本稿は実際の内容と異なる場合があります。


ご来場の皆様

前回の東京モーターショーから2年。モビリティを取り巻く環境は大きく、そしてハイスピードで変化しています。環境規制は年々厳しくなり、自動車メーカーは燃費向上や電気自動車をはじめとした次世代自動車の開発や普及に一層注力しています。また、高齢化社会の進む日本固有の問題として、シニアドライバーによる交通事故の増加といった社会問題もあり、モビリティの新たなソリューションに対するニーズも高まりを見せています。

ボッシュはグローバルで、そしてローカルで、日本のお客様を含め自動車メーカーの声に耳を傾けながら、モビリティを取り巻く社会課題に対応しています。グローバルリーディングサプライヤーとして、排気ガスをできるだけ削減した、より安全で、魅力的なモビリティを追求し、自動化、電動化、ネットワーク化を推進してきました。とりわけ、当社の環境対策に対するコミットメントは、2020年までに全世界でカーボンニュートラルを実現すると発表したことからも、お分かり頂けるものと思います。ボッシュは、世界のすべての拠点を一年以内にカーボンニュートラルにする初の大手企業となります。また、内燃機関から燃料電池に至るまで、高効率のパワートレインを提供する決意も固めています。ボッシュは地球を健全に、そして空気を清浄に保つモビリティを追求しています。

そしてボッシュでは現在、自動化、電動化、ネットワーク化に加え、前回のモーターショーにはなかった新たなエレメントに取り組んでいます。それが、パーソナライズ化です。

人々の車に対する意識が変わり、都市部のモビリティはより多彩になり、車が決して第一優先ではない人々もいます。ライドシェアやインターモーダル、ライドヘイリングなど、様々なサービスが登場しており、個人が自身のニーズに合わせて移動手段を選択できる社会へと変化しています。ボッシュでも、この新時代におけるモビリティへの対応を進めています。PACE(Personalized:パーソナライズ化、Automated:自動化、Connected:ネットワーク化、Electrification:電動化)。それが、私たちが未来のモビリティに向けて進める取り組みです。

本日は、ボッシュが未来のモビリティをPACEでどのように形成しているかについて、この場をお借りしてご紹介させて頂きます。

排気ガスをできるだけ削減したモビリティにおいて、ボッシュは革新的なリーダーとして市場を牽引しています。過去数年間にわたり、ボッシュは年間4億ユーロを排気ガスのないモビリティに投資してきました。電動化において、これほど多岐にわたるソリューションを提供している企業はありません。ボッシュはまた、eバイクからトラックまで幅広いモビリティで電動化を進める、革新的なリーダーです。電動パワートレインがボッシュの次のサクセスストーリーになることがますますはっきりしてきました。私たちは技術的にも商業的にも、市場を先導しています。率先してコンポーネントを効率化し、二輪車からトラックまで、他のサプライヤーより幅広く対応しています。

電動化の効果も表れています。2018年には eモビリティ領域で30 件、総額 80 億ユーロ相当の受注を獲得し、2019 年前半にはすでに 50億ユーロ相当の受注を獲得しました。過去 18 カ月間に獲得した受注総額は 130 億ユーロになります。2020 年には、この分野の売上高は 10 億ユーロを突破するでしょう。2025年の売上高目標は 50億ユーロに設定していますが、この目標を上回る見通しです。私たちの製品は市場に受け入れられており、先行投資は効果を上げています。

電動化を考えるうえで、eAxleは重要なコンポーネントのひとつです。モーター、インバーター、トランスミッションを一体化したeAxleは、パワートレインの効率向上と低コスト化、そして自動車メーカーにおける開発期間の短縮化を実現します。eAxleはボッシュの電動化ビジネスをけん引するコンポーネントで、2020年には中国市場に当社のeAxleを搭載した自動車が登場する予定です。

二輪車における電動化も、着実に形となってきています。ボッシュの電動二輪車のポートフォリオは、リチウムイオンバッテリー、ディスプレイ、コントロールユニット、ドライブユニット、安全システム他を網羅し、電動二輪車に必要なすべての主要コンポーネントを統合した電動化システムとして提供可能です。この48Vセントラル ドライブ システムは既に、ドイツ・Govecs、スペイン・NUUK、フランス・Peugeotに採用されています。日本でも、国内における電動二輪車の交換式バッテリーおよびバッテリー交換システムの標準化を目指すコンソーシアムが立ち上がるなど、電動二輪車の普及に向けた動きが活発化しており、ボッシュの48Vセントラル ドライブ システムが日本の電動二輪車市場にも貢献することを期待しています。

48Vバッテリーといえば、ボッシュは48Vバッテリーにおいても市場を先導するポジションの獲得を狙っており、CATLとバッテリーセルの開発における長期提携契約を締結しています。また、現在、欧州や中国において、48Vマイルドハイブリッドシステムに対する需要が高まりを見せていますが、日本の自動車メーカーからも、燃費の最大15%向上を実現するとともに、フルハイブリッドよりも低コスト、サイズもコンパクトで搭載しやすいという点で、ご関心を抱いて頂いています。実際、年明けに日本の自動車メーカーから販売されるモデルのひとつに、当社の48Vハイブリッドシステムが搭載される予定です。

また、ボッシュでは2030年には電気自動車のうち最大で20%が燃料電池車になると試算しています。燃料電池市場におけるプレゼンスの向上を目指し、現在、ボッシュ・スタックの製造に向けた準備を進めています。今後、パートナー企業であるPowercell社が開発した、市場で最高の出力密度を誇るスタックを基盤にボッシュ自ら製造する予定です。

自動化を通じたより安全なモビリティに向けた取り組みも、着実に前進しています。ボッシュでは、ドライバーアシスタンスシステムや、自動バレーパーキング技術、正確な車両位置の把握といった、より安全な自動運転を遂行するソリューションの開発を進めています。

自動バレーパーキング技術については、今年7月、ボッシュとダイムラーでシュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館に設置した自動バレーパーキングが、世界初となる自動運転のレベル4にあたるシステムとして承認を取得しました。完全自動運転よりも先に、自動バレーパーキングが実用化されるでしょう。

なお、自動運転は、ドイツだけで進んでいるものではありません。ここ日本にも大きく関係しています。日本では今年、この自動バレーパーキング技術を応用して、ボッシュグループとしては世界初となる低速無人搬送の実証実験を実施しました。物流プロセスの効率化を実現するこの取り組みを、実用化に向けてさらに進化させるため、次の実証実験を計画しています。

また、自動運転を実現するためには、車両は自車の正確な位置情報を常に把握している必要があります。ボッシュは日本において2017年より、これを実現するために車載ビデオカメラ、及びレーダーを使用した自車位置推定技術Road Signatureの開発に取り組んでいます。また今年10月からは、東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道など関東近郊の高速道路でRoad Signatureのデータ取得に取り組んでおり、2020年度内に高精度3Dマップに統合可能な関東地方のマップ用データを完成させる予定です。

ドライバーなしの自動運転や自動バレーパーキングは、将来のモビリティを形作るうえで重要な役割を占めます。この点で先んじているボッシュは、自動運転の領域でも革新的なリーダーといえるでしょう。

ここまで、ボッシュがいかに革新的なリーダーとして電動化と自動化のソリューションに取り組んでいるかをお話してきました。ボッシュはまた、モビリティのネットワーク化においても市場を牽引しており、自動車メーカーのみならず、モビリティサービスプロバイダーのような新たなマーケットプレイヤーに対してもサービスを提供しています。魅力的なモビリティに向けたネットワーク化領域のソリューション、そして新たなエレメントであるパーソナライズ化に関して、マルクス・ハインからご紹介させて頂きます。

未来の車はネットワーク化されます。2025年には、世界で4.7億もの車両がネットワーク化されると予想されています。近年、数多くの企業がこのネットワーク化に参入しており、市場が活性化されていますが、ボッシュほど、センサーやコントロールユニットなどのハードウェアから、ソフトウェア、サービス、そしてAIに至るまで、IoT領域において経験と専門的知識を有したグローバル企業はありません。

ボッシュの実力を表すネットワーク化の代表的なソリューションが、「パーフェクトリー キーレス」です。ボッシュのパーフェクトリー キーレスは、スマートフォンと車両が通信し、実際のキーなしでドアのロック・アンロックとエンジンの始動を可能とします。スマートフォンでキーのやり取りができるという利便性を有しながら、従来のキーレスエントリーシステムでは達成できなかった安全性までも担保したソリューションです。このソリューションは、個人所有の乗用車、カーシェアリング用車両、物流会社などの事業者が所有する車両にも使用できます。

日本では、宅配便の取り扱い個数が急増しています。このパーフェクトリー キーレスの仕組みを利用すれば、車両のトランクを宅配ボックスとして利用できる可能性も秘めており、日本の物流業界におけるドライバー不足の問題や環境負荷低減などにも貢献するでしょう。

最後に、パーソナライズ化に対する取り組みをご紹介させて頂きます。ボッシュでは、まずはマルチモーダルな都市輸送へと変えるモビリティサービスプロバイダーがスムーズにビジネスを展開できるようサポートしています。ボッシュのこのパーソナライズ化に対する新たな取り組みによって、ドライバーや都市、環境に対する負荷を軽減しながら、個々人にあわせた移動をサポートします。例えば、電動スクーターのシェアリングサービス「COUP」をベルリン、マドリッド、パリの3都市で展開したり、ライドシェアリングサービス「SPLT」を欧州やアメリカ、メキシコで展開するなど、個人のニーズに個別に対応する新たなサービスの提供も開始しています。また、中国のDiDiに提供している、バッテリーマネジメントのクラウドサービス「バッテリー・イン・ザ・クラウド」では、リアルデータに基づいて、クラウドサービスがバッテリーの状態を監視、常時分析し、それぞれに最適な充電プロセスを指南することでバッテリーの延長を可能としています。なお、バッテリー・イン・ザ・クラウドは、日本でも現在、自動車メーカーやモビリティサービスプロバイダーに対して導入や実証実験の提案を始めています。

ボッシュは創業以来、Invented for lifeというコーポレートスローガンにのっとり、人々の生活や社会を豊かにするソリューションの提供に注力してきました。ボッシュは今後、従来から注力してきたAutomated, Connected, Electrification という3つのエレメントにPersonalizedを加えたPACEで、新時代におけるモビリティを形作ってまいります。引き続き、ボッシュにご注目ください。

ご清聴、ありがとうございました。