研究者はこれらのプロセスを緩和する特殊コーティングを開発しました。さらに、高いセル電圧などの劣化に関連する負荷条件を回避するシステム制御の対策により、将来的にはPEM燃料電池の寿命を3万動作時間まで延長することが可能になります。さらに、特定の劣化現象を元に戻せる可能性があり、ボッシュの研究者達はその回復プロセスを開発しました。

水素エンジン – 既存の技術を基盤にしながらカーボンニュートラルを実現
自動車の動力源として、水素は燃料電池だけでなく、水素エンジンにも活用できます。水素エンジンは、長距離輸送、建設や農業機械といった、特に積載量が多く、長時間走行する大型車両に最適です。すでに存在するエンジンとパワートレインは優れた土台となっており、既存のパワートレインソリューションのシステムコンポーネントの多くは、燃料、吸気、排気システムの基本構造に応用可能です。ボッシュは水素エンジン用に、水素のポート噴射と直噴システムの2つのシステムを開発しています。直噴システム用のインジェクターは、液体燃料による潤滑なしで機能し、かつトラックの耐用年数の間に約10億回の開閉に耐える必要があります。水を除くと、水素エンジンが唯一排出するのは窒素酸化物(NOx)です。しかし、既存の排出ガス後処理システムを使用することにより、大気環境に目立った影響を与えることはありません。この水素エンジンを搭載した量産車は、2024年に初めて公道で姿を見せる予定です。

水素タンク –革新的で省スペースな乗用車向けソリューション
燃料電池乗用車の水素は現在、700barの大容量炭素繊維強化タンクに貯蔵されています。ボッシュの研究者は、スチール製シリンダーを組み込み、通常バッテリーを搭載する車体床下に設置できるという、2つの新しい特徴を備えたタンクを開発しました。外観的には従来のスチール製タンクに似ていますが、水素はスチールを脆くする可能性があるため、公的資金プロジェクトの一環として、高圧タンクシステムに関する厳しい国際規則に完全に適合したプロトタイプシステムが開発されました。このタンクの材質はコスト面で優れており、リサイクルも可能です。

IVECOの大型FCEV – 欧州向けの水素燃料駆動トラック
IVECOの大型FCEV(燃料電池電気自動車)は、欧州市場向けの水素燃料駆動のセミトレーラーです。燃料電池電気パワートレインを搭載し、グリーン水素と組み合わせることで走行中のゼロエミッションを達成します。このトレーラーは70kgほどの水素を充填すれば、最長800km走行できます。現時点では、水素の充填にかかる時間は約20分のため、IVECOの大型FCEVは長距離輸送を含む多様な用途に適しています。

eDistanceトラック – クライメートニュートラルなトラック向け技術
ボッシュは燃料電池、バッテリーEV、ハイブリッド パワートレインなど、長距離トラック向けにさまざまなパワートレインソリューションを提供しています。積載量が多く走行距離が長くなるほど、充填時間が短く、航続距離の長い燃料電池パワートレインが威力を発揮します。再生可能資源による水素を使用すれば、その燃料電池の稼働もクライメートニュートラルとなります。ボッシュは、電動パワートレイン、燃料電池、水素貯蔵システムの個別コンポーネントに加え、燃料電池パワーモジュールも提供しています。この燃料電池パワーモジュール・FCPMは拡張性が高く、スタックに加え、水素供給、吸気、そして電流出力のすべてのサブモジュールを組み合わせています。複雑なシステムをひとまとめにした、組み込みやすいソリューションとなっています。

水素充填ステーション – 水素圧縮用の駆動ソリューション
水素を迅速かつ簡単に車両に充填するには、気体を900 barにまで圧縮する必要があります。ボッシュ・レックスロスの高効率で、簡易メンテナンスの駆動システムを搭載したコンプレッサーは、水素インフラを確立する上で重要な役割を果たします。たとえば、ボッシュ・レックスロスとMaximator Hydrogenは、充填ステーション、貯蔵タンク、パイプライン向けに水素を効率的に圧縮するソリューションを開発しました。Maximator Hydrogenは、2030年までに約4,000基のコンプレッサーシステムを製造する予定です。ボッシュ・レックスロスは、水素コンプレッサーのエネルギー効率に優れた運転に寄与する、簡易メンテナンスで拡張性の高いシステムソリューションを提供しています。現在は、定格が最大250 kWとなっている拡張性の高いドライブユニットにより、充填ステーションのオペレーターは水素テクノロジーを無理なく導入することが可能になっています。このコンテナベースの新しいコンプレッサーは、市販の代替品と比較して総所有コストを半減できる可能性があります。

スタックおよびスマート電解モジュール – 水電解装置向けテクノロジー
ボッシュは水素の活用だけでなく、水素製造向けのスマート技術の提供も計画しています。このため、ボッシュでは水電解装置の中核要素である水電解スタックを開発しています。このスタックは100以上の電解セルで構成され、電気によって水を酸素と水素に分解します。スタックは出力が1.25メガワットに設計されており、1時間あたりの水素製造量は23kgに相当します。水素側の圧力は30bar以上です。ボッシュの水電解スタックは、出力1メガワット以上の小型プラントからギガワット規模の大型プラントまで対応します。市場投入は2025年を予定しています。現在、顧客との最初の共同パイロットプロジェクトを準備中で、来年開始予定です。さらに、ボッシュは電解槽スタックを制御ユニット、パワーエレクトロニクス、各種センサーと組み合わせることで、「スマート水電解モジュール」を開発する計画をしています。これらの要素は、互換性と省スペースを念頭に、システムの効率、信頼性、設置、セットアップを最適化できるように設計されます。

固体酸化物形燃料電池システム - 需要主導型の発電
ボッシュの固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムは、商業ビル、産業プラント、コンピューティングセンターで使用可能な分散型発電所です。SOFCシステムは、出力100kWを生成し、出力要件によっては複数のシステムを組み合わせてメガワット規模の電力を生み出すことが可能です。SOFCシステムは従来の燃料(バイオメタンや天然ガス、将来的には水素)を使用し、熱と電力を生成します。総合的な効率は90%にも達します。こうした定置型燃料電池スタックの製造には、車両用ラムダセンサーの製造で培われた機能性セラミックスに関する専門知識を活用することができ、2025年頃までに生産準備が整う見込みです。

燃料電池スタックの白金をリサイクル
PEM燃料電池スタックの製造には、白金などの貴重な原材料が必要です。使用済みのスタックから白金を回収すれば、このプロセスはさらに持続可能で経済的なものになります。そのため、ボッシュではモビリティ用途のスタックを再購入する権利を確保する、新しい契約モデルを策定しました。これにより、予測可能で安定したサプライチェーンが構築され、資源の利用可能性が向上し、炭素排出量も大幅に削減されます。さらにボッシュの研究者達は、化学プロセスを用いて、より環境に優しい方法でプラチナを回収するソリューションも開発しました。このプロセスに関して、ボッシュは20件超の特許を申請しています。しかし、省資源は製品ライフサイクルの終了時点からだけでなく、製品の稼働中でもデジタルツインを駆使し、水電解装置やモビリティ用途、定置型の燃料電池で使われるコンポーネントの耐用年数や機能をモニターすることが計画されています。これにより、メンテナンス、修理、リサイクルを事前に計画できるようになります。

製造・検査技術– 燃料電池ができるまで
ボッシュの特殊用途の機械部門であるボッシュ・マニュファクチャリング・ソリューションズは、個々のコンポーネントからシステム全体に至るまで、燃料電池製造向けの高度な製造装置と検査技術を提供しています。必要な製造装置全体の50%以上が、ボッシュ製です。たとえば、フォイヤバッハにあるテストベンチはホンブルクに本拠を置くボッシュの子会社、Moehwaldによって開発されました。スタックやシステムのテストでは、PEM燃料電池の性能をテストする最終機能試験の自然条件がシミュレーションされます。ここでは、気体の組成、温度、圧力、湿度が実車と同じになります。

水素対応産業用ボイラー – クライメートニュートラルな加熱とプロセス熱
ボッシュは、将来性のある産業用ボイラーシステムで、世界中の製造業がエネルギーコストを削減し、持続可能性目標を達成できるよう支援しており、熱プロセスをクライメートニュートラルにすることを目標としています。産業界は、世界の炭素排出量の約5分の1を占めており、その一部は蒸気、熱、温水の生成に由来しています。産業用暖房やプロセス熱における水素とグリーン電力の活用は、大きな可能性を秘めています。ボッシュの蒸気および熱発生器は、100%のグリーン水素、グリーン電力、またはバイオ燃料でも、柔軟に稼働させることができます。多くのレガシーシステムは、再生可能燃料へのアップグレードに対応する準備がすでに整っています。ハイブリッドボイラーシステムは、さらに有望な技術です。電気発熱体とバーナーを備えた設計により、グリーン電力や水素など、異なる燃料を同時に使用することができます。こうして、柔軟性の向上、供給の安定化、そして化石燃料への依存からの脱却が可能になります。最初のパイロットシステムは2022年に運用を開始しており、すでに4,500世帯以上の平均排出量に相当する二酸化炭素の排出が回避されています。

水素対応ボイラー – 気候にやさしい暖房のためのテクノロジーニュートラルなソリューション
ボッシュの水素対応ボイラーは、最初は天然ガスで稼働させ、水素が利用可能になった時点で簡単に水素に変換することができます。装備を一切変更せずに配管網のガスに水素を20%混合することも可能です。100%水素での利用が可能になれば、専門の設置業者が約1時間以内に水素対応ボイラーを100%水素稼働用に転換することができます。交換が必要なのは、バーナーなどごく少数の部品だけです。水素対応ボイラーは省スペースのため、設置場所が限られている従来型の建物にとっては魅力的な選択肢となります。

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Dörthe Warnk,
電話: +49 711 811-55508
E-Mail: doerthe.warnk@bosch.com


このプレスリリースは2023年7月10日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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