JAPAN MOBILITY SHOW 2025

ボッシュ株式会社
代表取締役社長、クリスチャン・メッカー
によるスピーチ

2025年10月30日

本稿は実際の内容と異なる場合があります。


代表取締役社長 クリスチャン・メッカー
みなさま、こんにちは。本日は、ボッシュのプレスブリーフィングにお越しいただきありがとうございます。

ボッシュは今年、「ソフトウェア ドリブン モビリティ」をテーマに、ハードウェアからソフトウェアまで包括的なソリューションをこのブースで紹介しています。

昨今の自動車開発の主流は、ソフトウェア主導へと変化しています。ソフトウェア ディファインド ビークルは、新しい車に買い替えなくても、スマートフォンのようにソフトウェアをアップデートすることで車両性能を改良したり、アプリケーションを追加することで新しい機能が使えたりできます。ボッシュはJapan Mobility Showに先駆け、「ソフトウェア ディファインド ビークルに対する期待」に関する意識調査を実施しました。ここで調査結果の一部をご紹介しましょう。

調査では、「ソフトウェア ディファインド ビークル」という言葉を知っている人は20%未満でした。そこで、具体的に「ソフトウェア ディファインド ビークル」で実現可能な機能やサービスについて、こんな聞き方をしてみました。「機械式駐車場など難しい場所で自動駐車が可能になる」、「Uターン時に狭いスペース内で小回りが利き、運転が楽になる」、「ソフトウェア制御により車内のケーブルが不要になり車内スペースが拡大する。」すると約75%の人が「ソフトウェア ディファインド ビークルに期待したい」と回答しました。すでに多くの消費者の方々が、ソフトウェアによって実現する未来のモビリティを待ち望んでいるのです。

しかしこれらは、まだ見ぬ未来のモビリティでしょうか?いいえ、今ここで紹介したモビリティ機能やサービスは、今まさにここのボッシュのブースで、みなさんの前に展示されています。

今回、ボッシュが日本で初めて一般公開するコンポーネントのひとつが、バイワイヤブレーキアクチュエータです。ボッシュは1978年にアンチロック ブレーキ システムの量産を開始して以来、ブレーキ技術の開発に力を入れてきました。従来のブレーキシステムでは、ブレーキペダルとブレーキシステムの間は機械的に連結されるのが主流でした。しかし現在、ソフトウェア ドリブン モビリティを見据え、ボッシュはバイワイヤブレーキアクチュエータと横滑り防止装置ESCの2つのユニットから構成されている、油圧式のブレーキバイワイヤシステムを開発しています。ブレーキペダルとブレーキバイワイヤアクチュエータは電線のみで接続されており、ドライバーのブレーキ要求は、電気信号としてブレーキ動作に変換されます。ブレーキペダルとブレーキシステム間の機械的な接続がなくなることで、HMI(ヒュー マンマシン インターフェース)と車室内デザインに新たな可能性が生まれます。さらにボッシュの油圧式のブレーキバイワイヤシステムは市場で実績のあるブレーキシステム技術を基盤としているため、バイワイヤ化によるメリットを最大限に引き出しながら、信頼性が高く、軽量かつエネルギー効率が高いという特徴があります。ボッシュはバイワイヤ技術におけるリーディングカンパニーのひとつで、ボッシュのブレーキバイワイヤシステムは2026年初頭にアジアの自動車メーカーの量産車に搭載予定です。

またボッシュでは近年、ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなど、車両制御のためのさまざまなアクチュエータを統合制御する、包括的なソフトウェアシステムソリューション「ビークルモーションマネジメント」を開発しています。すでにドライバーの好みや、走行シーンに応じてパーソナライズ化された運転を可能にする一部機能を発表しています。ソフトウェアの設定一つで、同じ車両でありながら、アーバン、スポーツ、ラグジュアリーといったさまざまな車の走行モードに変更できる技術です。しかし、ボッシュはそこからさらなる開発を重ね、顔認証でドライバーそれぞれの好みの走りを認識し、ソフトウェアが自動的に走行モードを設定する追加機能の実現をめざしています。先日わたしが試乗した時は、事前に登録した私の顔を認識して、スポーティーな味付けに自動的に設定されました。

また同じ「ビークルモーションマネジメント」のソフトウェアで実現するす新たな機能が「イージーターンアシスト」です。これはUターンやカーブなど、車が曲がるとき、内側のタイヤに軽くブレーキをかけ、モーターの力の配分を調整することで、より小さな円を描いて曲がることを可能にします。ドライバーは「イージーターンアシスト」機能のおかげで容易な操縦が可能になるため、なんどもハンドルを切り返す必要がなくなり、狭い駐車場からのスムーズな発進などが可能になります。

このようにボッシュは今年、消費者が求める未来のモビリティを、このJapan Mobility Showに持ってきました。カーボンニュートラル燃料に対応したCO2排出量をモニタリングするサービスや、サーマルマネージメントシステム、運転支援や自動運転、駐車機能に必要なソフトウェアやセンサーなども紹介しています。ここにある展示カーやモニターでは、ソフトウェア ドリブン モビリティに向けた、ボッシュの最新製品およびソリューションを紹介しています。

さて、これまでソフトウェアがもたらす最新機能を紹介しましたが、それらを実現するには、高度なハードウェアの開発、そして製造も重要です。

先ほどブレーキバイワイヤシステムで重要な役割を果たす横滑り防止装置ESCを紹介しました。横滑り防止装置ESCが全世界の自動車メーカーで採用されている中、ボッシュのESCは日本の自動車メーカー向けに5割以上のシェアを占めています。まさにボッシュでは来年、栃木工場で第10世代ESC(横滑り防止装置)の製造を開始します。それに先立ち、まさにちょうど今月10月に、第10世代ESCの製造ラインの導入が完了しました。来年以降、栃木工場で国内メーカーの日本工場向けに、第10世代ESCを順次供給していく予定です。栃木工場は、今年で35周年を迎える記念すべき年です。1990年の設立以来、四輪向け横滑り防止装置ESCや二輪、四輪向けアンチロックブレーキシステム(ABS)など、ブレーキ関連製品の製造で長きにわたる実績を残しています。

もう1つ、今年記念の年を迎える工場があります。それは埼玉県にある東松山工場です。1940年の操業開始以来、主にディーゼルエンジン用の部品を製造しています。工場本館は、なんと操業以来85年間にわたり、操業当時と変わらぬ姿でボッシュの歴史と発展を支え続けています。私も東松山工場を訪れるたびに、長きにわたり日本のモビリティを支えるボッシュで働いていることを誇りに思います。

このようにボッシュは、1911年に日本でのビジネスを開始してから100年以上にわたり、モビリティ業界を支えてきました。

そして忘れてはならないのが横浜の新本社です。竣工以来1年が経ち、約2,000人の従業員が日々事業部を超えてコラボレーションし、最新技術の開発を推進しています。

ボッシュは、ソフトウェアとハードウェアの双方において、他に類を見ない専門性と経験を有しています。この強みを最大限に生かして、次の100年も継続してお客様のニーズにこたえ、未来のモビリティを形成していきます。

ご清聴ありがとうございました。